【BARKS編集部レビュー】超弩級AKG K3003が描き出す、次期エポックメイクモデルへのシナリオ


◆AKG K3003画像
K3003のサウンドってどんなもんよ、と耳にしたものの、飛び込んできたサウンド…その第一印象があまりに素晴らしく良かったために、セレブに屈したかの敗北感に苛まれるという、なんだかちょっと不思議な心持ち。とはいえ、そこは雑草のようなハングリー精神で「いやいや下手に第一印象がいいと、長く使っているうちにつまんなくなるもんですよ」なんて邪な思いを懐に忍ばせながら使い続けた。かれこれ10日に至り、飽きるどころかますますの鳴りっぷりを見せ、感銘を受けたまま私はもうK3003の恋の奴隷。ラヴ・バイツ!「美人は3日で飽きる」というのはウソなのね。



どの帯域の音もスピード感のある音で、超低域から超高域まで無駄なく素早く耳に届く。付帯音がなく、爽やかで非常に清潔感のあるサウンドだ。以前のレビュー記事(2011年9月2日)で、小さな音でもダイアミックに響かせてくれる稀有な名機としてWestone3を紹介したが、今回出会ったこのK3003も、小さな音でバランス良く過不足なく鳴らしてくれる数少ない名機のひとつでもあった。
分解能も高く、高域や低域も絶妙なバランスで鳴らし、タイトにすっきりと中域も押し出してくれる。そして通常のイヤホンとは別次元の高域のヌケの美しさは、バランスド・アーマチュアにありがちな頭打ちの閉塞感を全く感じさせないという奇跡的な音空間を作り出してしまう。音場に関しては、機種が持つ潜在能力以上に使用者の経験値や感性に左右されるため、広い/狭いという一元的な評価自体は全くナンセンスだが、アンビエントの初期反射やリバーブ成分の微細な高帯域をデリケートに描き出す、素晴らしい能力を兼ね備えているので、人によってはヘッドホン並みの音場を感じるという、化け物のようなアイテムになる。

K3003には、ノズルの先端に取り付けられたアコースティック・フィルターを取りかえることでサウンドのチューニングができるという、ちょっとしたカスタマイズの余地が残されている。デフォルトの「REFERENCE SOUND」と併せて、高域がブーストされる「HIGH BOOST」、低域重視の「BASS BOOST」が同梱されており、交換することで文字どおりの効果が得られる。デフォルトではハイもローも適正量だけ上手くカットしているようで、「HIGH BOOST」に取り換えるとデフォルトでカットされていたハイの抑えが弱まるために結果としてハイブーストのサウンドになる。ちょうどファイナルオーディオデザインのheavenシリーズのような鈴鳴りの高域が出るようになり、これはこれで面白い。バランスとしては「?」かもしれないが、この辺りは好みで交換してみればいいところだろう。

K3003の価格を意識すると、当然カスタムIEMが好敵手になると思うが、装着感やそのサウンドの傾向からすると、両者は全く違う方向性のもので、競合となる性質のものではない。K3003はあくまで高品質オーディオ機器であり、カスタムIEMは最高品質のモニタリングアイテムと理解するといいと思う。つまり、どちらも欲しくなりどちらも手にする価値があるということだ。



text by BARKS編集長 烏丸
●AKG K3003
オープンプライス(予想実勢売価14万円前後)

オープンプライス(予想実勢売価14万円前後)
※マイク内蔵インラインリモコン搭載モデル/対応モデル(2011年8月現在):iPhone4、iPhone3GS、iPhone3G、iPod touch(第2世代以降)、iPod nano(第4世代以降)、iPod classic(120GB/160GB)、iPod shuffle(第3世代以降)、iPad、iPad2
※Apple Store、nano・univers、RESTIRのみでの限定販売
リファレンスクラス・3ウェイ・カナルイヤホン
・バランスド・アーマチュア型×2(高域、中域)+ダイナミック型(低域)
・タイプ:密閉型
・周波数特性:10Hz~30kHz
・感度:104dB/mW
・インピーダンス:8Ω

・ハイブリッド・シース採用高純度OFCケーブル(1.2m)
・重量:10g(ケーブル含まず)
メカニカル・チューニング・フィルター付属(3種類)
・キャリング・ケース、高輝度ステンレス航空機内デュアルミニヘッドホンプラグ用アダプタ、シリコンタイプ・イヤチップ3サイズ(S/M/L)、4極→3極変換プラグ(K3003iのみ)
シ
・リアルナンバープレート同梱
◆AKG K3003オフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル
BARKS編集長 烏丸レビュー
◆Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
◆Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
◆Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◆ORB JADE to go(2011-08-22)
◆YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
◆NW-STUDIO(2011-08-09)
◆NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
◆Westone ES5(2011-07-21)
◆SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
◆クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
◆GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◆SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
◆フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
◆ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
◆フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
◆アトミック フロイド(2011-05-26)
◆モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
◆SHURE SE215(2011-05-13)
◆ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
◆ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
◆ローランドRH-PM5(2011-04-23)
◆フィリップスSHE9900(2011-04-15)
◆JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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