【BARKS編集部レビュー】2011年のダークホース、高い実力を備えて現れたハイブリッドREALM IEM856

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10月29日に開催された<秋のヘッドホン祭2011>でたくさん気になるモデルと遭遇したことは、SOUL by Ludacris SL99のレビュー記事(2011-11-04)でも触れたところだが、なかでも是非紹介したかったモデルのひとつに、このREALM(レルム)IEM856がある。何故かって、日本初上陸のブランドでありながら、いきなり今最も熱いと思しきハイブリッド構造をもっての登場だからだ。スペック至上で紹介するつもりはないけれど、この時期にハイブリッドと聞いて素通りできるはずないっしょ。

◆REALM IEM856画像

▲ブラックカラーのIEM856md。

▲ホワイトカラーのIEM856m。色によって末尾の型番が変わる。

REALMは、モバイル周辺機器を取り扱う米国Scosche(スコッシュ)社が打ち出すヘッドホン&イヤホン・ブランドで、今回発表されたのはオーバーヘッドとカナル型が各1機種ずつ。それぞれ黒と白のカラーバリエーションが用意され、iPhone対応のリモート&マイクがフラットケーブルに搭載されているのが共通スペックとなっている。今回紹介するのはIEM856と名付けられたカナル型のモデルだ。

IEM856は、低域を受け持つダイナミックドライバー1基+中高域を担うバランスドアーマチュア1基という構造を持っている。スペックだけをみればAtomic FloydのSuperDarts+Remoteと全く同じ構成だが、SuperDartsが思いっきり舵を切ったぶっ飛びチューニングで楽しませてくれたのに対し、IEM856は、サウンドのまとめ方はAKG K3003系と表現したくなる極めて正当派といえるもの。非常にバランスのとれた中庸なトーンを持っており「我こそはハイブリッドなり!」的な自己主張は全く感じさせない。

実に謙虚で控えめな物腰で設計されたようで、一聴して驚かされるレンジの広さとか、一気に引き込むビビッドな派手さとか、第一印象でつかんでしまえ的な食いつきの良い演出チューニングは一切用意されていない。2011年秋はイヤホンも新世代へ突入しこれまでとは一線を画した素晴らしいサウンドを持つ新製品が目白押しなだけに、この「分かる人に分かっていただければそれでいいと思っています」的な佇まいは、自らマイノリティな立ち位置に身を置きそうで、何だかヤキモキする妙な親心が芽生えてしまう。

このIEM856、とにかくサウンドが素晴らしい。ヘッドホンアンプをいろいろ使い、いろんな音源を様々なシチュエーションで聞いてみたことで分かったのは、基本特性が素直で、どんな状況でも一定の高品質サウンドを確実に提供してくれる、安心&信頼できるモデルであるということ。…っていうか、全く隙がなく、どこからどんな風に耳にしても、絶対いい音を聞かせてくれるという健気な優等生なのだ。

イヤホンの評価でよくある項目を引っ張り出して点数をつけるとすれば、低域85点、中域85点。高域85点、解像度85点、遮音性85点、フィット感85点、音漏れ防止85点、堅強性85点、タッチノイズ制御85点…と、あらゆる点で平均的に高得点をつけることになる。音場に関しては個人の経験値や感性に左右されるもののため、広い/狭いという一元的な評価はナンセンスだが、空間を描き出すアンビエントの微細な描写能力も点をつければ85点。ハードルを上げてもいかんと思いこれでも控えめな点数にしたのだけど、それにしても平均85点ってのはどえらく優秀なアイテムだと思う。悪意を持てば無個性のつまんないヤツと言われるところだが、個性派イヤホンに馴らされた耳からIEM856へ戻ると「なんて良いバランスなんだ」と、その場でニュートラルな感覚を瞬時に取り戻してくれる。

▲きしめんケーブルにセットされたapple製品対応のコントローラー&マイク。使用感は非常に良い。

▲付属するトラベルケース。イヤピースには通常のシングルとダブルフランジ・タイプもSMLの3種類が付属する。

▲ポイントは、ダイナミックとBAのハイブリッド構造。ハウジングには空気穴が設けられているが、通常使用の範疇では音漏れは全く気にならない。

自らのトーンは主張しないくせに、心地よいサウンドのバランスには、全くぶれない強い説得力がある。要は、屁理屈なんか通用しない圧倒的な音の良さが、ただただそこにあるだけだ。

蛇足ながら同傾向のサウンドといえるのは、SONY MDR-EX1000、オーディオテクニカATH-CK100PRO、AKG K3003あたり…といえば、なんとなくご理解いただけるだろうか。これらが各ブランドのフラッグシップであり大変高価なことを考えると、¥24800(税込)というIEM856がいかにコストパフォーマンスに優れているかもお分かりいただけるかと思う。良心的な価格だが、確実にいい音を手にしたい1点主義の人にも自信を持ってお勧めできる新製品だ。

コントローラーはいらん!という人もいることだろうが、そこは目をつぶっていただいて、ケーブル途中にマイクが付いている方がR側という目印としてご利用いただくのが吉。これ意外と分かりやすくて便利だし。ケーブルは非常にしっかりとしていて安心感もあり、断線の心配もなさそう。その割には柔らかで取り回しも良い素晴らしいケーブルだ。ひとつ気になると言えば、耳奥へぐっと押し込んだり動かすと、密閉状態の空気圧で振動板が動く音なのか、ペキペコ・クチャクチャという音がするところ。イヤホンによってはこの音がするモデルも少なくないので、別段気にする必要もないだろうが、ダイヤフラムへ負荷がかかっているのかな?と思うと、ちょっと心配。

REALMは近々にオーバーヘッドのRH1056が発売となり、その後このIEM856がリリースになるという。現時点では発売日が正式発表されていないが、時間の問題のはずだ。なお、オフィシャルサイトの情報によると無料のtuneQというiPhone、iPad用アプリがApp Storeに公開される予定となっている。iPhoneでREALMのヘッドホン&イヤホンを使う場合、リモコンの動作をカスタマイズできるようになるのだろうか。モバイル周辺機器ブランドだけに、オーディオブランドとは一線を画した魅力も携えているのかもしれない。

市場に出回ったら、是非一度チェックを。お気に召せば生涯の伴侶となる高品質サウンドであることは間違いなし。SE535、W4、ATH-CK100PRO、EX1000、K3003、TF10あたりをフェイバリットとしている方であれば、これは持っていてもいいモデルだと思う。

新規参入第一弾モデルでいきなりこのクオリティを打ち出してきたREALM、今後の展開にもアンテナを張っておこう。

text by BARKS編集長 烏丸

●Scosche REALM IEM856md(黒)¥24800(税込)
●Scosche REALM IEM856m(白)¥24800(税込)
・tapLINE IIIリモート&マイク付
・デュアルドライバ・インイヤー・モニター
・もつれ、絡みにくい扁平型コード
・S/M/Lの3サイズのシリコン製シングルまたは二重輪縁イヤピース付属
・革製トラベルケース付き

◆オフィシャルサイト
◆オフィシャルサイト(海外)

BARKS編集長 烏丸レビュー
◆ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◆Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
◆Reloop RHP-20(2011-11-22)
◆オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
◆SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
◆Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
◆SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
◆JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
◆BauXar EarPhone M(2011-10-10)
◆SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
◆AKG K3003(2011-09-18)
◆Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
◆Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
◆Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◆ORB JADE to go(2011-08-22)
◆YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
◆NW-STUDIO(2011-08-09)
◆NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
◆Westone ES5(2011-07-21)
◆SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
◆クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
◆GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◆SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
◆フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
◆ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
◆フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
◆アトミック フロイド(2011-05-26)
◆モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
◆SHURE SE215(2011-05-13)
◆ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
◆ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
◆ローランドRH-PM5(2011-04-23)
◆フィリップスSHE9900(2011-04-15)
◆JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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