【BARKS編集部レビュー】カナルワークスCW-L12は名機、欠点探すも見つからず
カスタムIEMブランド、カナルワークスの新フラッグシップの素晴らしさを一刻も早く伝えたくて7月にCW-L51aの紹介記事を執筆したけれど、同時に発表されたCW-L12のほうが、むしろしっかりと紹介しなくちゃいけない機種だった。
◆カナルワークスCW-L12画像
CW-L12のサウンドは、基本的にキレがよく非常にクリア、それでいて十分な広帯域を持っている。しっかりとした低域からなめらかな中域、そして元気で弾けるようなみずみずしい高域がバランスよく、調和のとれた特性が心地よい。第一印象はとにかくピュアで汚れない音質、生ぬるさもなく描画力も非常に高いと感じることだろう。このサウンドを嫌いという人はあまりいないのではないだろうか。
あまり褒めても気持ち悪いので、ルーペで重箱の隅をつつくように分析するならば、中域がちょっと平坦で、立体感に欠けるかもしれない。2ドライバーならではのタイトさが美点だが、逆に言えば濃密さやディープな厚みなどは持ち合わせていない。…と、無理矢理ウイークポイントを探ってみたけれど、ここにすぐさま不満を持つ人がいるとも正直思えない。しっかりとしたローの厚みと張りのある高域のバランスはとても自然で、中域は無理のないナチュラルな元気サウンドに響く。勢いもノリもあるが下品ではなく、適切に抑制も効いておりオールラウンドに楽しめるものだ。あ、また褒めてしまった。
CW-L12のドライバーは低域用×1と高域用×1の2ドライバーだが、2つのドライバーはコンパクトにまとめられており、低域ドライバーからの出力経路には、非常に細い音導管を通すことでアコースティカルなハイカットフィルターが施されている。クリアネスの高いトーンは、この辺りの設計が大きく関与しているのだろう。
2ウェイ2ドライバ構成といえば、カナルワークスにはCW-L10というモデルがある。2011年秋にリリースされたモデルだが、こちらもそのコンセプトは「馬力のあるドライバーでベストチューニングを施し“元気よくロックを鳴らす”」とうたわれたもの。今作CW-L12もそのCW-L10の流れを汲むもので、ざっくりと基本路線は変わらぬところだが、サウンドの違いは細かいところに散見される。
両モデルの相違点にぐっとフォーカスして評価をデフォルメするならば、今作CW-L12の方が高域の鈴なりが心地よい。この高域がとても繊細さを感じさせるもので、ガツガツしない適度な押しを持った端正な低域とのバランスは“草食系ちょいドンシャリ”という感じだ。シンプルで嫌みのないトーンバランスなので、広く多くの人に好まれるサウンドではないだろうか。
一方、CW-L10のほうが若干筋肉質で、マッチョなタイトさと低域の押し出し感を持っている。比べれば男性的でパンチ力があり、ちょっと硬質な“正統派ドンシャリ傾向”だ。ガツンとまとまりと圧があるサウンドが好みであれば、CW-L10の方がおすすめできる。
CW-L12のイメージを表すようなキャッチコピーを挙げるとすれば、「フレッシュでジューシー」「弾けるような楽しさ」「広がって散っていくような華があるサウンド」「ノリよくスマートでフェミニンなモテモテイケメン」…そんな感じだろうか。たとえこんな言葉にはピンと来なくとも、CW-L12は最大公約数的に多くの人から愛されるであろう普遍的なバランスを聞かせてくれる。「迷ったらCW-L12」と言われるような、デファクト・スタンダードなカスタムIEMになる素養をもった秀逸モデルだと思う。
優れた最新鋭リスニング機なので、初めてのカスタムIEMという人にも是非お薦めしたい。これまで味わったこともない視界の開けた音世界に感銘を受ける事請け合いだ。
text by BARKS編集長 烏丸
●カナルワークスCW-L12
2way/2driver Custom In-Ear Monitor
64,800円(標準仕様)
ドライバー:バランスドアーマチュア方式(高域×1.低域×1)
インピーダンス:75Ω
感度:109dB
ケーブル長:127cm
プラグ:ステレオミニプラグ
付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス
◆カナルワークスCW-L12オフィシャルサイト
◆カナルワークスCW-L12販売サイト
BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)
■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)
◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)
◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)
●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)
◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)
◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)
◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)
◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)
◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)
●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)
●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)
■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)
◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)
◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)
■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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