【ライブレポート】YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA、一夜限りの<NEXT GIANT LEAP>に豪華メンバーも集結「次に繋がるような一歩を」
ギタリスト/コンポーザーのYUKIHIDE “YT” TAKIYAMA(以下・YT)が2025年1月12日、東京・池袋 harevutaiにて、ワンマンライブ<YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA EXCLUSIVE LIVE「NEXT GIANT LEAP」>を開催した。ソロアーティストとしてはもとより、プレイヤーやアレンジャーとしての定評があるYTは、B'zや氷室京介のレコーディングでのアレンジ参加、ライブツアーでのギタリストやベーシスト参加など、オーバーグラウンドな活躍を続けている。2024年には、TMG (Tak Matsumoto Group)の20年ぶりの全国ツアー<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->にサポートギタリストとして帯同したことも話題となった。
◆Yukihide “YT” Takiyama 画像
今回の<NEXT GIANT LEAP>は、YTが2024年9月に発表した自身2枚目のソロアルバム『Next Giant Leap』リリースを記念して行われる一夜限りのスペシャルライブだ。YTと共にステージに立つバンドメンバーは、氷室京介やGLAYのサポートでも知られる永井利光(Dr)、YTを中心としたプロジェクトGOSPELS OF JUDASにも参加した北川吟(B)という、腕利きのミュージシャンによるトリオ編成。貴重なライブとあって、会場である池袋 harevutaiのエントランス前には寒空の下、多くのファンが行列を作っており、道行く人たちの注目を集めていた。
ぎっしりと埋まったフロアに流れていたエレクトロポップなBGMが強くビートを刻むと、主役の登場を待ちわびる観客から手拍子が自然発生。会場が暗転すると大歓声に迎えられて、永井、北川に続いてYTがステージに登場した。すぐさまVシェイプのギターを手にしてかき鳴らしたYTが「yeah!Go On!」と叫ぶと、永井と北川が呼応するように「Go On」からライブがスタート。アルバム『Next Giant Leap』の中核を成すボーカル曲による開幕だ。ささくれ立ったファズサウンドながらキャッチーなギターリフに一瞬にして惹きつけられる。ギターはもちろん、しゃがれたワイルドなボーカルも聴き応えたっぷりで、繰り返し「Go on!Go on!」とシャウトするYTに応えるようにフロアから一斉に右手が突き上げられた。
続いて真っ赤なライティングに染まるステージから放たれたのは、同じく2ndアルバム収録曲「No One of a Kind」。序盤のレゲエ調アレンジが、アルバム収録バージョンよりも一層荒々しく妖し気に響く。間奏のソロでは、カオシレーター的にこみ上げるサイケデリックな音像にトリップさせられ、エンディングへと向かうソロは爽快なサウンドを響かせるなど変幻自在な展開が秀逸だ。多彩なアレンジは百戦錬磨のプレイヤー3人ならではのもの。トリオが一丸となって疾走するインスト曲「Afterburner」では、永井と北川の重たいビートに乗って髪を振り乱して一心不乱に旋律を奏でるYT。北川によるコーラスがさらにスピード感を加速させる。「YTー!」と曲間であちこちから熱狂的な歓声がステージに向けられると、YTが口を開いた。
「<NEXT GIANT LEAP LIVE>へようこそいらっしゃいました。一日しかないんで、間違えたりしても気にしないでください(笑)。全力で楽しんで行ってください! 最後までよろしく!」
リラックスした様子のMCの後は、グッとBPMを落とした力強いシャッフルナンバー「Bigger on the Inside」へ。勇壮なメロディを歌いながら「カモン!」と煽るYTに向かって、オーディエンスが手を伸ばしながら「Oh,Oh」とコーラスを重ねる。続く「Drop Down」は、この日、初めての1stソロアルバム『Tales of a World』収録曲。ぐんぐん上昇していくリフが圧巻。間奏でドラムとベースがブレイクした間隙を縫うように、タッピングを織り交ぜた煽情的なソロには思いっきり興奮させられた。
「次の曲は、最近亡くなってしまったすごいギタリストで、個人的にすごく影響を受けた人のことを考えながら作った曲です。聴いてください」との言葉に続いて始まったのは「Playground」。キメが多用されたジャズファンク的な演奏に乗せて、フュージョン/AORテイストのメロディを弾くYT。そのギタリストがジェフ・ベックであろうことが想像できるフレージングだ。バンドの珠玉のアンサンブルが存分に楽しめる1曲で、演奏が終わると拍手喝采となった。
「ソロアルバムには入っていない曲」と紹介された「Area 51」は、GOSPELS OF JUDAS の1stアルバム『IF』収録曲。YTのどこか儚さも感じさせるヴォーカルが、躍動するリズム隊のタイトなプレイでより際立って聴こえた。「スライドを使う曲が好きなので、そういう曲を聴いてください」とのMCに導かれて「Strangers on Mars」へ。ヘヴィなビートの上で、ゆったりとスライドバーを滑らせるYT。曲タイトルとスペーシーなサウンドも相まって、アメリカ空軍の謎めいた施設“Area 51”をモチーフにした前曲との関連も感じさせる。
さらにスローな「Ballad in Blue」(4th EP「Again」収録)では、リバーブが深くかかったドラムのダブサウンド、淡々としたベース、空間を漂うギターが異空間へといざなう。気付けば、背後のスクリーンに映し出された大きな地球が端から中央へと少しずつ移動していた。その後半、YTのギターに導かれるように徐々に熱量を上げてラウドなサウンドを構築する2人。そのド迫力な演奏に、固唾を飲んで見入っているオーディエンスたち。曲が終わると、しばし拍手が鳴りやまない名演だった。永井が「この曲、“自由に叩いて”って言われたので、どういう風に盛り上げていくかなって思ったんだけど、今のテイクが一番良かった」と明かすと、どよめきと共に称賛の拍手が沸き起こった。
アコースティックギターによるYTの穏やかな独奏「Celebration of the New Sun」を挟んで、「コロナのとき、いつの日かみんなで騒げるような日が来たらいいなと思って、人が元気になれるように作った曲です」との言葉から「Revel」へ。先ほどまで青かった地球が温かいオレンジ色に変化し、激しくも優しく鳴り響くギターに込めたYTの心情と重なって見えた。
「Playground」演奏時に話した“影響を受けたギタリスト”がジェフ・ベックであることを改めて明かしたYTは、「曲の作り方というよりも、メロディの取り方とかに影響を受けている」と語った。そして「1stソロアルバム『Tales of a World』にジェフ・ベックの影響を受けて作った「Playground」を入れたこともあり、その流れで、2ndソロアルバム『Next Giant Leap』に入れた」という「Where My Head is」をライブ初披露。北川がファンキーなベースリフを奏で、そこに永井のドラムが加わり、YTがリフを重ねる。'70年代中期のジェフ・ベックを思わせるファンキーかつフュージョン味も濃い王道のインストナンバーだ。演奏する3人は生き生きと、まさに水を得た魚といった感じで楽しそうだ。途中、それぞれがソロを取って大盛り上がり。曲を終えるとYTは、「今回、この2人がいなかったらできなかったです。最高でしょ!?」と、改めて信頼する永井と北川を紹介して、フロアから2人に拍手が送られた。
曲調はガラリと変わり、1stソロアルバム『Tales of a World』のオープニング曲「Jaguar」でパンキッシュに駆け抜けると、「yeah!」のコール&レスポンスで会場全体が一体となり、ストロークをかき鳴らして2ndソロアルバム『Next Giant Leap』の冒頭を飾る「Echoes of the Last Runner」へとリレーする。ロングトーンのチョーキングをキメて恍惚とするYTの姿は、紛れもなく現代のギターヒーローだ。「原点ともいえる曲です」と「Nasty Creature」を繰り出すと豪快なスライドギターが炸裂した。重厚なドラムとベースが音の塊となって、武骨な歌声と共に迫り来る。ひたすら登り詰めるような演奏が頂点に達して、バンドはステージを降りた。
アンコールに応えてステージに戻るとYTは今日のライブについてこう語った。
「正直言って、人が来てくれるか不安やったんですよ。“アルバムを出して自分の曲でライブをやりたい”っていうことは、1枚目を出したときから言っていたんですけど、実際にやろうかなと思ったら、“お客さん来るのかな?”っていう不安がすごくて。ライブをやるって決めてから、毎晩のようにうなされたぐらい。今日、裏からみなさんの様子を見たら、ものすごくフロアに人が入っていて。泣きそうになりました。そして最高のメンバーに支えていただいて。この2人が完璧にやってくれるから、俺はもうなにやってもええわっていう感じで弾いてます」
と、ライブへ臨んだ心境を赤裸々に語ると共に、永井と北川への感謝を伝えた。「なにやってもええわ、と言いつつ難しい曲をやりますよ」と告げると、「Ghost with Curly Red Hair」の幾何学的なリフを弾き始めた。聴くからに難易度マックスなアレンジを凄まじい勢いで演奏していく3人。轟音の中でのメロウな旋律も顔を覗かせるところに、YTのコンポーザーとしての魅力を感じさせた。そして最後の曲の前にYTはこう語った。
「今日はほんまにありがとうございました。今回のライブに<NEXT GIANT LEAP>というタイトルを付けたのは、自分にとって次の一歩を踏み出すっていう意味で。誰にとっても次の一歩ってデカい一歩やと思うんです。例えば、こういうライブに初めて来て、大声で歌ったり暴れたりするのも第一歩だと思うんですけど、そういう次に繋がるような一歩みたいな機会になったんやったら最高に嬉しいなと思います。最後の1曲、まだ暴れたことがない人は、暴れようぜ! 最後、思いっきり弾けてください!」
そしてラストナンバー「Tales of a World」へ突入した。「もっともっと!」と煽り、自らも激しくアクションしながら歌いギターを弾くYT。豪快なロックチューンに会場が最高潮を迎えてエンディング。ステージ中央に集まり、大歓声に応える3人。YTは「ありがとうございました! ものすごく楽しかった。自分が考えていたよりも最高に楽しかったです。本当にみなさんのおかげです。ありがとうございました」と謙虚に何度も感謝を伝えた。3ピースならではのソリッドさと、サウンドのぶ厚さを兼ね備えた演奏で、YTが描くアルバムの世界観を最大限にブーストさせた見事なライブだった……と思っていたところ、鳴りやまないお客さんの声援に応えて、YTが1人でステージに登場した。
「せっかく来ていただいたし、1回しかないので」と、予定外のWアンコールへ。アコースティックギターで未発表曲のインスト曲「Flying Balloon」を披露した。ギター1本ながら、大陸的でスケールの大きな演奏と癒される音色が広がり、心地良い余韻の中でライブは終了。ギタリスト、コンポーザーとしての激しさや鋭さだけでなく、人間的な魅力も随所に伝わってくるスペシャルな一夜だった。
取材・文◎岡本貴之
撮影◎平野タカシ
■<YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA EXCLUSIVE LIVE「NEXT GIANT LEAP」>2025年1月12日(日)@東京・池袋 harevutai セットリスト
02. No One of a Kind
03. Afterburner
04. Bigger on the Inside
05. Drop Down
06. Playground
07. Area 51
08. Strangers on Mars
09. Ballad in Blue
10. Celebration of the New Sun
11. Revel
12. Where My Head is
13. Jaguar
14. Echoes of the Last Runner
15. Nasty Creature
encore
en1. Ghost with Curly Red Hair
en2. Tales of a World
W encore
en3. Flying Balloon(未発表曲)
▼Apple Musicにてセットリストのプレイリスト公開
https://music.apple.com/us/playlist/next-giant-leap-live-set-list/pl.b23dbf3915e2477aac682c91b8288ad9
■<YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA EXCLUSIVE LIVE「NEXT GIANT LEAP」>アーカイブ配信
▼チケット
・Fanclub “SonusNexus”会員:¥3,300(税込)
・一般:¥4,400(税込)
https://tixplus.jp/feature/yukihidetakiyama_stpass_202501/
■2ndアルバム『Next Giant Leap』
2024年9月25日発売
JBCZ-9150 2,500円(税込) / 2,273円(税込)
配信情報:https://bzone.co.jp/site/yt/news/240816.html
▼収録曲
01. Echoes of the Last Runner
02. Bigger on the Inside
03. Afterburner
04. No One of a Kind
05. Where My Head is
06. Go On
07. Strangers on Mars
08. Celebration of the New Sun
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