【インタビュー】WANDS、8thアルバム『TIME STEW』に熟成の味わいと時をかけるサウンド「本能のままに」

WANDSが本日3月26日、通算8枚目のオリジナルアルバム『TIME STEW』をリリースした。タイトルの『TIME STEW』(タイムステュー)は、“時間をかけてじっくり煮込み、新旧を溶け合わせた新たな味わい”を意味するもの。1991年のデビューから時を経て熟成されたWANDSサウンドを象徴する全6曲は、歴代最長活動期間となる5年を迎えたことに加え、ボーカリストとしても上原大史が活動最長となったWANDS第5期の今を気負いなく表現したものだ。
◆WANDS 画像 / 動画
TVアニメ『名探偵コナン』エンディングテーマにして最新シングル「Shooting star」、TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』主題歌「大胆」、ライブでのセルフカバー披露後、第5期ver.リリースが熱望されていた「天使になんてなれなかった」「FLOWER」ほか、「WE ALL NEED LOVE」「リフレイン」といった未発表新曲2曲を収録した『TIME STEW』は、新曲とセルフカバーが見事に溶け合った仕上がりだ。
また、WANDSはこのアルバムを掲げて2025年4月よりキャリア最大規模の全国ツアー<WANDS Live Tour 2025 〜TIME STEW〜>を開催することも決定している。バンドとしての状態の良さがそこかしこにうかがい知れる8thアルバム『TIME STEW』のサウンド&ヴィジョンについて、上原大史(Vo)と柴崎浩(G)にじっくり訊いたロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■前作には抗いの気持ちが少なからずあった
■今回はすごくフラットな感覚で作りました
──『TIME STEW』はWANDS第5期の新曲と過去曲のセルフカバーを織り交ぜたアルバムとして仕上がりました。
柴崎:前アルバム『Version 5.0』(2023年8月)は、我々の新境地を提示しようという思いが強かったんです。それをやり切ったことで、現在のWANDSの魅力を詰め込んだ作品を作るということは、もう意識せずともできるというか、板についてきたと感じて。
──第5期らしさみたいなものが既に出来上がっていると。
柴崎:はい。そういう感覚があって、昔の曲を今のWANDSで再構築して提示するのもアリだなと思うようになったんですね。そんなことを考えながら今回のアルバム制作に入って、過去曲の第5期ver.も含めた収録曲が折り重なっていった段階で、“STEW=煮込む”という言葉を思いついて。
──そしてアルバムタイトルが、“時間をかけてじっくり煮込み、新旧を溶け合わせた新たな味わいを表現したもの”という意味を込めた『TIME STEW』というタイトルになったわけですね。アルバム資料によると、“1991年のデビューから時を経て熟成されたWANDSサウンドを象徴している”とあります。
上原:本当に自然な流れでしたね。なにかを狙うというようなこともなく、今の自分たちが良いと思えるものを揃えていったのが、今回のアルバムです。前のアルバムの時は“これが今のWANDSだ”という抗いみたいな気持ちが少なからずあったと思う。だけど、今回はすごくフラットな感覚で作りました。
──過去曲の再構築Ver.も収録されていますが、WANDSという大きな看板に頼っている雰囲気はなく、最新WANDSの魅力を堪能できるアルバムに仕上がっています。では、『TIME STEW』の収録曲について話しましょう。1曲目の「大胆」はシングルリリース時(2024年2月)のBARKSインタビューで深くお訊きしましたので、2曲目の「天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]」から。
柴崎:第5期ver.にリアレンジするにあたって、“こうすればいい”というのが瞬間的に見えた曲だったし、第5期のライブのときにメドレー形式で演奏したことがあったんですけど、評判がよかったんです。
──瞬間的に見えたという再構築法とは?
柴崎:音符上のアレンジは、第2期ver.とそれほど変わっているところはないんですけど、全体の音像をもう少しはっきりさせたいというのがあったんです。音のバランスだったりの話ですね。第2期のオリジナル曲は歌とドラムのレベルがすごく大きくて、ギターとベースが後ろのほうに引っ込んでいる感じだった。各演奏のパフォーマンスがしっかりと聴こえないなと思っていたので、そこを改善したいという思いが強かったんです。
上原:すごくカッコいい曲ですよね。めちゃくちゃ好きな曲ですし、気持ちよく歌わせていただきました。“俺が歌うとこうなるよ”ということが自分なりに表現できたかなと思います。
──歌の仕上がりが上原さんの中で見えていて、そこに向かって迷うことなく歌われたような印象を受けました。
上原:いや、見えていたということはなくて。逆になにも見ていなかったというか、本当に本能のままに歌うという感じでした。僕が第5期ver.としてセルフカバーするときは、なにかをイメージするというより、なにも考えずにとりあえず歌ってみるんです。なんなら改めて原曲も聴くということもせず、つるっと歌ってみる。そこから、原曲からあまりにも外れ過ぎている部分を修正していくという感じですね。原曲を聴き込んでしまうと、無意識に寄せてしまうじゃないですか。
柴崎:それはね、今回感じた。たとえば、“メロディを確認するために一度Aメロをしっかり聴いて”みたいなことをすると、いいパフォーマンスを録り損ねることがあるんです。上原はそれを避けるために、まずざっくりとしたイメージで歌ってみて、そこから自分でいいところを拾う、みたいなやり方をしているのかなという印象がある。だから、ボーカルレコーディングのとき、ちょいちょいメロディを間違っていたりするんです(笑)。
上原:ははは。すみません。
柴崎:いやいや。ここはオリジナルと同じメロディにしたほうがいいと思うときは直してもらうけど、ガチガチに忠実に歌ってほしいということはないから。今のやり方でいいと思う。
上原:ありがとうございます。ということもあって、それこそ「天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]」のサビ終わりのロングトーンとかは、オリジナルとは全然違うんです。オリジナルを聴いてしまうと、たぶんそっちに寄ってしまうので、“俺ならこう歌う”という感じで。ただ、一時期ライブで自分の色を出し過ぎていたので、最近はちょうどいいところに落とし込むようにしているんです。前回のライブとか自分でも“大丈夫か?”と思うくらいオリジナリティーを発揮してしまったので、さすがにこれは怒られると思って(笑)。
柴崎:ははは。そういうところがあってもいいと思うけど。

──その辺りの絶妙なさじ加減も本作のセルフカバーの大きな魅力になっています。魅力といえば、「天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]」は、コンガのリズムもいい味を出していますね。
柴崎:コンガを入れるかは少し悩みました。僕が聴いてきたロックバンドにはパーカッションが入っているようなものが結構あったけど、最近そういう曲ってあまりないですよね。だから、どうなのかな?と思って。ミックスエンジニアにコンガを入れることを相談したら、「懐かしさが出ちゃうかもね」っていう意見だったので、最初は聴こえるか聴こえないかくらいにしていたんです。だけど、もう少し聴こえてもいいかなと思って、今のバランスにしたんですけど。
上原:僕は古いとは思わなかったですけどね。
──そうですよね。一周回ってみたいなことかもしれませんが、むしろ新しさを感じました。この曲はテイスティーなギターソロも聴きどころです。
柴崎:ギターソロはオリジナルに近いですね。オリジナルには途中に速弾きがあるんですけど、同じ速弾きでも今はちょっと違うやり方で弾きたかったので違うものにしたり、今の自分ならこういうニュアンスだなというフレーズを弾いたり。だから、台本は一緒だけどパフォーマンスが少し違うという感覚です。
上原:うまい表現ですね。
──フュージョンが香るギターソロというところがポイントです。
柴崎:そうなんですよ。“当時からフュージョンっぽいソロを弾いていたんだな”って自分でも思いました(笑)。モードスケールとかフュージョン的なスケールを活かしたわけではなくて。僕は若い頃から、メロディーを弾くときもハーモニーを出すみたいなことがわりと好きだったんですね。20代の頃に弾いたソロとかを今改めて聴くと、そういうことを思い出しますね。
──スケールに頼らないということは、このコードに対してこういう音を鳴らしたいというアプローチが、結果的にフュージョンっぽい響きだったということですね?
柴崎:そうですね。
上原:当時からこういうソロを弾いていたというのは凄い。抜きん出過ぎていますよね(笑)。
──同感です。では、3曲目の「Shooting star」ですが、2025年1月22日にリリースされたシングルであると同時に、TVアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマでもあります。なにかテーマ設定みたいなものはありましたか?
柴崎:今回は「大胆」(TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』テーマソング)のときとは違って、『名探偵コナン』サイドからのオーダーは特になかったんです。
──WANDSは『名探偵コナン』テーマ曲を何度も担当していますし、すでに信頼関係があるということでしょうね。
柴崎:お任せだったというか、こちらが用意した候補曲の中から『名探偵コナン』に合う曲を選んで採用していただいたという形でした。実は、「Shooting star」は遥か昔に書いた曲なんですよ。ストックしている曲を聴き返したときに、“今やったら、すごくいいかも”って引っ掛かった曲なんですね。上原が歌ったら合いそうだなという感触もあったし。原曲を作った時期は第5期始動以前だったんですけど、今回あえて形にすることにしました。
──WANDSらしいスタイリッシュさやロマンチックさもありつつ、イントロにインテリジェンスな雰囲気も漂うという独自の魅力を持ったナンバーです。
柴崎:イントロはもう少し短くしようかなという考えもあったんですけどね。ライブを想像したとき、ある程度の長さがあったほうがいいなと思って、結局もともとのデモのサイズに落ち着きました。なので、最近の巷の曲に比べると、イントロはちょっと長い(笑)。
──ちょうどいいと言いますか、これくらいほしいなという印象です。
柴崎:僕もそう思ってます(笑)。
上原:僕もちょうどいいと思いますよ。
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