【BARKS編集部レビュー】理知的で端正、Unique Melody Maverickの高品位サウンド

Unique MelodyのユニバーサルイヤホンMaverickを試聴する機会を得た。Unique Melody（以下UM）と日本の代理店ミックスウェーブのコラボによって生まれたモデルだ。今回は自分で購入したものではないので、好きなだけ使い倒したわけではなく返却するまでの限られた期間での試聴体験ということで、限りなく1stインプレッションに近い試聴レポとご理解いただきたい。

◆Unique Melody Maverick画像

最大の興味ポイントは、ダイナミックドライバーとバランスド・アーマチュア（以下BA）の5ドライバーハイブリッドというハイスペックをユニバーサル（汎用）ハウジングに収める、そのコンセプトだ。UMには世界一有名なハイブリッド・カスタムIEMのMerlinが存在している。奇しくも1ダイナミック＋4BAという全く同様のドライバー構成を持っているが、両者のサウンドの違いも気になるところだった。

結論から言えば、MaverickとMerlinは競合するものではなく共存できるサウンドだ。キャラかぶりの要素は全くなく、MerlinユーザーにとってMaverickのサウンドはクリアで瑞々しく響くであろうし、新鮮で美しく端正なトーンバランスに馴染んだMaverickユーザーの耳には、Merlinの暴れ方は屈託なく愛おしく響くことだろう。簡単に言ってしまえば、ハイブリッド・サウンドをステレオタイプに体現させたMerlinと、その反動を持ってハイブリッドを一切感じさせないトーンに磨き上げたMaverickといった位置付けであろうか。





Maverickの最大の魅力は、ダイナミックとBAが完全に融合しひとつのトーンとして完成されている点だ。多くのハイブリッドイヤホンの場合、低域と高域でダイナミックとBAの担当領域を受け持ち、結果両者のトーンは帯域に対して直列に積み重なったように構成される事が多い。Thousand Sound TS842やnull audio ElpisといったハイブリッドのカスタムIEMもそういう設計だ。が、Maverickはその音を聞く限り、5つのドライバーがパラレルに折り重なるようにサウンドを構築しているように聞こえる。5つのドライバーが並列に鳴ることでウイークポイントをなくし、全帯域をなめからにフラットにカバーするような設計にも見える。オフィシャルからのアナウンスによると低域にはダイナミック＆BA、中域にBA×1、高域にBA×2とのことだが、ダイナミックも数KHzあたりまでは普通に鳴っているように感じさせるサウンドだ。むしろ中域のボーカル域はダイナミックによるトーンが大きな要素を担っている質感がある。ドンシャリ気味の4ドライバー設計のイヤホンに、中低域の表現が得意なダイナミックをパラで追加し、全体のバランスを調整することで誕生した極上フラットサウンドなのではないか。

一方でMerlinは、ハイブリッドの魅力を全面に出したわかりやすいサウンドで、先の表現で言えば、異ドライバーサウンドを直列に縦積みしたMerlinと、パラレルに折り重ねたMaverickと区別できる。

すっきりした硬質なMaverickのトーンには暑苦しさがなく、理知的に整理整頓されている。音と音の隙間もクリアに澄み切っているので、大洪水のような音のレイヤーが大量に重なった音楽でも潰れることなく丁寧に音を描き出す。「ハイエンドオーディオ」と呼ぶにふさわしい高品位さにあふれたトップクラスのサウンドだ。ことハイミッドからハイにかけてのヌケの良さは秀逸で、Maverickの特筆すべき最大の美点もここにある。Maverickからダイナミックドライバーを排除しカリカリにチューニングを突き詰めるとそのままMasonのサウンドになるだろう。神経質なストイックさよりもオーディオリスニングの心地よさを丹念に研ぎ澄ましたのがMaverickのサウンドと言えそうだ。

この中高域の美しさとスピード感のある低域を持ったまま、イヤーピースによるトーンの劣化リスクが排除できれば、万人に向けて安定した素晴らしいイヤホンが誕生するだろう。つまりは、MaverickのカスタムIEM化が非常に待ち遠しいということ。一刻も早いカスタム版登場のアナウンスを期待したいなぁ。

text by BARKS編集長 烏丸哲也






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