【インタビュー】BabyKingdom、“安倍晴明”がテーマの新アトラクション「人生のプラスになってくれたら」

“MUSIC THEME PARK=音楽のテーマパーク”をコンセプトに掲げるBabyKingdomが、3月12日にニューシングル「SEIMEI」をリリースした。
世界各国のカルチャーを楽曲、そしてビジュアルや映像で表現してきたBabyKingdom(以下、べびきん)。メキシコの伝統文化“死者の日”をコンセプトに取り入れた前作「CALAVERAS/サルサルーサ」が、SNSを通して現地で話題になったのも記憶に新しいが、今回はなんと、ガラリと趣向を変えて“安倍晴明”をテーマにしたという。
魑魅魍魎が跋扈する平安の世。式神を操り、あやかしたちと戦う安倍晴明──。これをべびきんが和メタルで描くのだから、非常に面白い。べびきんが紡ぐ世界観を、多くの人にぜひ味わってみてほしいと思う。
◆ ◆ ◆
◼︎バンドとしての説得力が出てきた
──メキシコの伝統文化“死者の日”をテーマにした前アトラクション「CALAVERAS / サルサルーサ」が、現地メキシコで話題になりましたね。あれ以降、べびきんを取り巻く環境は変わりましたか?
咲吾(Vo):実際に、メキシコの方がライブに足を運んでくれたりしています。本場の「サルー!」ってやってくれたりとか。少なからずメキシコでバズった意味はあったなと感じています。
もにょ(B):客席に海外の方がいるなって思ったら、「CALAVERAS」のイントロで突然テンションが上がってたりね。絶対に「CALAVERAS」を知ってライブに来てくれたんやなって。
──まさかメキシコでバズるとは想像していなかったですし、やっぱりべびきんって目が離せないなと思いました。
もにょ:本当そうですよ。突然朝起きたらフォロワー数めっちゃめちゃ増えてましたからね(笑)。
──前ツアーが終わってからも<新アトラクション増設工事中ツアー>があったり、対バンイベントがあったり、<べびきんと行こう日本の良い所ツアー『COUNTRY ROAD 2025』>があったりと、本当に飽きさせないなと思っていたんですが、最近印象的だったことは?
咲吾:この間、全曲制覇ワンマンをやったんですけど、一年に一回全曲を披露するバンドってあんまりいないですよね。曲数が増えてくると、どうしてもリリースはしたもののやる機会が少ない曲ができてしまうんですけど、そういう曲をやれるのが非常に面白くて。ライブの中で、楽曲が思わぬ成長を遂げる瞬間があるんですよ。“この曲ってこんな深みがあったんや”って気付けたりするのは、ライブ感のあるバンドになれたからなのかもしれないなと。音源だけではわからない、ライブでしか見れない楽曲の良さを出せるようになってきたのは、9年目だからこそのバンドとしての説得力が出てきたからなのかなと感じています。
虎丸(Dr):ちょっと前までワンマンが多かったんですけど、最近対バンが増えてきて。対バンっていうとバチバチにやり合うっていうイメージがありますけど、僕自身は「みんな仲良くやったらええんちゃいますかね〜」って思ってたんです。で、そんなこと言いつつですけど、最近の対バンでは「やったったな!」「持ってったな!」って思うことが増えてきて。
──手応えを感じることが増えてきた?
虎丸:そうです。対バンで成功した感じと、ワンマンで成功した感じって、全然違うものやってことを忘れてたなと。噛みつき方を思い出してきました。
──もにょさんもそういう感覚あります?
もにょ:べびきんは1年目から対バンで強くなっていったバンドだって思ってます。コロナ禍で大きな対バンツアーがなくなってしまったこともあって最近はワンマンが多くなっていたんですけど、対バンでも成功できるバンドに戻って来れたなって自覚しますね。それはやっぱり去年の<winter oneman tour 『PARADISE of the DEAD』>がすごく良かったからだと思うんです。あれでバンドがすごく成長したから、最近の対バンでは「ごめんやけど一番やったな!」っていう自信があります。平日は対バンして、休日にワンマンしているのが調子いい。そういう意味で、べびきんのバンド活動スタイルが見えてきたというか、こんな感じで走っていこうかなと思っています。
志記(G):対バンが増えるってことは、セットリストを考えるのに必死ってことなんですけどね(笑)。でも、対バンしたことのある相手だったら「この曲をやったらこういう感じやったな」という光景をふんわり覚えてるんですよ。そこからセットリストを考えていくんですけど、僕らが掲げている“MUSIC THEME PARK=音楽のテーマパーク”って、1つのテーマを掲げたらそこから色々料理できるっていう面白さもあるので、改めてこのバンドコンセプトが武器になっているなと実感しています。
──べびきんさん、今いい状態って感じですね。
志記:そうですね、楽しい限りです!
──そして今回の新アトラクション「SEIMEI」も、そんなべびきんの新しい武器となりそうなキラーチューンに仕上がっています。本当にかっこよくて。今回ジャパネスク的なテーマになったのは、やはり海外を意識してのことなのでしょうか。
咲吾:そうですね。僕たちに注目してもらえている今、日本の文化にも目を向けてほしいという意識がありました。
──その中でも、安倍晴明をテーマにした理由は?
咲吾:僕たちが日本のものをテーマにしたアトラクションを作るのは大きく分けて3回目で、最初は「忍☆すぱいちゅ」という忍者をコンセプトにしたもの、その次に戦国武将をモチーフにした「我武者ライジング」というものを発表したんです。「忍☆すぱいちゅ」はポップで可愛らしい和、「我武者ライジング」はハードロックで和の熱さをテーマにしていて。その流れの中で、僕らも9年目やから、和の凜とした部分を表現できる作品を作りたいなと思って。なので、今までとは全く雰囲気を変えたものを作ろうという意識はありましたね。

──なるほど。今だからこそできる、この“和”だったんですね。時期としてはいつ頃作っていたんですか?
咲吾:前ツアーを回ってるときですね。次のコンセプトを何にするかをみんなで相談してから志記がベースとなる曲を作って、その中からA面っぽい曲を選んでメロディーと歌詞を乗っけて志記に戻してアレンジしていく……っていういつもの流れで制作しました。
──表題曲「SEIMEI」は、ど直球な“和メタル”。志記さんは最初に、どんな曲にしたいと思っていたんですか?
志記:さっき咲吾も言ったように、「忍☆すぱいちゅ」と「我武者ライジング」がポップとハードロックだったので、今回はメタルでやりたい、という気持ちがあって。僕自身が“陰陽師のアニメで見たくなるオープニング”というイメージで作っていきました。だから最初に呪術が始まるようなブラストビートのイントロが流れていく、みたいな。
──アニメのオープニングというイメージ、わかります。“和”をテーマにしようと思ったとき、3曲目の「花鳥風月」のようなしっとりとしたサウンドがまず思い浮かぶこともあると思うんですが。
志記:それは、元々僕らがB.P.Recordsに所属していたっていうのが大きいかもしれないです(笑)。己龍先輩がいたので、“和=メタル”というイメージができていたんです。
──あぁなるほど(笑)。
志記:逆に言うと、事務所に所属していたときはそれはしないように、何か新しい手を、ってずっと考えてたんで。「今こそや!」みたいなところもありました。サウンドも、己龍さんっぽさは散りばめてますね。僕、色々小細工を入れるのが大好きなので、知ってる人が聴いたらちょっとクスっとするような部分を入れたりして。
──うーん。初見で感じた己龍っぽさは、間違っていなかったんですね(笑)。
志記:わざわざギターソロを二段階にしたのもそれです(笑)。

──ですが、ちゃんとべびきんのサウンドになっているのはやはり皆さんの実力。ただのメタルではなくて、やっぱり咲吾さんが歌うとみんなが聴きやすいポップスの要素が生まれるんですよね。
咲吾:ありがとうございます。Bメロにフックとなる真言を唱えるところがあるんですけど、そこが“べびきんらしさ”になってるかなと思います。Aメロは結構自分の中でチャレンジというか、あまりやってこなかった、メタルのリズムの上にバラードのメロを乗せるという手法を入れてます。譜割りは音符を大きくとってメロは落ち着いているけど疾走感を持たせて、サビでメロディアスに変わるという、今までだったらやらなかったメロディーの流れにしています。
──で、やっぱ気になるのがこのBメロの真言。
咲吾:真言って、本当の真言を安易な気持ちで唱えると良くないんです。ドラマや映画でも真言を唱えるシーンでは、本物の真言は使わず、あえて崩したものを使うらしいんです。なので僕も本物の真言は使えないなと思って、オリジナルにして。
──“伐折羅”、“蘇婆訶”なんかは聞く言葉なので“御伐折羅金便蘇婆訶”という言葉があるのかと思っていました。でも、“金便”ってのがどうにもしっくりこなくて……。
咲吾:突っ込まれたら答えようと思ってたんですけど、“金便”は、もうそのまま“金のうんち”のことです。
──え! やっぱりというか、なんですか! MVではあんなにかっこよく唱えておきながら!
咲吾:多分これ、みんな“やっぱそうなのかな”と思いつつ、曲が真面目だからそうは思えないっていうトリックなんですよね。“私が無知なのかな、もしかしたら便利な金の名みたいなものがあるのかな”って戸惑いますよね。でもやっぱ引っかかる。でも“いやいやこんだけかっこいい曲でそんなまさか”って思っちゃいませんか(笑)?
──まさに。してやられました(笑)。
咲吾:しっかりそこでべびきんなんですよ。
もにょ:“金のうんち”って唱えてるだけっていうね(笑)。
──ほんとにべびきんはエンタメですね。ですが、そこ以外はきちんと深く安倍晴明のことを描いている歌詞ですよね。
咲吾:そうです、安倍晴明のドラマを描きました。
──リファレンスにした安倍晴明像ってあるんですか?
咲吾:安倍晴明にはいろんな伝承があると思うんですけど、史実に基づいたものを描いてもフィクション感がなくて面白くない。やっぱり多くの人が安倍晴明って聞いたときにイメージするのは、彼の伝説的な部分だったり、ちょっと厨二病っぽいモチーフだったりとかだと思うので、そういう部分をストーリーにしていきました。
──安倍晴明は狐の子だという伝説なんかもありますし、歌詞にはそのモチーフも出てきます。
咲吾:1番は、一条戻橋の鬼女の物語。男に裏切られて鬼になってしまった女の人を払うっていう有名なお話ですね。2番は、安倍晴明の生い立ち。狐から生まれたということで、いろんな人に嫌な目で見られていたとか。そういうことを描いていたりします。
──つまり、思いをのせた曲というよりは、物語音楽のような。
咲吾:そうですね。こういう曲調だと“こういうときは笑おうよ”とか“前を向いて歩こうぜ”っていうような、道を示すような曲にはしづらくて。歌詞の音やキー、譜割りとか、全部で情景を見せる曲ですね。
──最後の《娑婆こそ陰陽道》というのは意味ありげな感じがしますが。
咲吾:ちょっと厨二病的な感じかもですけど、今この現代にこそ陰陽道が必要だ、とも思ったりして。あと、わかりやすさという意味でも、楽曲の最後に《陰陽道》って入れたかったんですよね。
──ふむふむ。
咲吾:ボーカルとして特に思うことなんですけど、楽曲ってわかりやすくあってほしいんです。いきなりタイトルだけ言って曲が始まっても、僕は正直あんまり響かないタイプで。この曲もMVを見てくれた人なら一回でイメージがわかると思うんですけど、曲だけ聴いていたらわからないかもしれない。だからこそ、最後にしっかり《陰陽道》って歌うことにしたんです。
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