【BARKS編集部レビュー】フィリップスSHE9900は、怪しくも悩ましいヘッドホン道への起点/到着地点

ライフワークのように、いろんなインナーイヤーヘッドホンを聞き比べていることから、「イヤホン欲しいんですけど、何がいいですかね」と聞かれる機会が増えてきた。専門家でもないしショップやメーカーの方のような専門知識を持ち合わせているわけではないけれど、毎回しつこくしゃぶりつくように聞き込んでいると、それなりに違いや特徴が分かるようになってくる(気がする)。
◆フィリップスSHE9900画像
正解はひとつじゃないことや、求める方向性によって評価が全く逆転してしまう事実も知った。HIPHOP好きとHR/HM好きが熱弁をふるってもお互い話がかみ合わないように、同じ低音でもクラブで鳴らす爆音のキックと、ウルトラゲインで地鳴りのように鳴らす7弦ローBのギターサウンドでは、低音の質も違えば気持ちよさのポイントも全く異なるというもの。そう、良し悪しではなく好みということ。
全てに万能という商品はないんだな…と悟ったような気持ちになる反面、だから面白いとも気付く。毎日ハンバーグばっかり食べるわけにはいかないように、和洋中、いろんなサウンドがあるから、あれもこれも楽しく、いつも新鮮な美味しさが堪能できるわけだ。
…そんな前口上はいらねえから「何がいいかさっさと答えろよ」と訊かれれば、わたしゃ「フィリップスSHE9900をお買いなさい」と答えたい。ええ、フィリップスSHE9900ですとも。


そんな高額な予算はないというのであれば、SHE9700がいい。こちらはぐっと下がって平均3,000円程度で市場に出ている。こちらも突き抜けたコストパフォーマンスを誇るモデルである。最高レベルの品質が欲しいと思った時点でSHE9900にステップアップしても遅くはない。
SHE9900を手にすれば、「さすが高級モデル、全てにおいて最高!」と満足の元、末永く愛用してくれる人がほとんどであろうが、中には、怪しくも魅惑のヘッドホンの森へ迷い込むジャンキーも生まれることだろう。もっと低音が欲しいと思えば、SE535やTriple.fi 10といったトリプルドライバーのハイエンドモデルなのか、もっと伸びやかで煌びやかなハイが欲しいと思えば、シャキーンと高域が広がるファイナルオーディオデザインのheavenや、高域分離に秀でたエティモティック・リサーチのER-4Sなのか、あるいは、もっと肉感的でジューシーな世界を求め、モンスターなどのダイナミック型へ移行する人も出てくるかもしれない。

SHE9900は、シングル・バランスド・アーマチュアを搭載しているモデルだが、そのスペックからは想像を超える低音が出てくる。解像度の高さや澄んだ高域の再現性など、BAならではの特性はきっちり持ち合わせつつ、このローの幅の厚さは特筆すべきポイントだと思う。低~高域の出方のバランスや音の素直さ、ボリュームを上げてもうるさくならないデリケートな感じはWestone4によく似た傾向ではないだろうか。

いろんなヘッドホンを試聴しながらも、音が分からなくなったら、全てをリセットするように僕はSHE9900を耳にする。気付けばSHE9900は、自分にとってもなくてはならない理想的なリファレンス・モデルになっている。
text by BARKS編集長 烏丸

再生周波数帯域:20~20,000Hz
インピーダンス:16Ω(1kHz時)
感度:102dB SPL/mW(1kHz時)
最大入力:10mW
接続端子:3.5mmステレオ
コネクタ仕上げ:金メッキ
ケーブル長:1.2m
本体質量:12g
◆PHILIPS SHE9900オフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル
BARKS編集長 烏丸レビュー
◆JAYS q-JAYS
◆フォステクスHP-P1
◆Klipsch Image X10/X5
◆ファイナルオーディオデザインheaven
◆Ultimate Ears TripleFi 10
◆Westone4
◆ソニーMDR-EX1000
◆SHURE SE535
◆ゼンハイザーIE8
◆Etymotic Research ER-4S
◆KOTORI 101
◆ビクターHA-FXC51
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