【BARKS編集部レビュー】カナルワークスのカスタムIEM、CW-L01の実力はいかに?
先にお伝えしたとおり、今、カスタムIEM(In Ear Monitor)が急速に浸透し始めている。カスタムIEMとは、イヤモニ(イヤーモニター)、インモニ(インイヤーモニター)とも呼ばれるオーダーメイドのカナル型ヘッドホンのこと。
◆参照記事「実はすぐそこまで来ていた、カスタムIEMの世界」
▲カナルワークスCW-L01 |
自分専用に作られるため、バツグンのフィット感と共に最高クラスの遮音性が確保される。耳介の凹凸にぴったりはまるので、通常のイヤホンに必ずついているイヤーパットすら不要なのだ。サウンド向上のためのパーツをふんだんに盛り込めるのも大きなメリットで、汎用カナル型ヘッドホンとはサウンドクオリティは別世界。
これまでは、そのほとんどが海外ブランドのためオーダーから輸入までを個人で行なうしか手段がなく、しかも高額とあってほとんど一般には普及されなかったカスタムIEMだが、需要の拡大と共に立ち上がった純日本ブランドが、このカナルワークスである。
カナルワークスではCW-L01、CW-L11、CW-L31と3モデルがラインナップされているが、現時点で全てがモニター販売という形をとり価格を限界まで落とす一方で、品質向上を目的とした簡単なアンケートをユーザーに求めている。ユーザーの忌憚なき意見と感想を積極的に汲み上げ、更なる品質向上と的確なニーズへの回答をラインナップさせたいという制作者の思いが込められており、ブランドは消費者が育てるという構図を真摯に受け止めている様子が伺える。脱サラして起業した職人によるハンドメイドの品なので、ビジネススタイルも商品自体も人肌を感じさせる温かいものだ。
販売は、カナルワークスのウェブサイト(標準仕様内であればフジヤエービックからも可)を通して行なわれ、リアル店舗は存在しない。オーダーフォームから購入申し込みを行ない、カナルワークスから届くメールにて詳細を確認し、オーダーとリクエストが整ったら正式注文となる。
▲このキモイのが耳型(インプレッション)。シリコンを耳穴に流し込み5分程度で硬化させ型をとる。一般的に補聴器を取り扱う店舗で採取する。 |
現時点で耳型採取提携店は東京・大阪・福岡の7店舗にとどまるが、他エリアの人は地元の補聴器販売店にて適切な耳型を採取し、それを送付すればOKだ。その際は商品代金から採取手数料相当として5,000円を引いてくれる。全ての必要事項が揃ったら代金を支払って半月~1ヶ月ほどで完成品が手元に届くという段取りだ。
上記手続きを行ない、今私の手元には完成したエントリーモデルCW-L01がある。49800円という驚きの低価格に反して素晴らしいサウンドを奏でるアイテムで、その満足度は日に日に増している。どんどん音がよくなっており、夏休みの朝顔日記のようにCW-L01エイジング日記が書けそうだ。鳴らせば鳴らすほど所期の能力に近づいているようで、最初の数時間で詰まったような感覚が薄れ、10~20時間程度で、キレの良い低域の押し出しが強くなり高域の伸びがよくなった。当初と比べると音の見通しが格段に向上したが、まだまだ成長過程にあると感じさせてくれる。
ドライバーが1つというシンプルな構造ゆえの低価格を持って、コストパフォーマンスで言えば世界最強レベルのカスタムIEMのひとつと思う。
一番嬉しかったのは、バランスド・アーマチュアのシングルドライバーにありがちな、スネアの軽々しいコンコンとした響き方が一切ないところで、各帯域に変な偏重がなく、私の耳にはサ行の刺さりもない。気になるピークもディップも見当たらず、ボリュームを上げてもリニアに音量が増し騒がしさは増さないので、ソースを選ばないオールマイティに楽しめるIEMだと思う。
▲左がアルティメット・イヤーズUE18Pro、右がCW-L01。造形が近く装着感も近い。 |
▲ウェストンES5との比較。各パーツのバランスが全く違うことが分かる。もちろんどちらも同じ耳に対して作られたもの。ブランドによる造作の差異は大きい。 |
特殊カラーの相談やオリジナルのアートワークなど、細かな要望に対しても相談に乗ってくれる柔軟さときめ細やかさも、カナルワークスの魅力のひとつ。カスタムIEM制作が初めての人にとっても、複数を使い分けている猛者にとっても、十分なコミュニケーションのもとで安価に制作できるのは何より魅力的。痛車ならぬ痛ホンだってウェルカムだ。
現時点で気になる点を上げるならば、ケーブルの太さであろうか。タッチノイズもなく、実は十分にソフトで取り回しやすいものなので実用に不備はないのだけれど、いかんせん見た目がごつい。他カスタムIEMブランドのケーブルがいずれもスマートでスタイリッシュなだけに、ここは評価が分かれそうだ。そして注意点をもうひとつ…CW-L01はインピーダンスが100Ωと大きい。これは本体の音量が小さくプレイヤーのボリュームをかなり上げないと通常の音量にならないことを示す。「音量が取れない」という表現をするが、通常のプレイヤーでは、何とかぎりぎり使用OKの範囲というところだ。
シングルドライバーの到達地点とも言えそうな完成度をみせるCW-L01だが、私は試聴器にて現フラッグシップのCW-L31のサウンドも確認している。試聴器はサウンドを参考とするものでそれ自体を評価する類のものではないが、CW-L01の試聴器と完成品とのサウンドのギャップから推し量ると、3ウェイ4ドライバのCW-L31がとんでもなくパワフルで、これはこれで特筆すべきパフォーマンスを持っているのではないかと睨んでいる。CW-L01の満足度が非常に高いものだっただけに、次期にはCW-L31の突撃レポートにも身を投じてみたいと思っている。
▲ペリカンケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス他が、袋に包まれて到着する。 |
カスタムIEMは決して生活必需品ではないけれど、ささやかな潤いとひと時の幸せを与えてくれるステキ過ぎるアイテム。どうか、是非ともこの世界を試してみて欲しいのだ。だって、音楽をこんなに楽しく聞かせてくれる極上のサウンドパラダイスを知らないだなんて…、そんな音楽人生、もったいなさすぎるもの。
text by BARKS編集長 烏丸
●カナルワークス CW-L01
・Full range/Single driver Custom In-Ear Monitor
・5月7日発売 モニター販売価格:49,800円(標準仕様、税、耳型採取費用を含む)
・ドライバー:バランスドアーマチュア方式(フルレンジ×1)
・ケーブル長:115cm
・プラグ:ステレオミニプラグ
・付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス
●カナルワークス CW-L11
・2way/3driver Custom In-Ear Monitor
・モニター販売価格:69,800円(標準仕様、税、耳型採取費用を含む)
・ドライバー:バランスドアーマチュア方式(低域×2、高域×1)
・ケーブル長:115cm
・プラグ:ステレオミニプラグ
・付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス
●カナルワークス CW-L31
・3way/4driver Custom In-Ear Monitor
・5月7日発売 モニター販売価格:84,800円(標準仕様、税、耳型採取費用を含む)
・ドライバー:バランスドアーマチュア方式(低域×1、低・中域×2、高域×1)
・ケーブル長:115cm
・プラグ:ステレオミニプラグ
・付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス
◆カナルワークス・オフィシャルサイト
◆フジヤエービック・サイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル
BARKS編集長 烏丸レビュー
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