【BARKS編集部レビュー】アーリーマジョリティを満足させる鉄壁の設計、カナルワークスCW-L15

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またひとつ、3ドライバーのお薦めカスタムIEMを発見した。カナルワークスCW-L15だ。

◆カナルワークスCW-L15画像

CW-L15は、カナルワークスの創業初号機という記念すべきモデルCW-L11を見直し、一から再設計を図ったモデルとして登場したカナルワークスの最新機種だ。CW-L11をリファインさせた品質向上モデルと位置づけられているが、ネットワーク設計や音響管はもちろんドライバーそのものまで一新されており、基本コンセプトと3ドライバーである点だけを引き継いでの新設計となっている。リニューアルではなく完全ニューモデルというべき完成度で登場しており、CW-L11はディスコンとなった。

ニュートラルで高品質を誇るCW-L32/CW-L32Vをラインアップの中心に置き、6ドライバーのCW-L51aを経て8ドライバーのCW-L71という世界トップレベルの完成度を誇るフラッグシップを打ち出してきたカナルワークスだが、ここに来て原点回帰するかのごとく、ベーシック/エントリーモデルに目線を向け、次々と自社モデルをブラッシュアップさせている。世界中のカスタムIEMブランドが華々しいフラッグシップモデル開発にしのぎを削る中で、多ドライバー戦線には目もくれず、足元を見据えてベーシックな品質向上に勤しむ姿勢がカナルワークスらしい。


堅実で実直な社風がそのまま色濃く出ているようで、CW-L15のサウンドはこれ以上は望むべくもないという広帯域をカバーし、極めて自然なサウンドバランスを着実に聞かせてくれる。もはや音だけを聞かされても、私にはドライバー数も分からない。3ドライバーのサウンドに聞こえるが、4ドライバーや5ドライバーだと言われても不思議ではない非常に滑らかでまとまった高品質な音がする。常々3~4ドライバーのカスタムIEM群が最も面白く、聴きごたえのあるモデルが多いと感じているけれど、まさにこれこそが、3ドライバーで聞かせてくれる一つの理想的なハイクオリティサウンドだ。


強いてウイークポイントを探すとすれば、ドカスカ低域の量感を感じるサウンドを求める人には低域が物足りないだろう。とは言え、これが極めてノーマルなバランスだ。カナルワークスで言えばCW-L51aやCW-L71のトーンバランスと共通する礼儀正しさがある。

私が所有する3ドライバーモデルの中で最も似ているサウンドを出すのは、私にとってフェイバリットモデルであるClear Tune Monitors CT-300Proである。ちょっとCT-300Proのほうが暑苦しく、CW-L15のほうがさっぱりしているようにも聞こえるが、この辺りは極小の違いで、気分やその場のノリで使い分けられるお気に入りがひとつ増えて、ものすごくハッピーだ。


▲左よりカナルワークスCW-L15、Clear Tune Monitors CT-300Pro、UERM、UE 7 Pro。

3ドライバーとしては、Ultimate Ears Custom In-Ear Reference Monitors…通称UERMが最も有名なモデルのひとつだが、今もなおUERMは削ぎ済まされた高域表現ときめ細かい解像度を最大の武器としたもので、ロー感は非常に淡白だ。そういう意味ではUEの3ドライバーモデルとしてはUERMではなくUE 7 Proが好敵手となる。UE 7 Proはタイトさと適度な肉厚感が心地よいドンシャリのイメージを持っていたが、実際に聞き比べれば、UE 7 Proのほうが帯域が狭くナローに感じる。CW-L15のほうが現代的でフレッシュだ。ノリの良さで決めればUE 5 Proの延長上にあるUE 7 Proも魅力的だが、音楽再生機という意味でのバランスの良さを考えるとCW-L15に圧倒的なアドバンテージがある。実際CW-L15のほうが万能だろう。


カナルワークスの林氏は、近年のカスタムIEM人気を肌で感じるとともに、マニアではないごく一般の人がカスタムIEMを手にすることが増えてきていると指摘する。ユーザーが一部のマニアだけだった時代は、消費者側が商品の特異性を十二分に掌握しているがゆえに、あらゆる点で商品に対する理解があったとか。深い愛をもって一緒に商品を育むような連帯感があり、よりよいものを作り出す一員として、未成熟な点に対する理解も持ち合わせていたという。要するにこれまでは黎明期であったわけだが、今では完全に成長期へと次なる段階にシフトしているというわけだ。

アーリーアダプターからアーリーマジョリティ層へ移行が進みつつあり、同時に、品質に対するコミットレベルもぐんと上がっていく。つまりは「マニアックな商品だから」「手作りだから」「そもそもカスタムIEMというのはこういうもの」といった理解などは持ちあわせておらず、工業製品として金額に見合った完成度を当たり前のように要求する消費者へ、カスタムIEMは流通される時代になってきたというわけだ。


カナルワークスの創業から5年、ブランド一号機がリリースされてからここ数年の間に、カスタムIEMブランドは世界中で続々とたけのこのように誕生し、技術革新とともに新たなサウンドが次々に誕生してきている。激化する競争が品質向上を加速させたのは間違いなく、かつての名機も次第に過去の名作として色あせてしまうことだろう。カスタムIEMの進化の道は速く激しい。スタンダード・ラインナップが少しずつ最前線からずれて、いつしか一時代を支えたクラシカルなレガシーモデルとして崇められてしまう運命にあるなかで、CW-L11に引導を渡しCW-L15が新たに誕生してきたことは、今後のカスタムIEMの潮流を占う極めて象徴的な出来事であると思っている。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●カナルワークスCW-L15

価格:オープン(オフィシャルサイト税込85,320円)
ドライバー:バランスドアーマチュア方式(高域×1.低域×2)
インピーダンス:20Ω
感度:109dB
ケーブル長:127cm ※1
プラグ:ステレオミニプラグ ※2
付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス
※本商品は完全受注生産品です。
※ご注文に際しまして耳型(インプレッション)の採取が必要になります。
※商品画像は製作例です。実際の製作モデル型番とは異なる場合があります。
※ハードケースはクリア(ブラックパッド)です。
※1 オプションでケーブルの種類、長さを選べます。
※2 コネクタソケット仕様を選べます。

◆カナルワークス・オフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー

■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他
◆Heir Audio 10.A(2015-03-15)
●v-moda Crossfade M-100(2015-03-01)
◆FitEar Aya~彩(2015-02-23)
◇UE MEGABOOM(2015-02-8)

◇COWON PLENUE 1(2015-01-25)
■Unique Melody Maverick(2015-01-12)
◆rhines stage 5(2015-01-03)
◇Calyx M(2015-01-01)
■LIVEZONE R4 LZ 4ユニバーサル(2014-12-15)

■ROCK JAW KOMMAND(2014-12-14)
■Donguri-楽 濃茶&鐘(2014-12-08)
■DUNU ALPHA 1(2014-11-30)
■Fidue A71(2014-11-23)
◆AAW M20(2014-11-16)

◆Ultimate Ears UE 7 Pro(2014-11-3)
■絶対失敗しない攻めのサウンド、お薦めイヤホン6品(2014-10-21)
■NOBLE AUDIO Kaiser 10 universal(2014-10-18)
◆カナルワークスCW-L71PSTS(2014-10-12)
■UCOTECH IL300 affetto(2014-10-05)

◆rhines stage 4U(2014-09-28)
●ROCK JAW ACERO(2014-09-21)
◆Westone ES60(2014-09-14)
■Astrotec Lyra(2014-09-08)
■NOBLE FR(WIZARD)(2014-08-26)

■Fidue A83(2014-08-19)
◇Musician's Ear Plugs(2014-08-10)
◆Noble Audio 5C R Configuration(2014-07-27)
◆FitEar萌音-MONET(2014-07-21)
■SHURE SE112(2014-07-13)

■Blue Ever Blue 878(2014-07-01)
■茶楽音人Donguri-楽(RAKU)(2014-06-24)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
■OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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