【BARKS編集部レビュー】カナルワークスCW-L12aは、大人気UE 5 Proより買いか？

CW-L12aは純日本ブランドのカナルワークス製のカスタムIEMである。2013年の夏に発表された傑作機CW-L12をさらにブラッシュアップさせた最新2ドライバーモデルで、シンプルなドライバー構成ゆえに価格もぐっと抑えられたエントリーモデルの最適解といえるものだ。

◆カナルワークスCW-L12a画像

カスタムIEMは、購入するには耳型を採る必要があり、オーダー自体が面倒くさい上にとにかく高価格という浮世離れしたアイテムゆえに、数年前までは好事家の中でひっそりと話題になるだけのマニアック機器だった…のも今や昔のこと。その圧倒的な音の良さと完璧な装着感／優れた遮音性など、ずば抜けた基本性能の高さが広く知れわたり、今ではマニアの域を抜けて多くのイヤホン好きから高い支持を得る“究極のイヤホン”の座を得る状況となった。アーティストがステージで使用しているイヤモニと同じものを手にできるというファンアイテムとしての側面も、その魅力に加速を付ける要因となっている。


数万円から数十万まで価格幅も広いカスタムIEMの世界だが、中でも2ドライバーモデルは、低価格に抑えられながらタイトでシャープなロックサウンドを聞かせる、突き抜けたコストパフォーマンスを誇る好モデルが多い。カナルワークスCW-L12aもそんなベストアンサーのひとつだが、やはりここで最も気になるのはカスタムIEM界の人気No.1モデルUltimate Ears UE 5 Proとの比較だ。「さて、どっちが良いのか？」という単刀直入なお話である。

ちなみに、UE 5 Proは、世界で初めてドライバーを高音域と低音域に分けることで広い周波数レンジを獲得、深みのある低音から高音まで優れたバランスを生むことに成功したモデルで、マルチウェイを搭載する全てのカスタムIEMの源流とも言える歴史的名機だ。極めて高い耐久性を持ち、数十年にわたって今もなお世界で最も売れている現役カスタムIEMである。Ultimate Ears（アルティメット・イヤーズ）自体、信頼と革新を重ねてきた世界シェアNo.1のメーカーで、今もなお圧倒的な人気を誇る老舗ブランドだ。




さて、CW-L12aとUE 5 Pro、どちらが良いか？結論としては「どちらが良いかは人による／甲乙つけがたい引き分け」なのだけど、ざっと、その根拠を列挙してみよう。

■価格
カナルワークスCW-L12aは75,600円、UE 5 Proは79,800。4,200円の差でCW-L12aの勝利。

■サウンド
誤解を恐れずに言えば、両者のサウンドは非常に似ている。共通して言えるのは、メリハリの効いたシャープでスピーディーなサウンドであること。もっさり／まったりとは無縁で、ロック／ポップスを小気味よく楽しませてくれる敏捷で力強く筋肉質なトーンだ。

両者の違いは非常に微小だが、低域の量感はUE 5 Proの方が勝っている。とは言え、CW-L12aはタイトな質感を持ち分離に優れているため、低域がクリアに耳へ届き、むしろ聴感上のローの押し出しはCW-L12aの方が良好だ。超低音域のみならず超高域帯域もCW-L12aの方が広がっており、オーディオリスニングとしてのバランスの良さはCW-L12aの方が一枚ウワテである。逆にまとまったパンチ力はUE 5 Proの方が秀でており、ステージ上のイヤモニとしての設計思想がそのままモニタリングのしやすさにつながっている。無理矢理比較をすれば、CW-L12aは上下に伸びたドンシャリ傾向、UE 5 Proは中域へのまとまりという傾向であろうか。

■納期
こちらは引き分け。どちらもおおよそ1ヶ月半とのことだが、時々の状況によって多少前後する点はどちらも同様。ただし、実際はUEの納期は非常に早く、完備された3Dプリンタによる生産能力は驚異的だ。海外からの空輸や通関手続きに時間を要するが、米工房内での製作自体は1週間で完了可能であるとしている。

■カラーリング
シェルカラーは26色のバリエーションを持つカナルワークスの圧勝。UE 5 Proはクリアのみとなる。シェルの透明度もカナルワークスの方が優れている。写真のモデルはシェルカラーにハニー、エムブレムにゴールドを指定したもの。フェイスプレートは、カラーや特殊デザインなどそれぞれに特徴があり勝負つかず。好きなカラーリングやデザインがある方が吉ということで、好みによるところ。

■装着感
これは一概に言えるところではないため、優劣をつけるのは不可能。これまでの個人的な経験では、カナルワークスはきっちりと耳に吸い付くようにフィットし、理想的な遮音をもたらす最高のリスニング環境が楽しめる。一方UEは気持ち緩めのフィット感のため、耳への圧迫感が皆無で24時間つけっぱなしでも全くストレスを感じない。

■付属品その他
カナルワークスの付属ケースは往年のペリカンハードケースだが、UEは金属製のラウンドケースとなる。ラウンドケースのほうがコンパクトで持ち運びに便利だが、出し入れはペリカンのほうが使いやすい。


なお、CW-L12aには、更にパーツを厳選したCW-L12aEXというブラッシュアップ版も販売されている。プリント配線でひとまとめにされた電気パーツを、選り優った高音質フィルムコンデンサなどの個別パーツで組み上げ直したもので、価格は8,640円上乗せの84,240円(税込)だ。仕様は変わらないため音は同じだが、品質向上により雑味が減り見通しの良さが向上しているとか。CW-L12aに全く不満はないものの、更に突き詰めたモデルがあると聞けば気になるのが人心というもの。機会を見てその違いもレポートしたいと思っている。

text by BARKS編集長 烏丸哲也


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