【BARKS編集部レビュー】ビクター「HA-FXC51」は、迫力のハードロックサウンド
以前レポートしたこともあり、HA-FXC71の良さはお伝えしたところなので、今回は弟モデルとでも言うべきHA-FXC51にスポットを当ててみたい。今回聞き比べて気付いたのは、下位モデル/廉価版という考えではなくサウンドの違いで購入を考えたい、ということだった。
HA-FXC71の方が明らかに解像度が高く、ミッドからハイの霧の晴れたような透明感のある音像の心地よさは動かしがたい事実。一口食べて即効「旨い!」というつかみのよさに似たキャッチーさがあって、71は素直に音いいなぁと心が躍る。バランスがよく派手に高域も鳴ってくれるので、サウンドが若々しい。若干硬質なところも、1ヵ月も聴いてエージングが進めば心地よく馴染んでいくことだろう。
一方のHA-FXC51は、HA-FXC71と比べると腰が強く音圧がある。HA-FXC71の行儀の良い分離感とくらべると、ぐしゃっとやんちゃな音像なので、空間を感じさせるダイナミックレンジの広いデリケートなサウンドは苦手なのではないかと連想した。
だが、現実は違った。人間の耳も良くできたもんで、30分も聴いているとすっかりセルフ・オート補正が聴いてくる。結果、どうなるか。相対的にはHA-FXC51の方がロー~ミッドの押しが強いので、聴いていて疲れない。HA-FXC71と比較しての分解能の物足りなさはすっかり影を潜めてしまい、その図太い再生能力に、すっかり心を奪われる始末だ。
サンプルとして聴いたハロウィン『7 Sinners』のような作品には、アーティストが伝えたいであろうローの押し出しの心地よさがそのまま伝わってくる。ちょっとしたライブ会場のような音圧感だ。いわゆるヘヴィー系といわれるギターサウンドでのミュートした刻みでは、ブハブハと風が来そうな強烈なローが、聴覚を超え触覚を刺激しているかのよう。
同じギターオリエンテッドなロック作品でも、スティーヴ・ルカサーの『All's Well That Ends Well』では、ゲインの少ない弦鳴りが気持ちよいレイヴォーン的な響きから、場合によってはジェフベックのようなダイナミクスのある作品だけに、ダイナミックレンジを存分に確保した環境でできるだけフラットに聴きたい気持ちになってくる。この場合はHA-FXC71の方がやはり適任のはずなのだが、HA-FXC51に慣れた耳は、HA-FXC71では優等生過ぎて迫力に欠ける気がしてしまう。まさに51に慣れた脳内のセルフ・オート補正が、功を奏している状態だ。
テクニカルな話はよくわからないが、聴くところによるとヘッドフォンの製作技術も恐ろしいまでに進化しており、善し悪しで語るレベルではないという。つまり安い価格帯のものでも必要にして十分な品質は担保されており、そこから先は、善し悪しではなく好き嫌いで選ばれるべきもののようだ。それは超高級ヘッドフォンでも同様で、最終的にはどのようにチューニングするかで製品のキャラクターや音楽再生機としての特徴・魅力が方向付けられるという。
コーヒーにするか紅茶にしようか、そのくらいの日常感で、聴きたい音楽によってヘッドフォンも気軽に使い分けるような毎日が過ごせれば、音楽ライフはもっともっとキラキラと輝くものになる気がする。
text by BARKS編集長 烏丸
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