【BARKS編集部レビュー】Ultimate EarsのTripleFi 10…この開発者、天才じゃね?

ハイエンド・カナル型ヘッドホンの中で、最も高い人気と実力を誇るモデルのひとつがUltimate Ears(アルティメット・イヤーズ)のTripleFi 10(トリプル・ファイ・テン)だ。

◆TripleFi 10画像
一聴して最初に思うのは「なるほど、申し分ないや」ということだ。バランスもよし、足りない部分もなく音へのストレスは何も感じない。要するに「これ以上のヘッドフォンが欲しいとは思わなくなる」という完成形の雛形がここに出来上がっているようだ。イケメンだと思ったら頭も良くてスポーツ万能、性格も良いときた。1stインプレッションで満足度A+++。みごとに絶大にして絶妙な商品設計…この開発者、天才じゃね?
しかし「これはいいですね。ちゃんちゃん」で本稿が終わっては入手した意味がない。手元のヘッドホンをとっかえひっかえ試しながら、どんな素性なのか聴き込んでみることにした。

不毛な比較と感じながらも、自分の耳で感じた素直な感想を述べるならば、音をトレースする冷静な正確さという点ではSE535、WESTONE4の両者に分がある。これらの音の端麗さは別格だ。一方で、多少サウンドソースがダサかろうと、マスタリングがヘロヘロなアルバムだろうと、アタックの心地よいキックをドスッとたたき出し、倍音たっぷりのオーバードライブしたギターサウンドを艶やかに鳴らし、伸びやかにハイハットの余韻を描き出す懐の深さ…、その頼りがいのぶっとさはTripleFi 10が圧倒的だ。
そこには、ソースを丁寧にトレースして再生しますというよりも、過不足なく的確なバランスで心地よい音を耳に届けることにこだわった製作側の意図が見え隠れするようだ。…というか、簡単に言ってしまえば非常に「オーディオ的ではなく音楽的」なのである。

ボディは大きいが、装着感は極めて良好だった。先っちょが耳にスポッとハマっているだけだが、形状記憶のケーブルが耳にフィットするため安定感があり、激しく動いてもずれることもない。アーティストが現場で使うイヤモニターでトップシェアを誇るUltimate Ears社だけあって、実用での不安要素は皆無だ。コードを触ったときの不快なケーブル・タッチノイズも全く発生しない。もちろん遮音性も完璧。
これといってマイナス要素も見つからず、ガンメタルブルーも非常に綺麗で好印象。…だが、このカラーリングが自ずと男性専用のイメージを植えつけている気もするが、どうなんだろうか。無理を承知ながらソフトバンクのケータイみたいにパントーンカラーがオーダーできれば、超テンション上がるんだけどな。そういう遊びも似合うモデルだと思うんだけど。

最後にひとつだけ気になるのは、エイジングによってどうなるか。実はたっぷり再生キャリアを持った10vi(電話・音楽コントロールボタン付)とまっさらな10 PROの2機を並行して試聴を重ねたが、エイジングが進んだと思しき方が、よく言えばワイルド、悪く言えば雑味があった。これがエイジングの影響なのか、ケーブルの違いなのか…。リケーブルによる音質向上の噂も聞く。どこまでクリアさが上がり各帯域の出方にスムーズさがでてくるか、もうしばらく追ってみたいところだ。もう一段階、こいつは凄い世界を隠し持っているかもしれない気もして…。
text by BARKS編集長 烏丸
◆Ultimate Earsオフィシャルサイト
◆Ultimate Earsオフィシャルサイト(海外)
◆ロジクール オンラインストア
◆BARKSヘッドホンチャンネル
BARKS編集長 烏丸レビュー
◆Westone4
◆ソニーMDR-EX1000
◆SHURE SE535
◆ゼンハイザーIE8
◆Etymotic Research ER-4S
◆KOTORI 101
◆ビクターHA-FXC51
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