【BARKS編集部レビュー】見た目だけじゃなかった、DIESEL VEKTRのイケメンぶり
◆DIESEL VEKTR画像
ただご覧のように、カッコよすぎると当然ながら使い手を選ぶわけで、正直言って私はDIESEL VEKTRには食指はほとんど動かなかった。いや、ぶっちゃけ興味はめちゃくちゃあり一目惚れに近いインパクトを感じたのだけど、自分が似合うわけがないと、最初からあきらめモード固定で見て見ぬふりをしていたというのが事実に近い。ま、ようするに、このかっこよさに腰が引けているというか、たじろいでいたわけだ。「似合うとでも思ってんの?ヘッドホンが浮いてるよ」と揶揄されることに恐れをなし、悲しき自意識が素直な自分の気持ちを捻じ曲げてしまっている状況、というところか。
イケメンに対するブサメンの悲しい性はどうにも嘆かわしく、自分では似合わない…使いこなせないと思うと性格まで卑屈になるもので、「どうせなら音が良くなきゃいいのに(…だから、私は使わないのよ)」と、逆恨みに近い感情も芽生えたりする。もちろん、実際はやはり手にしないとわからないことだらけで、このイケメン・ヘッドホンの魅力はビジュアルや安定のモンスター・サウンドだけで語られるものではなく、VEKTRならではの傑出した魅力がしかと存在し、そここそが愛用者の本当の満足度を上げるものなのだと気付かされる。そう、高級ヘッドホンとしての魅力はビジュアルではなく、やはり本質に根差しているのである。
やっぱり欲しいという素直な気持ちに従ってVEKTRを入手、そこで最も感銘を受けたのは、その類まれなる装着感と抜群の遮音性だった。ちょっと動いたくらいでは外れようとせず、タコの吸盤かトイレのスッポンか、まさに耳介にぴったりと吸い付いて離れようとしないのだ。
適度な側圧と、猫の肉球並みのイヤーパッドの柔らかさも絶妙なのだが、この吸い付きを生み出しているのは、間違いなくイヤーパッドのこの形状にある。縦長5角形のイヤーパッドは、びっくりすることに私の耳に合わせてくれたかのようだ。耳介の外周にぴったりと連れ添う形状だからこそ、空気の漏れる箇所が一切発生せず、柔らかいイヤーパットで強力な密閉性が出来上がる。側圧で耳に抑えられると吸盤のように、耳介とイヤーパッドが吸着状態になり、付けたり外したりするときは高層エレベーターのような気圧の変化を感じるほどで、物理的に本当に吸い付いてくる装着感は初めての体験だ。
裏返してみるとこのイヤーパッドの形状は、そのままハウジングの形状に沿って作られていることがわかる。まるで中学の地学で習った玄武岩のようなハウジングのデザインは、ソリッドかつシャープで力強い個性を放っているけれど、「デザイン優先でハウジング形状を決め、それに沿ってイヤーパッドを付けたらたまたま耳の形になった」…とは到底考えにくい。これは、耳への完璧なフィット感を得るために、何よりも先に耳介の形状をそのままトレースしたようなイヤーパッドをデザインし、そのイヤーパッドが自然に納まるようなハウジングがデザインされた、と考えた方が無理がない。
デザイン最優先のような面構えをしながら、その実、本質の徹底追及をクリアしてから設計に入るというその姿勢には、DIESEL製品としてのブレが全くない。品質重視の彼らにとっては当然のことかもしれないが、基礎設計の高さを水面下に潜らせたまま誇示しようともしないその姿勢は、あまりにカッコよすぎる。本当にイケメンすぎてむかつくほどだ。
結果、今まで出会ったオンイヤータイプにおいて、私にとって最も装着感が素晴らしいのはVEKTRだったし、もちろん同時に素晴らしい遮音性と音漏れの少なさを実現させている。100%誰でもOKというわけにもいかないのかもしれないが、是非ともその装着感をご確認頂きたいところだ。
デザイン上も使用感もかなりエッジの立った先進的な匂いを放つVEKTRだが、裏腹にサウンド自体は比較的オーソドックスで、基本に忠実な音像を聞かせる。長い間鳴らし続けることで高域の抜けも良くなり、第一印象で受けたもたついた感じは消え、現在は重心低めの落ち着いた音を聞かせてくれている。
質感の高い高級ポータブル・ヘッドホンと言う意味ではパイオニアSE-MJ591が好敵手だが、こちらが非常に耳の近いところでカナル型イヤホンのような高濃度な鳴らし方をするのに対し、VEKTRは密閉ながらも不思議な広がりを演出してくれる点が特徴的だ。中域も厚く出ているかまぼこ形バランスだと思うのだが、ローが必要量しっかり出ていることと、ハイの伸びもしっかりと耳に届くので、人によっては軽いドンシャリ・バランスに聞こえるかもしれない。解像度は決して高いわけではないが、騒がしい電車内でも音漏れを気にすることなく迫力の音量でモンスター・サウンドを存分に堪能できるのは、なんとも気持ちの良いものだ。
ケーブルも断面が正三角形状で、無駄に手がかかっている…と思ったが、実はこのケーブルの使用感も絶品だった。それなりの太さがありさらっとしているので全く絡まることがなく、ものに引っかかることもない。さらっとした軽い使用感は、癖がつかない素材であると同時に、さっと簡単に向きを変えてくれる心地よさがあって、この素直さこそが三角形という形状からくるもののようだ。四角やきしめん形状のケーブルは、ちょっとしたねじれや力加減でプリンとケーブルが踊ったりするのだが、このVEKTRの三角形ケーブルは、使い手の邪魔を全くしない。三角ケーブルはまさかの機能美にあふれており、こいつはなかなか凄いと感心させられるものだった。
サウンド、使い心地、そして何より所有感…、本質的なカッコよさは表面的なデザインだけでは作り得ないものであり、DIESEL VEKTRの魅力は自分の想像よりはるかに深遠なものだった。デザインではなくその裏に隠れた設計思想にこそインパクトが隠されていることがわかったら、単なる高評価からリスペクトに思いは変わる。VEKTRには、これまでのヘッドホンに蔓延する旧態依然とした既成概念をいちばん深い底からぶん投げるようにひっくり返す、ロックなスピリットが注入されていたようだ。
text by BARKS編集長 烏丸
●DIESEL VEKTR \29,800
2012年7月25日発売
・ダイナミック密閉型
・コード長:約1.3m
・重量:約215g
・保証期間:1年
・付属品:CTUケーブル、キャリングケース
販売店舗:
DIESEL GINZA
DIESEL SHIBUYA
DIESEL 札幌
DIESEL六本木ヒルズ
DIESEL HARAJUKU
DIESEL 神戸
DIESEL OSAKA
DIESEL 福岡
◆DIESEL VEKTRオフィシャルサイト
◆ヘッドホンチャンネル
BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)
●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)
●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)
■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)
◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)
◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)
■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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