【BARKS編集部レビュー】カスタムIEMブランドLEAR日本上陸、お薦めはズバリどれ?

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2011年冬に香港のカスタムIEMブランドLEAR(リア)を紹介したが、あれから1年、ついにLEARが日本に上陸、日本語によるオフィシャルオンラインショップ「カスタム IEM イヤホン LEAR Japan」が立ち上がった。

◆LEAR試聴機画像

当初より変わらずLCM-1、LCM-2、LCM-3という3シリーズが存在し、数字が搭載ドライバー数を示している。その上でそれぞれにF、C、Bという3種類のサウンドスタイルが用意され、全部で3×3=9通りのモデルがラインナップされているのも変わらない。F:フラット、C:クリスタルクリア、B:ベースを意味しており、サウンドの好みで選べばよいというものだ。

…とは言うものの、商品の説明だけで自分にとってどれがお気に入りか分かるはずもない。2011年11月当時、私は「一番人気のモデル」という無難な道を選択、人柱としてはあまりに腰の引けた理由でLCM-2Bを制作したのだが、結果は自分の好みにドンズバっとはまる、出来すぎたドラマのような嬉しい結果となった。

手にしたLCM-2Bは、激安のクセにUnique MelodyのMerlinやHeir Audio 8.Aと肩を並べるような強烈なローを叩き出し、抜けの良い高域も併せ持つという非常に高い完成度を見せつけた。テンションは瞬間沸騰し、次はどれを手にするべきか…と、わくわく妄想の日々を重ねていたので、日本上陸は願ってもない朗報だった。今回、「カスタム IEM イヤホン LEAR Japan」にコンタクト、いくつかの試聴機の音を確かめる機会を得た。

もちろんイヤーピースが付いた試聴機のため、あくまで参考値に過ぎないものだけれど、LEARの設計の巧みさとセンスの高さを実感するには十分な経験となった。いくつか思うことを順不同ながらお伝えしてみたい。



▲色とりどりのシェルで作られたLEAR試聴機。これらは全て試聴のために作られたもののため、イヤーチップが付いたユニバーサル設計となっているが、オーダーして出来上がるものは、もちろん自分の耳にぴったりと合ったシェルとなり、イヤーチップも不要となる。カラーリングはフェイスプレート、シェル、カナル部分の3か所でメニューから好きな色が指定できる。

▲最安価ながら私イチオシのLCM-1F。シェルの透明度が高いのもLEARの特徴。ケーブルにクセが付きやすくブタのシッポのようにくるくる輪を描いてしまうのがちょっと残念だが、他には特に欠点が見当たらない。

●LCM-2Bは銘機
私がLCM-2Bをオーダーした理由は「一番人気だから」だが、やはりこの事実こそ端的に真実を伝えているわけで、LCM-2Bの完成度は頭ひとつ抜けている。メリハリのあるサウンドで、タイトながらパワフルさも兼ね備えている。安価なイヤホンにありがちな抜けの悪さや解像度の低さ、曇りのとれないはっきりしない音…といった憂うべきマイナス点が一切見当たらない。強い低域が嫌いでさえなければ、多くの人から好まれるNo.1モデルがLCM-2Bだと思う。2ドライバーの良さが前面に出ている銘モデルだ。

●おすすめは1ドライバー
とはいえ、今回最も感銘を受けたのが、1ドライバーのLCM-1F(1ドライバーのフラットタイプ)だった。KnowlesのEDと思しきドライバーが1発搭載されているだけなのだが、サウンドバランスが非常に素晴らしく、とてもシングルドライバーの音とは思えない。解像度も粒立ちも申し分なく、このサウンドが最安価で用意されているなんて、クジ引きしたらいきなり大当たりの気分だ。どれを選べばいいか分からないというのであれば、迷わずLCM-1Fを選んでほしい。しかも最も安価なモデルなのだから。

一方でLCM-1B(1ドライバーのベース強化タイプ)も低域が強烈な個性派だ。先日earmo shake1で同じ構成のカスタムと出会ったばかりだったため、初見の衝撃はずいぶんと薄まってはいたものの、KnowlesのCIを1発乗せたそのサウンドはやはり斬新で、他の何にも似ていない濃~いサウンドを聞かせてくれる。バランスの良さはLCM-1Fの方が上手だが、ずっしりと沈み込む低域を楽しむのなら、こちらの指名買いになる。

なお、LCM-1C(1ドライバーの高域強化タイプ)は高域のざらっとした感触に特徴があるが、極端な高域特化ではなく、あくまでニュートラルなバランスを持つモデルになっている。単に高域のクリアさを求めるのであれば、カナルワークスCW-L01の方がクリスタルクリアで、きりっと冷えた切り口鋭いシャープな音がする。LCM-1Cは高域にわかりやすい特徴があるけれど、場合によっては余裕がなく歪みとともに音が濁る感覚があるので、注意が必要だ。特にこだわりがなければ、LCM-1Fを選んだ方が失敗しないと思う。

▲2011年11月にオーダーしたLEAR LCM-2B。

●Cと言えど、低域もしっかり
高域特化が特徴のCタイプだが、LCM-1CもLCM-2Cも極端な高域特化ではない。LCM-3Cに関してはチューニングが変更になったようで評価できない状況だが、旧試聴機を聞く限り、やはり十分な重さも持っており、高域偏重ではなく、常識的なバランス重視が念頭に敷かれているような気がする。

●Bはパンチ力あり
一方でタイトながら強烈なローを聞かせるLCM-2Bに対し、3ドライバーとなったLCM-3Bは、ドライバー数が増えたことでサウンド全体がみっちりと詰まったスキマのない濃厚なサウンドに変化している。さすがの低域から中域にかけての充実ぶりはLCM-2Bの比ではない。爽快さは影をひそめてしまうが、この妖艶でなめまわすようなボトムに色気に誘われると、ちょっと他では満足できなくなりそうだ。ちょっとクセになる妙な魅力を放っている。

今回、気になるLCM-2FやLCM-3Cなど試聴できなかったモデルもあるので、全モデルのラインアップを相対比較することはできなかったが、試聴機ではなくカスタムIEMとして聞き込みたいと思っているのは、何はともあれLCM-1Fだ。これはカスタムIEMのリファレンスとなりえる奇跡のバランスを持っているのではないか。

素晴らしいコストパフォーマンスを持って日本上陸を果たしたLEARだが、実はもうひとつ、全9ラインナップの設計ノウハウをギュッと凝縮させて完成させたフラッグシップのLCM-5というモデルも存在する。2012年末に満を持して発表されたもので、型番の通り5ドライバー搭載のモデルとなる。ここにはF、C、Bという枝番は存在しない。ここにきて1モデルしか存在しないのは、これぞブランドが自信を持って押し出す最高峰であることを暗に示唆しているのだろう。

LCM-2Bへの満足度と、各試聴機から得られた多くの情報からLEARの実力を体感した私に、もう迷いはない。近いうちにLCM-5のレビューも公開したいと思っている。

text by BARKS編集長 烏丸

●LEAR LCM-1F
●LEAR LCM-1B
●LEAR LCM-1C
32,800円(税込)
●LEAR LCM-2F
●LEAR LCM-2B
●LEAR LCM-2C
48,800円(税込)
●LEAR LCM-3F
●LEAR LCM-3B
●LEAR LCM-3C
56,800円(税込)
●LEAR LCM-5
94,800円(税込)
※付属品:キャリイングケース、ポリッシュクロス、クリーニングツール、取扱説明書(英語記載のみ)
◆カスタム IEM イヤホン LEAR Japan

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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