【BARKS編集部レビュー】CRESYNからやっと登場した、羊の皮をかぶった狼イヤホン

ポスト

以前、CRESYN(クレシン)が保有する自社ブランド:フィアトンのハーフカナル・イヤホンを紹介したときにも触れたことだけど、クレシンという会社は凄い。世界中のヘッドホンをOEM・ODM生産している世界指折りの企業で、韓国・日本・中国・香港・インドネシア・ベトナムに現地販売及び生産法人を直営しており、月に約2,000万台(!)ものヘッドホンを生産しているという、とんでもない会社だ。

◆CRESYN 4モデル画像

(1)▲C230E

(2)▲C330E

(3)▲C230S

(4)▲C262S

クレシンは、エントリークラスから高級モデルまで製造ノウハウと実績に基づいたデータを保有し、素晴らしいサウンドのヘッドホンを安価に作り出す実力を保有している組織なのだけど、クレシンブランドで発売している製品は、そのほとんどが手の出しやすい安価なモデルばかり。ただ、羊の皮をかぶった狼とはまさにこのことで、実はそれがとんでもなくハイクオリティーだったりするから、クレシンは見逃せない。

今回紹介する4モデルは、実は2011年秋のヘッドホン祭の会場でサンプルとして展示されていたものの一部だ。その多くが2000円台という非常に安価なものばかりで、数万円から十数万円の高級モデルがド派手にアピールされている祭会場にあって、クレシン・ブースはさほど目立つこともなく、ただただ大量のエントリーモデルが机上に陳列されていた状況であったと記憶している。

ただ、そこで何気に試聴したC230EやC330Eが、驚くほどに高品質で2000円~3000円とは思えぬクオリティだったため、私はひそかにこれらの発売を待っていた。SOUL by Ludacris SL99やREALM IEM856、ファイナルオーディオデザインのAdagioといった会場で出会ったインパクトの強い新製品の陰で、実は最も登場を楽しみにしていたモデルのひとつがこいつらでもあった。

今回数ヵ月ぶりの再会となったわけだが、ヘッドホン祭で試聴した時の印象と変わらぬまま、やはりぶっちぎりのコストパフォーマンスを見せつける驚くべき連中であることが再確認できた。

単刀直入に言ってしまえば、まずはどれも非常に音がいい。いずれも同じドライバーを使用していると見えて、サウンドは共通して高品質だ。特に低音の押し出しが今風でローの迫力が特筆もの。しかも非常に引き締まったタイトな音で、質感が素晴らしい。中域もしっかりと存在感があり腰のあるぶっとい音を叩き出す。曇りや眠たさも少なく、エージングが進めばよりクリアになっていく素質を持っている。高域は刺さることなく見通しもいい。つまりは、量感のある低域をもった中庸なバランスが魅力で、特に不満が見当たらないナイスなトーンなのだ。

それでいて市場価格はいずれも2000円~2500円という激安価格。こりゃもう事件ですよ。

もちろん全てにおいて絶賛するわけではない。質感も悪いとは言わないものの高級感があるわけではないし、ケーブルも癖がつきやすくタッチノイズが乗りやすいゴムっぽい質感のもの。イヤーチップは3種類のサイズが同梱しているけれど、他の付属品は特にないし、パッケージも簡易的なブリスターパックで保存性に欠けるものだ。

質感がさほど高くないのは軽量のプラスティック素材のためだと思うが、逆にその軽さが抜群の付け心地に寄与していて、耳への圧迫感は驚くほど少ない。実際そのサイズはSHURE SE215やWestoneよりも一回りコンパクトなサイズとなっている。外耳道に密着できていないのではないかと感じるほどの優しい付け心地なのだけど、付属のイヤーチップのままでごく標準的な遮音性は確保できているし、しっかりとした低音も出ている。簡単な装着でこの押しの強いサウンドが簡単にお目見えするところが何気に凄い。そのサウンドを高級モデルと比べればさすがに見劣りするところはあるものの、これだけを愛用している状況では完璧なバランスで音楽を必要十分に楽しませてくれる。

今回登場した4モデルを簡単に整理しておこう。全てカナル型だが、SHUREやWestoneのような形状の耳掛けタイプとノーマルタイプの2種類があり、それぞれにiPhone対応コントロールが付くモデルと付かないモデルという全4機種となる。各々カラーにはブラックとホワイトが用意されているので、4モデル8バリエーションが今回登場した全ラインナップだ。

(1)C230E●SHURE掛け●2,000円前後
(2)C330E●ノーマル型●2,000円前後
(3)C230S●SHURE掛け●iPhone対応●2,500円前後
(4)C262S●ノーマル型●iPhone対応●2,500円前後

個人的には一番のお薦めは(1)C230Eだ。耳の後ろにケーブルを回すいわゆるSHURE掛けに抵抗がある人には馴染めないデザインかもしれないが、この形状のおかげで、フィット感も上々、低音の迫力も最も素直に楽しめ、しかもケーブルのタッチノイズがすっきりと解決される。まさか2000円のサウンドとはとても思えない、強烈なコストパフォーマンスを感じさせてくれたのがこのモデルだ。

▲(1)C230Eと(3)C230Sは、いわゆるSHURE掛けと言われる、このような耳の上にケーブルを掛けて首の後ろへ回す装着方法。ケーブルも邪魔にならずタッチノイズも解消されるメリットがある。

数百円上昇するが、(1)にiPhone対応コントローラーが搭載されているのが(3)C230S。(1)C230Eよりも低域が控えめに感じたが、iPhoneのコントロールとハンズフリー通話が可能で、スライドボリュームで音量調整ができる点も便利。マイク付きコントローラーがついてこの価格だから、iPhoneユーザーにはマストかもしれない。

一方の(2)C330Eは、通常のイヤホンタイプで親しみのある形状なので、多くの人が何の抵抗もなく愛用できるタイプとなる。耳にさっと引っかけるだけの気軽さが一番の魅力だ。そしてiPhoneコントローラー付が(4)C262Sとなるが、(2)と(4)の筐体デザインは両者全く異なっているので、ご注意を。

text by BARKS編集長 烏丸

●CRESYN C230E、C330E、C230S、C262S
2012年1月26日発売
共通仕様
・カラーBLACK/WHITE
・型式カナル型
・ドライバーサイズ8.8㎜ダイナミックドライバー
・再生周波数帯域20Hz~20,000Hz
・ケーブル長1.2m
・付属品シリコンイヤーチップ3種(S,M,L)
(1)C230E
・オープンプライス(市場価格2,000円前後)
・インピーダンス16Ω
・出力音圧レベル90dB
・最大入力40mW
・質量2.8g
(2)C330E
・オープンプライス(市場価格2,000円前後)
・インピーダンス16Ω
・出力音圧レベル91dB
・最大入力40mW
・質量2.8g
(3)C230S
・オープンプライス(市場価格2,500円前後)
・インピーダンス26Ω
・出力音圧レベル90dB
・最大入力40mW
・質量2.8g
(4)C262S
・オープンプライス(市場価格2,500円前後)
・インピーダンス16Ω
・出力音圧レベル91dB
・最大入力20mW
・質量3.3g

◆クレシン・オフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
◆ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
◆SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
◆AKG K550(2011-12-20)
◆SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
◆DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
◆オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
◆REALM IEM856(2011-12-02)
◆ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◆Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
◆Reloop RHP-20(2011-11-22)
◆オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
◆SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
◆Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
◆SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
◆JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
◆BauXar EarPhone M(2011-10-10)
◆SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
◆AKG K3003(2011-09-18)
◆Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
◆Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
◆Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◆ORB JADE to go(2011-08-22)
◆YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
◆NW-STUDIO(2011-08-09)
◆NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
◆Westone ES5(2011-07-21)
◆SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
◆クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
◆GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◆SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
◆フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
◆ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
◆フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
◆アトミック フロイド(2011-05-26)
◆モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
◆SHURE SE215(2011-05-13)
◆ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
◆ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
◆ローランドRH-PM5(2011-04-23)
◆フィリップスSHE9900(2011-04-15)
◆JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
この記事をポスト

この記事の関連情報