【BARKS編集部レビュー】オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2は、ATH-CK100PRO譲りの分解能

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オーディオテクニカ50周年の華々しきアニバーサリーモデル群の影に隠れ、さりげなく発売となったATH-CK100PROだったが、そのサウンドの突き抜けた完成度には心底しびれた。分かりやすいほど元気でドピーカンなサウンドを出すモデルなので、こんなお天気な音は受け付けないという人もいることだろうが、好みにドンピシャとはまれば、至福の桃源郷のお出ましだ。

◆ATH-CK90PROMK2画像

ただ一番のネックは定価63000円という、え?と2度見してしまう破天荒なその価格。現時点では4万円台半ばで販売している量販店も見かけるものの、それにしてもポンと気軽に買えるような価格でもない。「もうちょっとお財布に優しくて、このような高い解像度を持ちながらハツラツと切れ良く鳴ってくれるモデルは無いものか」という願いは、結構切実だ。

そんな思いを胸に秘めいろいろと探ってみたものの、灯台もと暗しとはこのことで、やはり答えはオーディオテクニカにあった。ATH-CK90PROMK2だ。

ATH-CK100PROは圧倒的な豊潤さも持ち合わせているけれど、一方のATH-CK90PROMK2にはキラリと光る絶品の切れの良さがあり、こここそが最大の魅力だと思う。両者の基本のトーンは全く共通で、生まれは同じという印象だけど、ATH-CK90PROMK2は走り込んで鍛え体脂肪率を極限まで絞り込んだアスリートのようなストイックなシャープさが最大の武器だ。ATH-CK100PROよりもシャキッと引き締まったフレッシュなトーンでもあると言える。

「癖がなくニュートラルでモニター的」という評価を受けているモデルではあるけれど、冷静に聴き込んでみれば、中域から高域への比重が強く、いわゆるリファレンスモニターのようなバカ正直なフラットではないというのが偽らざる事実。とはいえ、引き締まった低域の質感もソリッドで耳に届きやすいので、低域不足はさほど感じず、その適正なバランス感がモニター的なフラットさを醸し出してくれる。このあたりは、是非試聴にて自身の耳で確認し、バランスの好みをチェックいただきたいところだ。装着は簡単でフィット感も安定しているので、店頭の試聴環境においても個人差なくニュートラルなサウンドチェックができると思う。

描き出すサウンドの緻密さは間違いなくトップクラス。どの帯域に注力して聞いてもしっかりと細かいニュアンスから小さな音まで聞き分けることができる楽しさを秘めている。…というか、ATH-CK90PROMK2の最大の魅力はまさにそこ。その分解能に興味がなければ、それなりの価格を払ってこのモデルを買う意味がない。

視点を変え他のカナル型ヘッドホンと比較もいろいろと行なってみたが、構造も価格も随分違うのだけど、GRADO GR10と共通項が見受けられたのが意外だった。トーンは違うのだけど、高域の美しさや引き締まった低域のキレといったサウンドの傾向や、全体のバランスと清潔感のあるアンビエントの表現がどちらも高品位で、甲乙つけがたい上質勝負を繰り広げてくれる。分かりやすくまとめてしまうならば、音楽リスニングとして理想的にまとめ上げたのがGRADO GR10で、細かな音も拾い上げるようなシビアな音像を素直に耳へ届けるのがATH-CK90PROMK2といったイメージだ。

高域の美しさという点では、ファイナルオーディオデザインのHEAVEN Sとも好敵手になるかもしれないが、ATH-CK90PROMK2のほうが低域の量と中域のハリがしっかりしており、バランスは随分と違ってくる。クモリやボヤケとは無縁のシャッキリと煌びやかな高域をしっかりと確保しながら、軽々しい音にならないだけのエッジの立ったボトムを適正量確保したように思える。

▲聴き比べをした中で、耳に残った好敵手。左からATH-CK90PROMK2、ATH-CK100PRO、GRADO GR10、ファイナルオーディオデザインHEAVEN S。

▲左がSHURE掛けをした状態、右が通常状態。どちらも文字が上下反転しない。

飾りっ気のない無骨なデザインと淡白なルックスも、この価格帯で至宝のサウンドを求めようとするオーディオ好きの嗜好性に、ばっちり合致している。オーディオテクニカの高いトータルプロデュース力が見事に結実したモデルの筆頭ではないかと思う。

ウイークポイントとしてあげられる唯一のポイントは、ケーブルのタッチノイズが目立つことだ。ゴムっぽい質感のケーブルで、服と擦れるとガサゴソと響く。いわゆるSHURE掛け(耳掛け)で大きく改善するし、クリップなどで留める工夫で簡単に解決はするけれど。ちなみに、筐体には両サイドにLEFT/RIGHTの刻印が記されているが、通常の掛け方をしてもSHURE掛けをしてもその表記が上下反転しないようにデザインされている。どうでもいい細かい部分だけど、愛用者心理を思い図る細かい心遣いと、SHURE掛けも視野に入れた設計であることに気付かされる。

ちなみにハウジングはABS製となっている。コストとサウンドとのバランスからベストな設計になっているのだと想像しながらも、眺めているとまだそこには発展の伸び代が見えるような気もして、早くも次期モデルへの妄想旅行にお出かけだ。これ、チタン素材で作り上げたら、切れ味鋭いサウンドを叩き出す究極のモデルが誕生する気がする。これでぐいぐいドライブするシンプルな8ビートを聴いたら失神モノだぞ、きっと。その方向で新作も期待したいなあ…価格上昇はぐっと控えめでね。

text by BARKS編集長 烏丸

●オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2
¥26,250(税込)
・形式:デュアル・バランスド・アーマチュア型インナーイヤーヘッドホン
・出力音圧レベル:111dB/mW
・再生周波数帯域:20~15,000Hz
・最大入力:3mW
・インピーダンス:37Ω
・質量:約4g(コード除く)
・プラグ:φ3.5金メッキステレオミニ(L型)
・コード長:1.2m/Y型
・付属品:ポーチ、シリコンイヤピース(S,M,L)、コンプライTMフォームイヤピース(Mサイズ)
・別売:交換シリコンイヤピース ER-CK9(¥630)、コンプライTMフォームイヤピース T500(Mサイズ)
◆ATH-CK90PROMK2オフィシャルサイト

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