【BARKS編集部レビュー】オーリソニックスASG-2 with BassPortに溺れるベードラのガトリング

ポスト

遠慮なくドカドカと全力で踏み抜くベードラの肉々しいアタック感、チキチキタチタチまっすぐに飛んでくるハットやライドの屈託のなさ…。いや、久しぶりに出会いました、理屈抜きの血沸き肉躍るサウンドに。音楽が持つエネルギッシュさを、そのままこぼすことなくギュッと握り込んで投げつけるようなえげつない鳴りっぷりは、一度受け取ってしまうとなかなかその魅力から抜け出せない。“どえらいサウンドに憑りつかれる”といった感じだ。

◆オーリソニックスASG-2 with BassPort画像

▲オーリソニックスASG-2 with BassPort。わざわざ耳型を取ってカスタムとして制作しなくても、誰でもフィットするようにイヤーピースを使用したユニバーサルモデルだ。

▲フェイスプレート部分にはマイナスドライバーで回ることのできるTunable Bass Port(ベース調整ポート)が搭載されており、簡単に中低域の量感をコントロールすることができる。最少まで絞り込んだ状態でも十分すぎる低域がお目見えする。

▲左から、カスタムのAS-1b、15mmドライバー一発搭載のASG-1S、15mmダイナミックドライバーにBAドライバーを2発搭載したハイブリッドのASG-2 with BassPort。

▲ASG-2 with BassPortの付属品一式。ハードケース、保証書、ワランティーカード、クリーニングツール、ミニドライバーが付属する。

似たようなイヤホンは他には見当たらないけれど、この気兼ねなく鼓膜を刺激してくるおらおら感は、アトミック・フロイドのスーパーダーツとか、ファイナルオーディオデザインのAdagio III、SOUL by Ludacris SL99といった暴れん坊連中を思い起こさせる。

実はオーリソニックスに関しては、ブランドが立ち上がったごく初期の時点でカスタムIEMのフラッグシップであるAS-1bをオーダーし、2012年2月27日にレビュー記事を執筆・公開している。中域特性が前面に張り出したかなりの個性派だったため、使用シーンが限定してしまい日々愛用するに至らなかった。そんな先入観も手伝って、最新モデルASG-2 with BassPortが、一転してドピーカンに突き抜けた個性派に変身していたのは、想定外の喜びだ。

カスタムIEMを作っているブランドは世界中に数多く存在するけれど、そもそも高額商品ゆえに過剰な期待と過度な要求を受ける宿命を背負い、結果どうしても堅実に無難に最大公約数を満たすような設計に落ち着いてしまうという鬼門が立ちはだかる。

でもオーリソニックスは、そんな凡人トラップなんてかすりもしない独自路線を快走、今もなおその独創性には一寸のブレもない。暴れん坊でチャレンジングな設計思想だからこそ、多くの人に知って欲しいし、もっと評価されるべきだし、もっともっと表に出てくるべきだと思う。どう考えても万人向けではないし品行方正なトーンではないけれど、だからこその存在価値と唯一無二の魅力なのだから。

ASG-2 with BassPortには、その名の通りベースの量感をコントロールするTunable Bass Port(ベース調整ポート)が搭載されているが、最初からそのつまみは最端まで振り切れた状態だった。一聴してずいぶんとインパクトのある低域がドカンと出るけれど、これを絞ったらどれくらいまでおとなしくなるのだろうかと思い、付属のミニドライバーでつまみを反対まで絞り込んでみたら、ドバーとどえらく強烈な中低域が流れ込んできた。驚くことにデフォルト状態はベース最小セッティングだったのである。北三陸であれば、じぇ×5くらいの驚きだ。

ベースポートを全開にすると外の熱気が耳の中に吹き込んでくるかのようなボフボフのサウンドになる。せっかく搭載した高域用のBAドライバー×2の存在をかき消すような暴力的なセッティングとなり、完全にバランスが破たんする。これあかんやろ!と突っ込みたくなるが、実用範囲を余裕でカバーし、なお余りある極端な振れ幅まで搭載しておいて、「うへへへ」とほくそ笑んでいるのかもしれない。こいつら変態や。大人が痺れる悪戯っ子変態様や。

ASG-2 with BassPortは、15mmダイナミックドライバー1発に2機のBAドライバーを追加搭載したハイブリッド設計のイヤホンだが、綺麗にまとめるつもりなどなく、ハイブリッドならではの帯域の広さと出るとこは遠慮なく出てもらいましょうという、攻めの美学が貫かれている印象を受ける。「ハイブリッドで興奮した!」というピュアな初期衝動が失われることなくサウンドに表れている、と言った方が正しいかもしれない。憑りつかれるのはそういうスピリチュアルな部分への共鳴であろうか。とにかく、無邪気なサウンドなのだ。

オーリソニックスには15mmダイナミックドライバー1発のみのASG-1Sというベーシックモデルもある。基本スペックは初期モデルAS-1bと変わらぬものだけど、サウンドは私のAS-1bとはずいぶんと異なっているようだ。ASG-2 with BassPortのような暴れん坊でもなく、こちらはずいぶんと聴きやすいバランスとなっている。相変わらず最も強いのは中域で、その分スコーンと抜けるような透明感は持ち合わせいていないけれど、温かく柔らかさも内包したような生々しい音なので、小さな音でも肉感的に響き、耳には優しいトーンに感じる。

大人しくも肉感的なASG-1S、低域と高域をガトリングのようにぶっ放すASG-2 with BassPort、そのどちらも個性の塊なので是非試聴いただきたい。無難なイヤホンを求めているのであれば出る幕はないけれど、お行儀のいいイヤホンはもう十分、というのであれば、是非一度オーリソニックスのご賞味を。この世はでっかい宝島と思うのであれば、こいつはアドベンチャーです。

text by BARKS編集長 烏丸

●Aurisonics(オーリソニックス)ASG-1S
64,800円(税込)
・再生周波数帯:8Hzk~25Khz
・インピーダンス:32Ω
・出力インピーダンス:5Ω
・感度:121dB/mW
・型式:15mmダイナミックドライバー
・付属品:シリコンイヤーパッド S/M/L、クリアケース

●Aurisonics(オーリソニックス)ステルスASG-2 with BassPort
94,800円(税込)
・再生周波数帯:8Hzk~25Khz
・インピーダンス:34Ω
・感度:123dB/mW
・型式:15mmダイナミックドライバー+バランスドアーマチュアドライバー×2
・付属品:シリコンイヤーパッド S/M/L、クリアケース

◆オーリソニックスASG-1Sオフィシャルサイト
◆オーリソニックスASG-2 with BassPortオフィシャルサイト
◆オーリソニックス・オフィシャル販売サイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
この記事をポスト

この記事の関連情報