【インタビュー】逹瑯(MUCC)、ソロ初ミニアルバム『MONOCHROME』に虹色のストーリー「赤橙黄緑青藍紫に向かって」

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2024年3月にカバーアルバム『Pandora Juke Vox』、4月にフルアルバム『COLORS』を連続リリースしてから約9ヶ月。逹瑯が、早くも新たなミニアルバム『MONOCHROME』を完成させた。MUCCとしても2024年に3度目のメジャーデビューを果たし、全国ツアーや主催イベント開催など盛りだくさんの活動を繰り広げてきたなか、ソロ活動もどんどん密度を高めている。

◆逹瑯 動画 / 画像

3rdアルバム『COLORS』のBARKSインタビューで「さらにもう一歩二歩次へ進んでいくために何が必要かわかってきた」と語っていたとおり、最新作『MONOCHROME』に収録されたのは、MUCCとソロ活動で培ってきた経験を素材として、新たな武器を錬成したような楽曲たち。ファンクにジャズ、ロカビリーといった多彩なジャンルに、もちろん直球のロックや情緒豊かなバラードも取り揃えた全7曲だ。

それら7曲が虹のようにそれぞれの色を発しているが、すべてが“逹瑯らしい”と感じるのは、むしろ“ソロだから”と肩肘を張らず、自らの想いや創作意欲と素直に向き合った結果だろう。最初はバンドでやっていないことに挑戦する場所だったソロ活動が、今や逹瑯濃度100%の世界になっていることが面白い。「足りないもの」から始まったという今作の制作について、じっくり語ってもらった。


   ◆   ◆   ◆

■熱量というより空気感かな
■1曲1曲カラーの強いものを


──フルアルバム『COLORS』発表から短期間で新たなミニアルバムが完成しましたね。資料には“『COLORS』の続編”とありますが、続きを作るイメージで制作を始めたんですか?

逹瑯:『COLORS』という満足のいくフルアルバムができたので。その熱量を持ったまま、『COLORS』の世界の続編、延長戦としてのミニアルバムを早いタイミングで出したかったんです。年内を目指しつつ、ちょっと間に合わなくてリリースは1月になりましたけど。

──『COLORS』のBARKSインタビューで、“今までがプロローグで、ここからやっと本当の第一章”という言い方されていましたけど、その気持ちで次に進んだ感じなのでしょうか?

逹瑯:あの時はまだ、具体的に見えてはいなかったけど探り探りやっていって、作るんだったら早いほうがいいなという感覚でしたね。『MONOCHROME』収録曲は全部『COLORS』以降に新しく作ったんですけど、手をつけたのは8月くらいだったかな。そこから、本格的にアルバムが見えてきたのがたぶん10月末くらい。

──MUCCのリリースやツアーもありましたし、相変わらずスケジュールがタイトですね。

逹瑯:突貫でしたね(笑)。MUCCが動いていない時期にソロツアーをやろうということで、2025年の日程を組んだから。ツアーのときに新しいアイテムが何もないのも寂しいなと思ったんですよ。

──MUCCと並行してのソロのやり方がわかってきた感覚もあるんですか?

逹瑯:いや、そうしようとするからダメなんだなってことが改めてわかったっすね(笑)。あと、8月のMUCCのツアーが終わった時点でちょっと羽根を伸ばしすぎちゃって。9月頃からもっと作業していればよかったけど、9月に練ってたら出てきていなかった曲もあるから、アルバム自体が違う感じになっていた気がします。まあ、逆にもっと早い段階でいい曲が出てきてたかもしれないし、それはわからないけど。


──結果的に、今までソロでやってきたことを踏まえて、さらに自由にやりたいことをやっている印象があります。どういう方向性で曲作りを進めたんですか?

逹瑯:『COLORS』のツアー(<The COLORS>)をやったことで、足りないピースが明確に見えてきたんですよね。ライブのノリや空気感を作っていく上でほしいピースが出てきたので、そこを埋めていくようなイメージで作っていきました。ソロのライブがいい感じになってきたからこそ、もっと良くしたくて。この7曲ではまだ埋まりきらないと思うけど、そのためにひとまず武器を増やしていこうというところですね。

──前回インタビュー時もライブを意識したという話がありましたけど、『COLORS』はいわゆるライブで盛り上がるバンド感やアグレッシヴな方向性だったので、また違う方向ですよね。

逹瑯:そうですね。熱量というより空気感かな。いろんな方向の空気感というか、ノリを作れる曲がほしくて、リズムのテーマを重視して作った曲が多いです。

──なるほど。1曲目の「CRIMSON」は4つ打ち基調、「焔」は和風スカファンク、「黄昏のエレジー」はジャズ風ビッグバンド、「Cat's Eye」はロカビリー、など、どれも特徴的なリズムですね。作り方としては、イメージやテーマを足立房文さんにオーダーして、相談しながら曲をかたちにして、歌詞を書いて、という順序は変わらず?

逹瑯:一緒ですね。それこそロカビリーの曲やりたいとか、レゲエやスカっぽいゆるい感じの横ノリの曲をやりたいとか、そういうオーダーでした。アルバム全体のイメージというより、ライブの幅を広げたかったから1曲1曲カラーの強いものを作っていこうと思って。アレンジも、統一感は気にせず曲の持ってる力を膨らませていく感じだった。もともと虹になぞらえて7曲にすることを決めていたので、いろんな方向のアレンジで7曲作っていくのは楽しかったです。

──それぞれ振り切ったアレンジですよね。「焔」や「黄昏のエレジー」のホーンは特に印象的でした。

逹瑯:「黄昏のエレジー」はジャズな曲やりたいということで足立に投げたら、最初はもっと派手なのが来て、ちょっと違うなってオーダーし直して仕上げていきました。結果的にビッグバンドに近くなったかな。この2曲のホーンは生がいいよねってことで、レコーディングでは生で吹いてもらったんですけど、やっぱり正解でしたね。すごくよかった。


──「Cat's Eye」はロカビリーですよね。

逹瑯:そうです。最初は「ロックンロールかな?」と言っていたんですけど、「ロックンロールよりロカビリーだな、それもほこり臭いザ・ロカビリーみたいな曲がいいな」って。ジャズもロカビリーも、ライブのなかでいいアクセントになるんですよ。

──これまでMUCCでいろいろな音楽性を表現してきたからこそ、そういう武器の使い方がわかってるところもありますよね。

逹瑯:まあ、MUCCしかやったことないから、好みとかインスピレーションのベースにはなっているんでしょうね。

──実際やりたいジャンルや音像に挑戦してみて、歌のレコーディングはスムーズにいきました?

逹瑯:毎回、前はできなかったことができるようになって、同時にまた一個違う課題が残って……という繰り返しですね。細かい話ですけど、歌の録り方をどうするか、マイク選びをどうするのか、とか。

──ソロでいろいろ試してみるようになって、発見があったりしたんですか?

逹瑯:そうですね。今までMUCCのレコーディングでは、どうすればこういう音で録れるんだろうっていうことをそんなに考えていなかったんですよ。スタジオに行ったらミヤさんのイメージに近づけるセッティングがされていて、そのマイクで歌ったら勝手に仕上がっていることが多かったから。ソロのほうはそうもいかないので、どうしていくかな~?っていうのをイチから勉強してる感じです。

──今までお任せしてきたぶん、面白さや新鮮さもあります?

逹瑯:いや〜、面白くはないっすね。機材とかレコーディングに面白さは感じられないから、“大変だな、面倒くせえな”って(笑)。みんなが機材とかにワクワクするテンションには、この先もなれないかもしれない。そこに対する好奇心はあんまり湧かないので、何かのボタン一個で勝手に最適のセッティングになったらいいのにな~と思うくらいです(笑)。

──とはいえ、自分の曲に合った自分の声を録るためには探っていかなきゃいけないと。

逹瑯:曲のジャンルが広がると、ワンパターンの録り方ではダメなんですよ。パンクバンドみたいにひとつのジャンルの音を極めてるんだったら、同じ機材の同じマイクでいいんだろうけど、録っているうちに“これじゃないんだよな” “こうじゃないんだよな”っていうのが出てくる。でも、どうやったら理想に近づけるかがわからないし、そこを突き詰めたいわけでもないから面倒くさい。そのあたりを試行錯誤して、作って、“やった、できた!”っていう喜びを楽しめないから、全然ミュージシャンっぽくないと思いますね。

──逹瑯さん的には、“絶対これがいい”というこだわりよりも、“こうじゃないんだよな”が一番の動機なんですね。作る曲に対しても“こういう曲が足りない”という発想ですし。

逹瑯:そうそう。いつも“こうじゃない”はあるんですけど、“じゃあどうすればいいのか”っていう答えがわかんない。だから手探りなんです。

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