【BARKS編集部レビュー】世界を牽引する高品質、カナルワークスCW-L71PSTSの機微

ポスト

2014年8月に登場したCW-L71は、非常に高いレベルにあるカスタムIEMだ。この完成度の高さをもって、世界中のカスタムIEMファンから垂涎の眼差しが注がれていることだろう。世界に誇れる安心の日本製であること、日本人による設計と制作のカスタムIEMであるということからも、我々にとっても必ずチェックすべきモデルの筆頭だとも思う。

◆カナルワークスCW-L71PSTS画像

CW-L71はカナルワークス初の8ドライバーモデルであり、最多ドライバー数を誇る最新モデルとなる。とは言え、昨今では8ドライバーも珍しくない状況にあり、ことさらスペックを語るモデルでもない。そもそも設計・開発を務める林氏は、ここ近年のいたずらな多ドライバー化傾向には少なからずの疑問の念を抱いていたようで、静観の立場を貫いてきたという事実がある。

▲カナルワークスCW-L71PSTS。PSTSオプションを付けたので、フェイスプレート上に抵抗が鎮座している。
▲フェイスプレートはブラックにホログラムグリッターを多めに散らしたもの。煌びやかながら派手すぎず美しい仕上がり。
▲相変わらず透明度の高い美しいシェル。遮音性も完璧。
▲比較した2モデル。左がカナルワークスCW-L71PSTS、右がカナルワークスCW-L51aPSTS。基本的な性格は同一方向だが、微細な表現能力はCW-L71が一歩上回る。
▲いずれも高域表現が素晴らしい3モデル。左からカナルワークスCW-L71PSTS、アルティメットイヤーズUERM、LEAR LCM-5。
▲PSTSオプションをつけると11種類の抵抗が付属する。小さくて探しだすのがめんどくさいので、小袋に分けて整理し、袋に値を書いておくと便利。
▲付属品は、ペリカンハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス。PSTSの場合は、11種類の抵抗と、抵抗の読み方指南書が付属する。

それまでは6ドライバーのCW-L51aがカナルワークスのフラッグシップの座を守っていた。そんなCW-L51aの解像度を更に突き詰めたモデルを開発しようと試行錯誤する中で、結果的に8つのドライバーを使うことになってしまったというのがCW-L71の生い立ちのようだ。つまり8ドライバーモデルを開発しようという目的で誕生したモデルではなく、目標達成の暁にあった結果論だという。確かに、スペック競争で闘うべく多ドライバーモデルをラインナップに加えるのであれば、最低でも12ドライバー、あるいはそれ以上のインパクトを与えなければ、いまさら話題性は生まれない。

CW-L71のサウンドは、CW-L51aの延長上にあり、重厚ながらスピーディで制動が効いている点、タイトでシャープながら甘さもある点などはそのまま共通している。その上で更なる精細な表情を描き分ける能力を押し上げたという印象だ。

非常に整理されたサウンドで、すっきりとまとめられた心地良い音像が何より魅力的であり、音楽を美しく丁寧に描きだす能力は天下一品だ。どれだけ音量を大きくしてもその鳴りっぷりには余裕があり、決して暴れたり特定のピークが目立ってきたりといった粗暴さがない。雑味なく丁寧に丁寧に隙なく設計された几帳面さは、端的にカナルワークスらしさを表した優れたポイントだ。

そしてそんな生真面目さを横目に、ザブトンを横からへっぱがしてちゃぶ台をひっくり返すようなワイルドなサウンドチューンを許してくれるのが、PSTSのオプションだったりもする。品行方正なCW-L71にとんでもない無礼講を許すのがPSTSで、これがまた最高におもしろく、私はCW-L71にはPSTSオプションを付けることを強く強くおすすめする。こんなお得なオプションはカナルワークスだけだし、CW-51a/CW-L71購入者の特権という意味でも、PSTSを搭載しないのはあまりにもったいない。

ちなみにPSTSとは“パーソナルサウンドチューニングシステム”の略で、低域の量感を制御する抵抗パーツを内部に固定せずに、フェイスプレート上に露出させたオプション・サービスだ。抵抗値が11種類付属し、それらを自分で交換することで低域から中域までの量感を自由に調整できる。抵抗の抜き差しだけで、11のサウンドキャラクターを自由に楽しむことができるのだ。

低域の出方はドラスティックに変化する。デフォルト値から+12db~-4dbまで制御可能で、TVのボリュームの1ステップがおおよそ2dbであることを考えると、大胆に低域の量感を上げ下げできることがイメージできるだろう。ただ、低域のバランスを強めると同時に中域も張り出してくるため、精悍さは影を潜め暑苦しさも目立ってくる。瑞々しい高域に影響が少ないのは18Ω使用時の+4db程度までで、12Ωの+6dbになってくると低域とともに中域の張り出しが目立ち始め、高域をマスキングしてくる感じがする。

とは言え、3.3Ωに換え+10dbあたりまで低域を出すと、低域をドバドバ叩き出す全くキャラの違うモデルへと表情を変えるので、もはや別モデルを手にしたようで一気に楽しさが加速する。高域の瑞々しさや透き通った清涼感を堪能するのであればデフォルトの33Ωを基準とし、低域のプッシュ感を増しながらもバランスの良さを担保するのであれば18Ωで+4dbあたりがオススメだ。このあたりは、旨みたっぷりCW-L71の上質さを活かした低域大盛りのハイカロリーサウンドといったところか。

美しい高域表現は妥協したくないという人、広帯域でも濃密な音が苦手な人、低域偏重のトレンドに辟易している人は、迷わずCW-L71をチェック頂きたい。アルティメットイヤーズUERMやLEAR LCM-5からのステップアップを狙っているような人にもバッチリだろう。

世界最高峰レベルの美麗な高解像度サウンドは、まるで、どんな音楽でも心地よく再現してしまう魔法の絨毯で音楽の旅をしているような、夢見心地のひとときを味あわせてくれる。今、カスタムIEMのハイファイサウンドは猛烈な勢いで成長・発展を遂げているが、CW-L71はまたひとつ新たな方向性を提示したものと思っている。

text by BARKS編集長 烏丸

●カナルワークスCW-L71PSTS
150,000円(標準仕様・税別)
●カナルワークスCW-L71
140,000円(標準仕様・税別)
・ドライバー:バランスドアーマチュア方式(高域×4.中・低域×2.低域×2)
・インピーダンス:20Ω
・感度:109dB
・ケーブル長:127cm
・プラグ:ステレオミニプラグ
・付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス
※完全受注生産品
※ご注文に際し耳型(インプレッション)の採取が必要
※ハードケースはクリア(ブラックパッド)の場合もあります

◆カナルワークスCW-L71PSTSオフィシャルサイト
◆カナルワークスCW-L71オフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル


BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
■UCOTECH IL300 affetto(2014-10-05)

◆rhines stage 4U(2014-09-28)
●ROCK JAW ACERO(2014-09-21)
◆Westone ES60(2014-09-14)
■Astrotec Lyra(2014-09-08)
■NOBLE FR(WIZARD)(2014-08-26)

■Fidue A83(2014-08-19)
◇Musician's Ear Plugs(2014-08-10)
◆Noble Audio 5C R Configuration(2014-07-27)
◆FitEar萌音-MONET(2014-07-21)
■SHURE SE112(2014-07-13)

■Blue Ever Blue 878(2014-07-01)
■茶楽音人Donguri-楽(RAKU)(2014-06-24)
■オーディオテクニカATH-CKR10(2014-06-14)
◇estron Music、BaX(2014-06-03)
●OSTRY KC06(2014-05-18)

◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)

◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
この記事をポスト

この記事の関連情報