【BARKS編集部レビュー】お手軽に肉感的なサウンドアップを図る、Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+
ちょっといいイヤホンを手にし、プレイヤー付属イヤホンとはずいぶん違う心地よい音を知ると、そのままオーディオの世界へずぶずぶと足をとられることがある。イヤホン/ヘッドホン・ブランドがいろいろあることを知り、それぞれの特徴などを理解し始めることには、次なる欲しいモデルなどもできたりして、ずぼずぼと深みへ入っていくことになる。音楽好きにはたまらないグッド・サウンド・パラダイスは、なかなか抜け出すことのできない悩ましきヘッドホン魔境だ。
◆Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+画像
どんなポータブルアンプがいいかは好みによるものなので、一概に語ることはできないけれど、最初は、何が必要で何が重要かも全く分からず選ぶことすらままならない。サウンドの特性もさることながら、携帯性(大きさ、重さ、デザイン…)、操作性(各つまみ、スイッチの使い勝手…)、運用性(充電か電池式か)、機能性(DAC機能の搭載、オプション機能の有無…)など、気にしておきたいポイントは多岐にわたる。今回は、それらの様々な要素を3つのモデルからご紹介、アンプ選びのヒントにしていただければ幸いだ。
ここでお勧めするのはhippo cricri、Go Vibe Martini+、そしてGo Vibe VestAmp+という3モデルだ。いずれもシンガポールのJabenが取り扱う機種だが、良心的な価格と安心の品質から選び出したお薦めの3モデルでもある。
まずは、小さな巨人と呼びたいニューモデルhippo cricri(ヒッポ・クリクリ)。おおよそ9,800円(税込)という市場価格は、エントリーモデルながらもそれなりの値段だが、おもちゃのようなデザインでもなく価格なりの造作でもなく、どこから見ても純然たるポータブルアンプの造形であり、伝統的なルックスと真正面から切りかかる正統派とも言えるサウンドが所有欲を十分に満たしてくれるもの。とにかく何がすごいって、このコンパクトさだ。フリスクやミンティアよりもコンパクトなこのかわいらしさ、存在自体が既に奇跡でしょ。それでこの本格的な音だもの。
「入力されたラインレベルの音楽をイヤホン・ヘッドホンを駆動する大きな信号まで増幅する」のがヘッドホンアンプの主なる役目なので、ポータブルアンプに搭載される最小限の要素は、電源スイッチ、入力(プレイヤーの出力とつなぐ)と出力(イヤホン/ヘッドホンとつなぐ)の端子、そしてボリュームコントロールとなる。cricriの場合、カチッとクリック感のあるボタン式電源スイッチが搭載されている。独立したスイッチなので、ボリューム位置などを動かすことなく電源入/切できるメリットがあるが、ボリュームつまみが意図せず上がっていたりすると電源を入れた瞬間に爆音が鳴る危険性がある点がデメリットであろうか。
以上がポータブルアンプの基本要素だが、cricriには、さらにゲインスイッチとBASSブーストスイッチが付いている。ゲインスイッチは2段階でボリューム出力(大きさ)を切り替えることができるというものだ。同じボリューム位置でもヘッドホン/イヤホンのモデルによって大きな音が出るものと小さな音しか出ないものがある。インピーダンスと感度の違いによるものだが、その幅は意外に大きいので、ゲイン切り替えによるいろんなモデルに対応できるキャパシティの広さは安心だ。ゲインスイッチを上げてボリュームを絞った場合の音質の違いを使い分けるというマニアックな楽しみ方もアリだ。一方のBASSスイッチは、文字通りONにするとぐっと低域の押し出しがアップする。低域の控えめなヘッドホンと組み合わせてバランスを取るもよし、逆に低域強めなアイテムにさらなるブーストで低域オバケを存分に堪能するのもオツだ。
cricriのサウンドは、価格からは想像できない正統的なトーンバランスを持ち、地に足の着いたしっかりとした低域と濃厚な中域が非常に魅力的に響く。高域の伸びは標準的だが、この小さなボディから出てくる音とは思えない充実したもので、初めて買うアンプにもいいけれど、とにかく軽く簡単に利用したいと思い始めているポータブルアンプ猛者にも、一度試してみてほしいアイテムだ。
一方で、販売価格10,800円のGo Vibe Martini+は、非常にベーシックなヘッドホンアンプ然としたアイテムのひとつ。入出力のジャックと電源スイッチ、そしてボリュームつまみなど、全ての機能がフロント面にまとめられている。iPod/iPhoneやWALKMANなどデジタルオーディオプレイヤーと重ねて使用されることを前提に考えられたデザインで、これがポータブルアンプの大基本形と言えるもの。
Martini+のサウンドも、cricri同様、力強さとパンチ力、中域の伸びと低域の野太さが魅力のトーンを持っている。高域も必要十分に出ているが、低域~中域の厚く重いトーンが何より魅力だ。この重厚なサウンドはプレイヤーのイコライザーをいじっても表現できるものではないので、サウンド自体に深みを持たせるには、お薦めの一品。ちなみに前作Martiniでは単4電池×2本だったが、Martini+になって、使用電池が2倍に増えている。駆動時間とともに音色そのものへの改善のための仕様変更で、オペアンプとサーキットも一新されているようだ。
さて、最後のGo Vibe VestAmp+は、一般的なポータブルアンプにUSB-DAC機能が搭載されたモデルだ。VestAmp+に関しては、ボリュームつまみが電源スイッチを兼ねている。つまみを右へ回すとカチッとスイッチが入ってからボリュームを上げることになるので、ボリューム位置を固定しておくようなことはできないが、ひねらないと電源が入らないので不要にスイッチが入ってしまうようなトラブルは起こりにくい。
USB-DAC機能も見逃せない機能だ。これは、付属のUSBケーブルでPCとつなぐことで、PCの中に保存している音楽データをVestAmp+から再生するというもの。PCの内蔵スピーカーやPCについているヘッドホンジャックから音楽を聴くのではなく、PCを単なる再生プレイヤーに見立てて、音の増幅や高品質なサウンド制御は、ヘッドホンアンプ側で行なうという考え方で、当然のようにPCで再生するより格段に音がよくなる。いわゆるこれがPCオーディオと言われる世界だ。
▲こちらは Go Vibe VestAmp+(約29,800円)。プレイヤーと組み合わせやすいボディーサイズと可搬性に富んだ薄さがうれしい。USB-DACを搭載しているため、簡単にPCオーディオを楽しむことができる。 |
▲付属のケーブルでPCとUSB接続することで、USB-DACとして機能するとともに、内部バッテリーを充電する機能を持つ。 |
VestAmp+は29,800円というそれなりの価格ではあるが、薄くしかも軽量で使いやすい。サウンドは非常に基本に忠実な実直なもので、分かりやすい特徴や飛び道具的なキャッチは有していない。深みのある低域から中域の充実度は非常に魅力で、喧騒にまみれた屋外での使用でも生活ノイズにマスキングされない芯の強さがある。外でも部屋でもこれ一台で使い倒せる利便性を考えると、お買い得ともいえる価格だ。
ポータブルアンプを購入するに当たっては、ボディサイズ、バッテリー(充電式 or 電地)、USB-DAC機能の有無、そしてオプション機能あたりが着目ポイント。そのうえで好みのサウンドと合致するか、予算内かどうかを検討すればいい。
今回例に挙げた3機種は、奇をてらわずに堅実におすすめできるエントリー・モデルの一例だ。最も売れ線のモデルや人気機種を選ぶのも堅実で間違いのない方法だが、人と同じではイヤだったり自分なりのこだわりと個性を重んじたいと思う人には、一度チェックしていただきたいところだ。
text by BARKS編集長 烏丸
●Hippo Cricri
市販価格:9,800円(税込)
電源:内蔵リチウムポリマーバッテリー
コネクター:3.5mmステレオミニジャック
付属品:フェルトケース、3.5mmステレオミニジャック、充電用USBケーブル
●JABEN Go Vibe Martini+
市販価格:10,800円(税込)
電源:単4電池×4
コネクター:3.5mmステレオミニジャック
付属品:フェルトのケース
●JABEN Go Vibe VestAmp+
市販価格:29,800円(税込)
24bit/96kHz対応のUSB-DAC搭載モデル(アップサンプリングにより192kHzで出力)
電源:内蔵リチウムポリマーバッテリー
DAC:192kHzにアップサンプリングして出力 96kHz/24bitのデジタルオーディオ入力対応
コネクター:USBミニソケット
付属品:USBケーブル、USB-AC変換アダプタ、充電用ACアダプター、フェルトのケース、USBミニソケット
◆JABEN&Hippoオフィシャルサイト
◆JABEN&Hippoオフィシャルショップ
BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)
■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)
◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)
◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)
■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
この記事の関連情報
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話037「生成AIが生み出す音楽は、人間が作る音楽を超えるのか?」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話036「推し活してますか?」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話035「LuckyFes'25」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話034「動体聴力」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話033「ライブの真空パック」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話032「フェイクもファクトもありゃしない」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話031「音楽は、動植物のみならず微生物にも必要なのです」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話030「音楽リスニングに大事なのは、お作法だと思うのです」
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話029「洋楽に邦題を付ける文化」