【BARKS編集部レビュー】Noble Audio、ついに登場したKaiser Encoreの実力は？

「あなたにとって一番いい音のイヤホンは？」という質問は「あなたが一番好きな食べ物は？」と似て、なかなか難しい。気分によって変わりもするし、そもそも一番なんて決められやしないもの。

◆Noble Audio Kaiser Encore画像

それでも「いいから言えや」と詰問を受けることも多く、結局私は「Noble AudioのKaiser10（K10）です」と答えてきた。もちろん他にもフェイバリットはたくさんある。AK T8iEも素晴らしいし、音茶楽flat4シリーズは今でも傑作だと思っている。ド派手な音を出すハイブリッド系にも好きなイヤホンはたくさんある。ただ、出会いのインパクトの強さと、その感動が一切色褪せずに3年もの年月が経っており、その間一時たりともK10の評価が下がったことがない事実に気が付いた。「これだけたくさんのイヤホンを試してきたのに、不動の高評価をキープしているなぁ」と客観的判断から、「K10が好き」という自分の趣向性を再確認した感覚でもある。正しくは「一番いい音のイヤホン」というよりも「一番いい音に感じるイヤホン」＝「一番好きな音のイヤホン」なのかもしれないけれど。


そんなK10はKaiser Encore（カイザー・アンコール）にリニューアルされ、K10自体はディスコンとなる。私が最も信頼を寄せているK10が世の中から消えるとなれば、本来は心中穏やかではないはずなのだけど、そこはさすがのNoble Audio、Kaiser Encoreの出来があまりに素晴らしいのでストレスはゼロである。

Kaiser Encoreは、K10よりさらに開放感のあるサウンドとなり、ハットが鮮やかに響く音像が目の前に広がる感覚が加わった。そのトーンは素晴らしくバランスの取れたもので、K10から劣る要素は全く見当たらない。濃密さや艶めかしさ、人肌の暖かさのようなK10が持っているエネルギー感はスポイルされておらず、相変わらずの「うわ、めっちゃいい音！」というインパクトたっぷりのサウンドである点も変わらない。

オフィシャルによると、K10よりも中域が少し持ち上がり、更なるフラットな周波数特性になったとアナウンスされている。そのニュアンスだとKaiser Encoreは、K10よりもカマボコっぽい落ち着いたサウンドになっていると想像されるのだけど、実際は高域から超高域にかけての抜けの良さに魅力アップのポイントが見える。むしろ周波数特性がさらに伸びているかのようなハイファイさを感じることもでき、いわばK10から少しKatana側に寄ったイメージであろうか。こと女性ボーカルの表現においては、ブレスや子音のデリケートな表現が伝わりやすくなり、音楽の魅力がさらに顕になる印象がある。



カラーリングはぐっとダークに寄せた萌黄色をメタリックに仕立てたようなルックスで、落ち着きと重厚さがそのサウンドによく似合う。このカラーには、真紅があしらわれたK10からの反省点が活かされているようで、地域や国によっては「なんで女性カラーにするんだ、これじゃ使えないじゃないか」とのおしかりも受けていたのだとか。

Noble Audioのユニバーサルイヤホンは、2ドライバーのSageから、Trident、Savanna、Dulce Bass、Django、Savant Universal II、そしてKaiser EncoreとKatanaという全8モデルとなり、まさにスペックではなくサウンドの好みで選べばよいというブランドの意思が反映された、鉄壁のラインナップができあがった。フラッグシップはKaiser EncoreとKatanaとの両翼でどちらも￥226,800（税込）と同一価格になっている。Katanaはすっきりタイトでシャープな音像が最大の魅力なので、重厚感を楽しみたいのならKaiser Encore、スピード感を優先するならばKatanaを選べばいい。なかなか手の出せない強烈な価格だが、まさしく世界最高品質のイヤホンなので、もうイヤホン購入スパイラルから抜け出したいと思う貴兄であれば、一生共にできるKaiser Encoreを手にするのは大正解だ。




Noble Audioの全てのユニバーサルモデルがアルミプレートの同一デザインに統一され、耐久性も大きく上がっている。なお、K10からKaiser Encoreに変わったことで、ハウジングは1mmほど小さくなっている。ほんのちょっとの違いだが、耳への収まりはその分良好だ。



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