【BARKS編集部レビュー】moshi audio Clarusの見晴らしの良い開放的重厚サウンド

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moshi audioから登場してきた新製品clarus(クラルス)が素晴らしいサウンドだったので、その魅力をお伝えしたい。

◆moshi audio Clarus画像

clarusは2月8日に発売となった新製品だが、まずはそのちょい近未来的な意匠が目を引く。オヤジがはめると未来派補聴器、清楚なおねいさんがはめると電話交換手みたいなイメージでもあるのだけど、若い男性が耳にすると文句なくかっこいい。質感は高く見た目も手触りも高級感あふれるものだ。そして、そんなことより何より素晴らしいのは、その軽快な装着感と濃厚なサウンドだ。非常に軽い付け心地のため、遮音性はさほど高くないものの、広い空間と爽快なヌケの良さは特筆すべきポイント。それでいてトーンは重厚でもある。パワフルなロックサウンドを存分に再生する能力と、高域までスコーンと抜ける軽快さが両立するという完成度だ。

装着感は軽く快適で、むしろ付けている感じがしないほど。これはぐるりと外耳を取り囲むように作られた黒いイヤループが非常にソフトで、不要な力を与えないことと、カナル型ではあるもの外耳道に押し込むわけではなく、そっと蓋をするような自然なフィット感であることによるもの。スポッと耳の穴にはハマったままの状態なので、遮音性を追求したカナル型に慣れ切った人であれば、心もとないほどあっけない付け心地だ。

大仰な見た目からは想像できないほど軽い装着感だが、それでいてしっかりとした低音を出してくるからこいつは凄い。カナル型の場合、外耳へしっかりとフィットさせることで、重低音を漏らさず外耳道壁を通して鼓膜へ振動を届ける構造がほとんどだけど、clarusの鳴り方は、まるで外部の空気振動がそのまま耳穴に飛び込んできたような…要するに、スピーカーで鳴った低音がそのまま鼓膜に到達したかのような質感を持っている。頭蓋骨を直接揺さぶるような低音ではないのだけど、必要にして十分な量感があり、低域の不足は全く感じられない。

この音の鳴りは、ハーフカナルと名付けられていたフィアトンのPS 20にも似ているし、Atomic Floyd HiDef Jax/HiDef Drumの質感にもよく似ている。PS 20はトーンバランスやサウンドそのものもclarusとよく似ている。HiDef Jax/HiDef Drumの場合は、その音のエッジをもう少しソフトに丸めミッドを充実させれば、Clarusのサウンドにそっくりになりそうだ。トーンの違いこそあれどサウンドの質感はAtomic Floydに肉薄するところがあり、魅力に溢れている。これら3者に共通しているのは、「帯域の広さ」と「圧迫感のない広がりのある開放的なサウンド」ながら「中ヌケしない迫力のある実の詰まったジューシーなサウンド」であるというところだろう。

▲付属イヤーチップは左が白、右が赤。iPod/iPhone/iPad対応のコントローラー付き。

▲ケース内のアクリル板にはめられ、まるで中に浮いているようなカッコ良さ。

▲付属のキャリングケースも質感高く使いやすい。

音響機器の場合、スペックだけを語ってもろくなことがないのは周知の事実ではあるけども、Clarusの見逃せない特徴的な構造に、デュアルドライバーを搭載しているという点がある。DynaDuoと名付けられたドライバーで、スティールのハウジングの中に、低域用の15mmウーハードライバーと、高域用の7mmツイーターを同軸上に配置している。もちろんパッシブネットワークが組まれ、完全なる2ウェイでドライブしているというものだ。

DynaDuoの功績なのだと思うが、このclarusも「明らかにいい音」といえる次世代モデルの一角に位置する注目すべき逸品だ。サウンドという点では強い個性を放つわけではないので、無難で面白くないという人もいるかもしれないが、快適な装着感でぴたっと安定し半開放型のように外部の音も拾いながら、ゼンハイザーIE80のような高品位なバランスを鳴らしてくれるイヤホンというのは、そうは見当たらない。音の素直さと絶妙なバランスの良さは称賛に値するクオリティであることは間違いない。

遮音性を求める人には全くお薦めできないが、むしろ生活音は遮断したくないというのであれば、まずはClarusにご注目を。この空気のような装着感と広がる開放感、清潔感のある美音は、多くの人に評価されるべきものと思う。

最後に、気になった点を2つ。ひとつはタッチノイズ。編み込み式の軽量ブレイドケーブルで質感は高いものだが、触れたときのノイズはそれなりに響く。ただ、装着状態ではケーブルがものに触れることがほとんどないようで、結果的に気になることはなかった。もう1点は価格だ。オープンプライスなのだが、メーカー直販価格は19,950円(税込)というなかなかに高額なのである。自分の求める方向とマッチしているかが重要なので、後悔なきよう慎重に検討いただきたいところだが、遮音性さえ求めないのであれば、高い満足をもたらしてくれるに違いないと思う。

Bowers & Wilkins C5、REALM IEM856、ゼンハイザーIE80…と、さりげなく中庸ながらも素晴らしいバランスを叩き出す高品質イヤホンが次々と誕生する中で、moshi audio Clarusも必ずチェックしてほしい新製品のひとつだ。お見知り置きを。

text by BARKS編集長 烏丸

moshi audio
●Clarus
・トランスデューサー・ユニット:XR715 2ウェイDynaDuoドライバー(15mmウーファー+7mmツイーター)
・ハウジング:スティール合金
・感度:100±3dB@1kHz
・周波数応答:10~25,000Hz(-10dB@1KHz)
・インピーダンス:24Ω
・ケーブル:長さ約1.2m、対称型Y字スプリット
・iPhone 互換マイク機能付きの3ボタンコントロール*
・イヤーカップリングタイプ:ルーズフィット・シリコーンイヤーチップ(S/M/L 3サイズ)
・専用ケース付属
・Made for iPod/iPhone/iPad取得
※コントローラとマイク対応機種:iPod nano(第4世代以降)、iPod classic(120GB、160GB)、iPod touch(第2世代以降)、iPhone 3GS、iPhone 4/4S、iPad、iPad2
※コントローラのみ対応の機種:iPod shuffle(第3世代以降)

◆moshi audio Clarusオフィシャルサイト

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