【インタビュー】BAND-MAID、『Epic Narratives』を経て生まれた新曲「Zen」リリース「ガンガン進んでいきますっぽ!」
BAND-MAIDの2025年は「Zen」と題されたシングルで幕を開ける。この楽曲は1月5日より放送開始されているMAPPAオリジナルTVアニメ『全修。』のオープニングテーマ曲となっているが、実にBAND-MAIDらしくありながら、これまでの彼女たちの代表曲群とは一線を画すたたずまいをしたナンバーだ。
◆撮り下ろし写真
そして、この楽曲が生まれた背景を探りながら2024年の収穫について掘り下げつつ話を進めていると、現在の彼女たちが置かれた充実度の高い状況の素晴らしさと、2025年の動きが見えてきた。話を聞いたのは年の瀬の慌ただしい最中でのこと。しかも例によって、バンドの創作活動はそうした時期においても少しも歩みを止めていないのだった。
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◾︎タイアップならではの曲作りの面白さというのも感じました
──基本的にはこの「Zen」のことを中心にしつつ、2025年がどんな年になっていくのかを探っていければなと思っています。まずはこの曲についてですが、『全修。』というTVアニメのオープニングテーマ。このタイトルは「すべて修正する/オールリテイク」という意味だそうですね。曲を聴いて感じたのは『Epic Narratives』と親戚関係にあるというか、もっと具体的に言うとあのアルバムに収録されていた「Forbidden tale」と近い位置にある曲なのではないかと思えたんですが……これは見当違いでしょうか?
SAIKI(Vo):制作時期がわりと同じくらいなので、見当違いなんてことは全然ないですね。
──良かった(笑)。アルバム制作中、SAIKIさんから「展開の多い曲が欲しい」という要求があって、そこから「Forbidden tale」が生まれたという話がありましたよね。この曲もそれに対する答えであるように思えたんです。もちろんタイアップありきで作られた曲ではあるのかもしれませんが、曲自体にドラマ性があって、そんな部分に共通したものが感じられて。
SAIKI:実際、「Forbidden tale」ができてからの曲ではあったはずなので、そこはやっぱりあの曲を作ったKANAMIの経験が活きてるんじゃないかと思いますね。
KANAMI(G):そうですね。それと同時に、先方側からの「こういう感じの曲が欲しい」というご要望がはっきりあったので。参考音源なども交えつつ「始まりはこういう感じ、その後はこんな感じの展開だと理想的」みたいなご提案をいただいて、そのイメージを汲み取りながらも……結果的にはわりと崩したんですけど(笑)。
SAIKI:それをKANAMIなりに解釈したんだよね。
KANAMI:うん。やっぱり完全に同じようにはできないから私なりに解釈させてもらいつつ、同時にBAND-MAIDらしさみたいなものを出したいなって。あと、この曲に関しては仮の歌メロを入れる時に、めずらしくSAIKIが……憶えてる?
SAIKI:憶えてない(笑)。
KANAMI:めずらしく「サビに入るところのメロディをこうしたい」ということを言ってきたんだけど……憶えてない?
SAIKI:まったく憶えてない(笑)。
小鳩ミク(G, Vo):なんだかコントみたいになってきたっぽ(笑)。
KANAMI:もしかしたら憶えてないかもなって思ってたけど、実際そうだったんです(笑)。サビに入るメロディについて結構具体的に「こんな入り方にしたいから、変えていい?」と言われて、「いいよ」とは言ってみたものの、そうするとサビ前の雰囲気が変わってくるからどうしようかなと思って。そこで物語自体が転生モノというのもあるから、それに合うようなサンプルを入れようかなと試してみたりしたんですけど、その結果、新しい感じになったかなと思っていて。ちょっとした要望からメロディとかを変えることはもちろんあるんですけど、今回はしっかりした要望があったのでので、ちょっと驚きつつも、こういうメロディ展開はこれまでなかったしこれはこれで新鮮でいいよね……って会話をしてたんだよ(笑)。LINEの履歴、見てみて!(笑)
──ある意味、SAIKIさんからの提言によって原曲が転生したわけですね?
KANAMI:そうですね。それによって新しい感じが出せたので、良かったなって。だから、もっともっといろいろ言ってくれたら面白くなるんじゃないかな、と思いました。
──さきほど「Forbidden tale」ができてから生まれた曲だという発言がありましたが、この曲を作ったのは『Epic Narratives』の全曲が出揃った以降のことだったんですか?
AKANE(Dr):いえ、同時期ということになると思います。ドラムのレコーディングも同時進行だった記憶があります。
小鳩:まだアルバムの全曲が出揃ってはいなかったですっぽね。アルバムの曲作りの中盤に作ってた曲たちと同じ流れの中で作っていた感じだったと思いますっぽ。
──そういうことであれば、アルバムとこの曲に関連性があるのも当然のことでしょうね。この曲についてはあらかじめSAIKIさんの「よりストーリー性を感じる曲にしたいと思った」「楽器陣がテクニカルに走りすぎることなく、メロディを重視してどっしりとした構えで音を紡いでいる」という公式コメントが出ていますが、確かにその言葉どおりの楽曲だなと思わされます。
SAIKI:そのコメント、みんなに話を聞いてメンバー全員の言葉を私がまとめたものなんです。AKANEとMISAが「KANAMIからデモをもらってから、よりメロディを引き立たせるようにアレンジをしたよ」ということを強く言っていて、それを聞いて私も「なるほどね、確かにそんな会話もした気がするわね」と納得させられて。実際、本当にそういう曲になっていると思います。
──ええ、確かに。テクニカルさや疾走感は敢えて抑えられていて、どっしりとした感じがありますよね。皆さんそうした点を意識しながら各々のパートのアレンジに取り組んでいたわけですね?
MISA:私はそうです。この曲なら、そうすべきだろうと思いました。
AKANE:「Forbidden tale」の時もそうだったんですけど、メロディを引き立たせたい曲の場合は、どっしり行ったほうが映えるというのをあの曲を通じて改めて理解できていたところがあったんです。この曲の場合もメロを立たせるということが第一にあったので、ベースもどっしり来ていたし、ドラムもどっしり行こう、と。ただ、そんな感じでリズム隊としてはどっしりとした感じで進んでいきつつも、二番からは異世界に行ってしまうかのような展開になっていて。
──ええ。動きのあるベースラインも印象的です。もうひとつの歌メロというか、歌メロに対する回答のような感じになっていますよね?
MISA:そうですね。この曲でのベースは特にそういう感じになっていると思います。メロに合わせて動いていて。
AKANE:ドラムについても、むしろ淡々とビートを刻んでいたのが途中でガラッと変わって手数が多くなって、ほぼほぼフィルばかりで構成されている感じになっていて。そういう構成自体が結構、私的には新しいですね。8小節ほぼビートを刻まずにフィルで繋げていくというアプローチがBAND-MAIDの中ではかなりめずらしいし、こんなに長く遊び心のあるフレーズで繋いでいったのは初めてだったかもしれない。そこに自分でもすごく新鮮さを感じてます。
──後半にテンポダウンする箇所がありますけど、そこ以外は同じテンポでありながら演奏内容によってスピード感が違ってくる感じですよね。小鳩さんはこの曲に取り組むにあたってはどんなことを意識していましたか?
小鳩:KANAMIから曲が出てきて、当初それを聴いた時からすごくストーリー性の見える曲だなと思っていて。そこで小鳩としてはどういう歌い方でコーラスをやろうかとか、どんなハモりで変化を見せていこうかというのを考えましたっぽ。今回はSAIKIが歌詞を書いていて、しかも歌い方のイメージも含めた形で仮歌を入れてきたので、そういったSAIKIの希望により近付けていくことも意識しましたっぽ。つまり歌でもストーリー性を強調したかったということですっぽね。
──なるほど。「Zen」というタイトルは『全修。』の“全”からきているんですか?
SAIKI:そうですね。仮タイトルというか、デモ段階ですでに「Zen」というタイトルが付いていて。
KANAMI:そのタイトルをSAIKIが気に入ってくれて、『全修。』のチームの方にも「このタイトルはいいですね」って言っていただけました。
AKANE:「是非このタイトルのままで」ってね。
SAIKI:そう。だから「せっかくそこまで気に入っていただけてるのであれば……そうしましょうか?」ということになったんです(笑)。
──実際、いいタイトルだと思いますよ。何かしらのダブルミーニングなんじゃないかと思わせるようなところもあるし、外国の方たちにとって“zen”という単語は“禅”と繋がる日本語由来の言葉として、神秘的なものとして受け止められるんじゃないかとも思えますし。歌詞についてはやはり『全修。』の物語の内容を踏まえながら作っていったんですか?
SAIKI:そうですね、物語を全部見させていただいたうえで書いたんです。事前にコンテとかを見させていただけるとありがたいとお伝えしたところ、全話分届いたんで「いいんですか?」と思いつつ目を通させていただいて。ストーリーを伝えるというか、『全修。』が物語を通じて伝えようとしていることを歌詞でも伝えたいな、と思いながら書きました。サビの歌詞を変えずに同じ内容の繰り返しにしたのも、そこに伝えたいことが詰まっているからなんです。あとはやっぱり、主人公がアニメーターなので、“page”とか“pan up/pan down”とか、その世界の言葉をあちこちに使っています。それがフックになればいいな、と考えて。
──ええ、そうした言葉が耳を惹きます。そして素晴らしいなと思うのは、結果的に「ありそうでなかった曲」になっていることです。アニメ制作チーム側からの要望に応えつつ、自分たちにとっても新鮮なものを作れているわけで、まさに願ったり叶ったりという感じですよね。
KANAMI:タイアップならではの曲作りの面白さというのも感じました。今回の場合はアニメなんですけど、アニメーションの中で流れることをイメージしたり、その作品の世界観みたいなものを反映させようと思ったりしながら作ることになるからこそ、これまでになかった新しいものができるんだと思うんです。そこが、ただ単純にBAND-MAIDの新曲を作ろうとする時との違いで、むしろ「このアニメに沿った曲を、BAND-MAIDらしい形で作ってみよう」という考え方になるわけで、そういう意味では作り方の根本的なところがちょっと変わることになるし、それによって新しい何かが生まれるんです。しかも今回の場合、メロディを重視したものを作ろうという思いもありましたし、そのうえでなおかつバックサウンドはテクニカル過ぎず、だけども遊び心があるようなものにしたいというのがあったし、そうすることによってBAND-MAIDらしいものにできるんじゃないかとも考えていたんですね。そういう曲でこのアニメを盛り上げられたらいいなと思って作ったんですけど……ってなんか、発言にうまくオチつけられなくてすみません(一同笑)。
小鳩:そこでオチつける必要はないっぽ(笑)。
──ええ、オチは不要ですし、話はよくわかりました(笑)。要するにちょっとした曲作りの発端の違いが、斬新なものや新鮮なものに繋がるということですよね?
KANAMI:そのとおりです!
AKANE:綺麗にまとめていただいてありがたいです(笑)。
──BAND-MAIDのシングルにはタイアップの付くものが多いですけど、毎回のそういったことがスイッチの切り替え、発想の転換に繋がっているということ。それがすごくプラスに作用しているんだということがよくわかりました。
KANAMI:はい、まさに。ありがとうございます。
小鳩:この話をする時の、言い方のお手本をいただけましたっぽ(笑)。
SAIKI:毎回のアルバムの曲だとか、タイアップが伴わない曲の場合、まずはご主人様お嬢様に向けて作ってるというのがあるじゃないですか。タイアップの曲ももちろんそれは同じなんですけど、そこにアニメならアニメの制作チームの方たちやアニメを通して曲を聴いてくれる人にも喜んでもらえるものにしたいっていう動機がプラスされることになるんです。だから当然のように新しくなるのかな、とも思いますね。
──しかもそこで、バンドとして不本意なことを先方から求められるわけでもない。
SAIKI:そうなんですよ。本当に皆さん、こちらに対してもリスペクトをもって接してくださって「すみませんけどこういう感じで……」みたいに言ってくださるんです。こちらとしては「いえいえ、全然言ってくださって結構ですよ」みたいな(笑)。
──クリエイター同士の良好な関係が成立していますね(笑)。この曲はお給仕でも効力を発揮しそうですが、さっそく年明けのお給仕でも聴かせてもらえそうでしょうか?
SAIKI:そうですね。新年最初のお給仕は2月に入ってからですけど、『全修。』は1月からもう放送が始まっているので、やろうと思ってます。
小鳩:その話、今、初耳ですっぽ!(笑)
SAIKI:やるでしょ?
小鳩:やるのかなー、とは思ってたけどっぽ(笑)。
SAIKI:やるしかないでしょ!
──これで確定ですね! まさかこの場で結論が出るとは。お給仕でこの曲がどのような存在感を発揮することになるのかを楽しみにしています。ところで“全修”という言葉は最初にも触れたように「すべて修正する」という意味だそうですが、音楽作りにおいても同じようなことはあるはずですよね? いろいろアイディアを試していって、最後に全部直してしまう、というようなことが。
KANAMI:全修って言われたら、すごいショックだろうなって思います(笑)。
SAIKI:ショック受けてたもん、この主人公も。
小鳩:実際そういうシーンもあって、すごくその心境が私たちにもわかるっぽね。
SAIKI:全修とか言われたら、ヤバいよね。
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