【BARKS編集部レビュー】Fidue A65「初めて高級イヤホンを購入しようか」という人へ

2015.7.29 12:03

6月に執筆した「【BARKS編集部レビュー】2015年上半期、お薦めイヤホンを選り抜いてみた」という記事に対し、「もっとこういう記事を出せ」とのお声を多く頂いたので、お薦めイヤホンが出揃うであろう年末あたりにまた記事にしたいとは思っているのだけれど、それまで待てず取り急ぎ紹介したいイヤホンがある。Fidue A65である。

◆Fidue A65画像

Fidueは、高き志のもと素晴らしいサウンドを叩き出す中国の新興勢力のイヤホンブランドで、果敢な設計思想に感銘を受け、これまでもA81、A83、A71…といくつかのモデルをレビューしてきた。今回紹介するA65は、参考小売価格￥6,980というFidueの中ではエントリーモデルに位置付けされるものなのだけど、これがまた珠玉の出来なのである。

そもそもA65は、隠れた名機として非常に高い評価を得ていたA63の後継として登場してきたモデルだ。A63は高い人気を保ったまま生産終了となってしまったので、非常に残念な思いをしていたのだけれど…なんてことはない、こいつの登場を控えていたというわけで、A65はA63とほぼ変わらぬ価格で登場してきた。もちろんポイントは、ほとんど変わらないのは価格だけで、イヤホンとしての完成度はあらゆる面で大きくグレードアップを果たして登場してきた。ここが凄いのだ。

何よりサウンドがさらにぐんと良くなった。A63に比べクリアさが格段にアップされており、とても見通しの良い鮮明なサウンドになっている。あわせて解像度も向上したようで、いわゆるグレードが1～2段アップしたかのようだ。サウンドのバランスはごく常識的なもので、注意すべきアクやクセもない。イヤホン自体が個性を主張するようなことは一切なく、音楽自体の特徴やサウンドの個性をそのまま素直に引き出すような鳴り方をする。とても使いやすく、どんな音楽を聞いてもストレスを感じることが全くないのは、驚くほどサウンドクオリティが高いことに起因しているものと私は思っている。力強い低域を持ちながらもすっきりとした清廉な音像は、多くの人から好印象で受け入れられるのではないかと思う。簡単に言ってしまえば、とても￥6,980の音色とは思えない。数年前であれば、数万円をはたかないと手に入れられなかったハイエンドのサウンドだ。

スマホ付属のイヤホンから初めて高級イヤホンを購入しようかという人には、￥6,980は決して安くない。こんな金額のイヤホン購入には勇気がいるだろうし、後悔しないかどうか決断が難しいところだろう。ただ、これまで数百ものイヤホンを購入してきた立場からしてみれば、「思い切ってA65を手にしておけば、その後も不満が出ることはない」だろうと思っている。ざっくり言ってしまえば、最高級レベルのイヤホン…例えば高額なカスタムIEMであるNoble Audio K10やSavant、Unique Melodyマベカスなども、A65のサウンドと似たようなものだからだ。いわばA65は最低限の価格で理想的サウンド80点を手に入れるようなもの。10万円も20万円もするカスタムIEMは90点やら92点…といったさらに突き詰められた品質を持っているけれど、それを最大限に活かすには音源そのものやプレイヤーにもテコ入れが必要になってくる。例えるならば、ライセンスを取得してF1レースに参戦したいのか、単にマイカーでドライブを楽しみたいのかの違いだろうか。日々の暮らしで言えば、F1マシンとファミリーカーは比べるまでもなくファミリーカーのほうが使いやすい。A65は、毎日の生活のなかで、過不足ない素晴らしい音楽体験を与えてくれることだろう。

A63と比べ、A65は筐体がメタル製となり高級感も大きく向上した。ずっしりとした重みもあるが、その作りこみがサウンドに好影響を与えているのは言うまでもない。遮音性も上々、奇をてらった形状でもないので、問題なく耳にもフィットすることだろう。通話用マイクも新たに搭載されている。

個人的に最も不満なのは、ケーブルの滑りが悪く多少癖が残って絡みやすい点なのだけど、ケーブルの品質自体は悪くなく、むしろ高級感すら漂う質感なので、多くの人にはマイナスポイントではないかもしれない。

「いやいや、私予算はもっとありますよ。1万5千円くらいまで出せます」という猛者には、Fidue A73という激推しの新製品があるのだけれど、それはまたの機会に…。

text by BARKS編集長烏丸哲也