【インタビュー】ZIGZO、髙野哲×岡本竜治×吉田トオルが語る7年ぶりのアルバム「作るんだったらド派手なものに」
■我の強い人たちってことは変わってないけど
■そこに俯瞰で見られる部分がプラスされた
──では、音楽的に意識した部分はありましたか?
吉田:5人それぞれの音楽的ルーツとか、好きなものをもう一度呼び戻して融合させたような感じはすごくあったかな。SAKURA (櫻澤泰徳/Dr)さんがツェッペリンのドラムパターンを持ってきたり。
髙野:SAKURAさんは特にそうだったかもね。ツェッペリンだったり、AC/DCだったり。
岡本:隙間を見つけた瞬間にぶっ込んできてたからね。
吉田:プリプロの時も本当にそういう感じで。ビートルズの「レディ・マドンナ」っていうキーワードがあれば、8分音符で叩くピアノから曲を作り始めたり。1曲目の「Humor,Rumor」もブラックコンテンポラリーとかスティービー・ワンダーみたいなフレーズを弾いた時に、てっちゃん(高野哲)が「それいいかも」と言ってあのリフができたり。そういうルーツをみんなで融合させたことがすごくおもしろかった。
髙野:以前だと、むしろ避けようとしてたところだもんね、“もっとオリジナリティがあるものを”って。天才だと思ってたからさ、自分たちのこと。でも40歳手前で、どうやらそうじゃないってことに気づいたけど(笑)。
吉田:はははは!
髙野:そうやって素直に好きなものを出していける感じも、5人でやってるからこそのムードだったと思う。4人でやってたらそうはならなかったかもしれない。
▲岡本竜治 (G) |
髙野:うん、多い。ツアーのことを考えたら、アルバム収録曲では俺、アコギ曲以外ギターを持たないつもりだもん。
岡本:ギターソロのハモリなんかは、俺と吉田トオルとふたりでできるし。
髙野:そうしてもらって、俺はソロ中、ずっとふざけてればいい。
吉田:後ろ(キーボード側)向いて変顔してくるんでしょ(笑)。大変なんですよ! 間奏になると、だいたい哲とDEN (大西啓之/B)さんが変顔して俺を笑かそうとしてくるんです。俺は隙だらけなんで、絶対笑っちゃうから。でも、SAKURAさんにはそういう隙がないから笑わないらしく、「やんない」と(笑)。
髙野:いつもすみません(笑)。
──去年から1年間、リテイクシリーズのリリースを継続したことは、アルバム制作に影響しましたか?
髙野:リテイクシリーズを経たことで、レコーディングの工程や分担があらかじめ確認できたから、いろいろスムーズだったかな。SAKURAさんの所有スタジオで、SAKURAさんがエンジニアリングをして、SAKURAさんかDENさんがミキシングを担当する。そういうやり方がリテイクシリーズで出来上がったので。
岡本:そうだね。リテイクシリーズのレコーディングが、今回のレコーディングをよりスムーズにさせたという一面は大きくあると思います。
髙野:ただ、ライブで歌ってきた曲と違って、始めて歌う曲って難しいなーと思った(笑)。リテイクはすげえ楽しく歌えるんだけど。
──あのリテイクシリーズは、繋ぎの企画というよりは、メンバー的にも楽しくできた企画だったんですね。
岡本:“そんなに大きく変える必要もないけども、ライブによってこういうふうに育ったよね”っていうところをパッケージしておこうって。そこを再現することも楽しかったかなと思います。
吉田:昔の音源に鍵盤は入ってないんだけど、ライブで弾いてる鍵盤フレーズをちゃんとパッケージできたっていうこともありました。逆に「衝動」とかは、ライブではオルガンしか弾いてなかったんですけど、「ピアノでやってみない?」ってアイデアをもらって、あえてピアノで弾いたり。そういういろんなキャラクターが新しく生まれたリテイク集でしたね。「衝動」はハモリも追加したよね。
髙野:そうそう。ライブバージョンを清書しつつ、プラスのアレンジも入れて。そういうことを積み重ねていく流れで、今作のアルバムレコーディングに入れたのも良かったね。ハーモニーって話で言えば、アルバムにもすごくたくさんハーモニー入れたし、音楽的にはそういう繋がりも作れたと思う。
──逆にライブがなかなかできないフラストレーションとか、そういう環境や気持ちも曲作りに反映されることはありました?
髙野:うーん、それはそんなにないかな。演奏できたらもう楽しい!っていうアホアホチームなので(笑)。お客さんがいなくたって、楽器背負ってドカーンとデカい音出したら、フラストレーションはもうないですからね。あるとしたら、普段の生活のなかでみなさんが感じてるのと同じようなことくらいで。
──たしかに、ZIGZOのロックンロールやバンドを楽しんでいる感じは、20年前からブレないですね。ニューアルバムを聴いても、大人になりきらないロックキッズを感じました。
髙野:そもそも5人とも女の子にモテたくて、10代の頃にバンドを始めてるし。50歳を越えてもそれが変わってないので(笑)。モテたいまんまだから、そりゃワーッ!てなるかな。
岡本:なるね(笑)。
髙野:たぶん「今回のアルバム、ブルースじゃん」みたいなのは無理っすね。“ブルースがモテる”って聞こえてきたら変わりますが(笑)。
──ははは。同時に、さっきの「ルーツを取り入れた」という話もそうですけど、いろいろな経験を活かして作ってる部分は、キャリアも年齢も重ねたZIGZOだからこそですよね。
髙野:トオルさんとかSAKURAさんは他のアーティストのプロデュースもやってるから、やっぱり自分たちの曲を俯瞰で見ることができるんですよ。それに全員が個々に、みんなの良さとか自分の良さをもう一回分解して見られるようになったんじゃないかな。昔は、“俺はこれがやりたい”って我の強い人たちの集まりだったので。まあ、そこはあんまり変わってないっちゃ変わってないんだけど(笑)、それに俯瞰で見られる部分がプラスされたってことですよね。
──作曲クレジットがすべて“○○&ZIGZO”表記になっていますけど、楽曲はみんなで作っていく感じだったんですか?
髙野:そうですね。スタジオの中で全員で作っていくので、もう作曲表記は全部ZIGZOでいいと俺は思ってたんですよ。でも、さっき言ったように1曲目がトオルのフレーズから出来上がったとかってあるじゃないですか。俺個人は音楽ファンとしてそういうことを知るのが好きなので、“&ZIGZO”の前に元ネタを作った人の名前を表記したという。たとえば“レノン=マッカートニー”みたいに、そのクレジットを見ただけで一気に曲作りの情景が浮かんだりすることってあるじゃないですか。だから、誰をきっかけに、みんなでワイワイ作った曲なんだろうっていうことを示したんです。
──ちなみに、アルバム収録曲のほとんどが哲さんかRYO(岡本竜治)さんの作曲ですが、おふたりが曲を持って行く時は、どういう状態なんですか?
岡本:僕の場合は、思い付いたギターソロとか、朝起きたら頭の中で鳴ってたギターのフレーズをそのままスタジオで弾いたり。それを曲にしていこうっていう感じ。ひとつのフレーズからイメージが広がれば、一気に曲になってしまうのがこのバンドの良さで、そういう曲の作り方が多いですね。
──哲さんは?
髙野:俺はRYOさんとはまた違って。パッて何かが浮かんだときにイメージとかアレンジも一気に始まっちゃうんですよ。でも特に今回は、みんなでスタジオでワーッてやってるムードで構築したいと思ってたから、寸前まで考えないようにしてました。みんなと会う間に頭の中で作曲作業が進んじゃうと、“こうしてほしい”って気持ちが強くなるので、みんなの良さを出す隙がなくなっちゃう。だから、だいたいその日の朝とか、前の日とかになんとなく浮かんだメロディだけを持っていくようにして。まあ、本当は最初から最後まで頭の中では出来上がり始めてるんですけど、できてないふうな感じで出してみて。たとえばほら、「全然試験勉強してない」とか言いながら実は結構勉強してるやつってクラスに何人かいたでしょ、そんな感じ(笑)。そうやって意識したおかげか、今回はみんなのアイデアをすごくおもしろく見ながら作ることができました。
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