【BARKS編集部レビュー】SHURE SE530ユーザーは、SE535を買うべきか否か

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音楽の再生環境はできるだけ原音に忠実なものがいいと願い、カナル型ヘッドホンは数年前からSHUREをメインに使用してきた。E500PTH時代から2世代にわたってSE530を愛用してきたところに新製品SE535が登場し、どうにも我慢ができなくなって、今回試聴の機会を手に入れた。

◆SE530&SE535画像

私用のSE530は十分にエージングされており、一方のSE535はパッケージから出されたばかり。そのまま比べたらSE535が可哀想だよな…なんて余裕こいていたのだが、一聴しておでこにスーッと斜線が降りた。なんてこった、SE535のほうが明らかにいいんじゃないの?奇襲か?

一呼吸おいて冷静に聴き比べを行なった。うーん、これは純度が上がった感じとでもいうのか、ローの出方がより力強くなっているし、高音の分離がさらに高くなっている。SE530だって至高のクリアさだが、さらにクリア度が増したようだ。極めて個人的な感覚だが、ミネラルウォーターで言えば旧SE530がプチ硬水、SE535はもっとすっきりキリッと飲みやすい軟水という感じだろうか。SE530は身体に染み付いた聞きなれた音なのだけれど、SE535から戻るとべたっとした印象をうけてしまった。最高峰の音と思って愛用してきただけに、思わぬ敗北感にちょっぴりうなだれた。

実のところ、違いは音にとどまらない。まず驚くべきはその装着感だ。全く違うのである。これは後継機種というよりも新設計の完全リニューアルというべきものだ。

SE530はまずケーブルを耳に掛け、本体を耳の穴の奥までぐいぐいと突っ込みまくるのが正しい装着法だと思うが、535は本体を指でつまみクイッと外耳道に入れるとあっけなくそれでOKなのである。その後からケーブルを耳に掛ければよろしい。脱着可能なケーブルがくるくると回転してくれるので、使い慣れれば530より数段装着は楽になるはずだ。外耳道に突っ込まれている奥行きサイズはさほど変わらないとも思うのだけど、この違いは何だろう。SE535の装着感は、まるで耳介部分にきっちりはまったイヤーモニターのような収まりの心地良さだ。

両者をまじまじと見比べると、イヤパットをはめるノズルの角度と方向が変わっている。見た目にはちょっとの違いだが、この改良ポイントが思いのほか大きいようだ。SE530に付いてまわった「思いっきり奥まで突っ込んでください」などという、ちょっと引かれる強要とはおさらばだ。

なお、ケーブルも大きく進化している。SE530も前機種からはケーブルは強化・改良されてきた経緯があるが、SE535ではさらに太く頑強ながらしなやかになっている。実際私もケーブル劣化で本体ごと交換した経験があるだけに、ケーブルの品質向上は嬉しい改善点だ。その上簡単に交換できる設計をもって、ケーブルの劣化による本体交換のリスクからは完全に開放されることとなった。文字どおり一生モノとして愛用することができるのではないだろうか。標準装備で適切な長さとなったのも使いやすくてGoodだ。

どうひいき目に見ても、SE535の方が装着感、サウンド、メンテナンス…あらゆる点で分がある。SE530愛用者であればこそ、SE535の買いなおしは高い満足を得られることだろう。SE530の使用機会は完全に失いそうだけど。

どうでもいいことだが、パッケージは簡易化された。これまでのアルミ製の立派なケースは無駄にカッケーと530購入時のテンションを上げまくってくれたものだが、エコが叫ばれるこの時代…実用から逸れたムダは避けたほうがよいだろうという意味では、ここも正しき進化を遂げているわけだ。

サウンドには正解もなければ間違いもない。何を求めるのかによって行き着く先も変わってくる。品質の高低も含め、全ては使用者の満足度次第だし、それは好みの問題でもある。そういう意味では万人に満足できると断言できるはずもないけれど、SE535が最高峰の品質であることは疑いようもない事実。少なくともSHURE SE530愛用者は、素直にSE535に触手を伸ばしてみて欲しい。

“アーティストが作り上げた本当の姿”をきっちりと届けてくれる…それだけのことだけど、出力された音声信号を、スポイルすることなく耳元まで届けてくれる、質実剛健、品行方正、謹厳実直なSE535。期待通りの仕事をしてくれる…それこそが何にも代えがたき最高の贅沢だ。

text by BARKS編集長 烏丸

◆BARKS ヘッドホンチャンネル
◆SHURE オフィシャルサイト

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