【BARKS編集部レビュー】Stage93 93SPECが1本あれば、カスタムIEMの嗜みが2倍に
Stage93のフラッグシップStage 6の出来があまりに良かったので、テンションが瞬間沸騰し他のモデルも思わずオーダーしてしまうという暴走行為に出てしまった。気分はアナーキークリスマスである。ただ、Stage93はケーブルが付属しないので、別途ケーブルを用意する必要がある。であれば、やはりここは、93SPEC - Premium Silver Cablesしかあるまい、ということで新たにゲットしたケーブルの紹介だ。
◆Stage93 93SPEC画像
リプレイス(リケーブル)専門ケーブルを横目に、自らのブランドとして完成させたという時点で、サウンド・価格・使い勝手においても、これら一流ケーブルを凌駕する出来に違いないと勝手に妄想、それを自ら鵜呑みにするという冷静さを欠いた状態で手にしているため、鼻っから思い込み120%のバイアスがかかっているかもしれない。が、結論から言ってしまえば、実に素晴らしいお気に入りのケーブルであり、その感想は今でも変わらない。
何はともあれ聞き比べはStage93のStage 6で行なってみたが、いわゆる高品質ケーブルに交換することで感じるような「低域の増強」とか「解像度の向上」とか、ありがちな効能を感じたわけではない。言葉での表現は難しいのだけど、何度聞き直しても「生々しく肉感的な粘りが出る」ように感じさせてくれる。トーンが高域にシフトするとか、低域の量感が増えるとか、そういったバランスの変化はさして感じず、良くある「薄皮をはがすような…」というのとも違う。全体的にトーンが生々しくなって、平温が上がった感じとでもいうか、サウンドがエネルギッシュになるのだ。
それでいてトーン自体はさらさらしており、もっさりした感じは全く生じない。帯域ごとに注力すると中域の生々しさが増していることに気付かされるので、ボーカルをはじめとした音楽の主人公が自然に押し出されることで、より音楽的に品質が向上する印象を受けるのかもしれない。
そこで聞き比べ対象にしていたノーマルケーブル(Westone製)に戻すと、逆に派手な高域とメリハリのあるローを強く感じる。よく言えばパワフルになったようなエネルギッシュな印象を持つのだけれど、93SPECと比べると下品な音で全帯域での艶が失われる感覚になる。
外出時や電車内など騒音の大きいところではむしろWestoneケーブルの方が好印象かもしれないが、自宅での静かな環境下では、明らかに93SPECの方が分がある。93SPECを使用すると、結果的に空間表現がよりリアルになったようで、クリアネスが上がったような効能がある。低域がド派手なサウンド、例えばスクリレックスのような極悪なダブステップなどを聞くと、低域にまとわりつくエッジ部分がさらにくっきりと響き、攻撃性がさらにアップするような心地よさを感じる。一方で女性ボーカルものなどは、中高域のすっきり感が歌の魅力をさらに押し出してくれる感覚だ。表現力の向上に寄与する“分かっているニクイ奴”って感じなのである。
タッチノイズも気になるほどもなく、ケーブルの硬さも許容できるギリギリ設計で手に負えないような強い反発もないので、使用上のストレスも感じない。Westoneケーブルが非常に柔らかく使い勝手が完璧なので、それに比較するとケーブルの太さは目立つものの、取り回しは決して悪くない。
こと銀線を使った高級ケーブルとなると、価格も跳ね上がり使い勝手もエキセントリックで過激なケーブルが多いものだ。93SPECはその見た目やスペックこそハイエンドそのものだが、そのルックスに反し実際は非常に取り回ししやすく、サウンドにも大きな癖がなく非常に使いやすい。バランスを壊すことなく、音楽全体の表現力の向上に効果を示すケーブルこそ、リプレイス用マニア向けケーブルとして正しい立ち位置にあると思うのだけど、いかがだろうか。
ただし、相性というべきか、使うモデルによって見せるサウンドの変化はまちまちで、それまでUEケーブルを使っていたハイブリッドのThousand Sound TS842などは、高域の伸びが増え、逆にあれだけ派手に出てきていたダイナミックドライバーの低域がすっかりおとなしくなった。如何にも2ドライバーのハイブリッドらしいドンシャリ&タイトなサウンドが、フラットバランスの多ドライバーのようなサウンドに変貌してしまったわけで、これ、ちょっとびっくりの変化。どちらにどう転ぶか予測が立たないけれど、気分やノリでケーブルを交換するのも楽しい作業になってきた。
我々の生活が、洋服を着替えることでフォーマルからカジュアルまでを演出するように、カスタムIEMもケーブルによってその性格が変わるという嗜みがある。もうちょっとサウンドが○○○だったら…という最後の一仕事には、ケーブル交換がドストライクな結果を出してくれるかもしれない。93SPECは、現時点のレートで2万円弱の価格となるが、この品質でこの価格は文句なしのコストパフォーマンスだと思う。むしろカスタムIEMを複数所有しているようなジャンキーなお兄さんであればこそ、93SPECが1本あれば、所有モデル×2の嗜みを堪能できることだろう。メリークリスマス!
text by BARKS編集長 烏丸
●Stage93 93SPEC - Premium Silver Cables
284シンガポールドル(≒19,500円)
26AWG Stranded UP-OCC Silver, 99.999% pure with a custom thread count.
◆Stage93 93SPECオフィシャルサイト
BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)
◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)
◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)
◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)
◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)
●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)
●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)
■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)
◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)
◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)
■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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