【インタビュー】DOBERMAN INFINITYが語る「ALL ROUND HIP HOP」の現在地。最新アルバム『D.X』にみる「異質であること」の強み

ポスト

LDH所属のヒップホップグループ・DOBERMAN INFINITYが1月15日に5枚目のフルアルバム『D.X』をリリースする。活動10周年の記念碑的作品では、種々様々なビートの上で等身大かつ赤裸々なリリックが綴られている。

◆撮り下ろし写真

2023年6月にリリースされたEP『milestone』に続き、グループの前身であるDOBERMAN INC時代からの盟友・BACHLOGICも今作に参加。今や当代屈指のビートメイカーとして活躍する同氏が、「1st SONG」「踊れピエロ」「ラストフォーエバー」など珠玉のキラーチューンを提供している。

また、蔦谷好位置プロデュースの「アンセム」、メンバーのSWAYが初めて手掛けた「マンマミーア!」、トレンドをDOBERMAN INFINITY流に解釈した「100%」など、ほかの収録楽曲も粒ぞろいだ。TVアニメ『ありふれた職業で世界最強 season 3』のエンディングテーマ「The other story」は、各サブスクリプションサービスで印象的なチャートアクションを記録している。

今回のインタビューではアルバムの中心に話を聞いたが、一連のストーリーからは彼らと彼らが標榜する「ALL ROUND HIP HOP」の現在地が見えてきた。

    ◆   ◆   ◆

◾︎揺ぎ無い軸みたいなものができてきた

──2023年にリリースされた『milestone』から引き続き、本作『D.X』にもBACHLOGICが関わっていますが、EPの段階でこの構想はすでに決まっていたのでしょうか?

P-CHO:シングルの3か月連続リリースは決まってましたね。「踊れピエロ」に始まり、「ラストフォーエバー」、「1st SONG」と続きました。『milestone』から音楽的な繋がりはそれほど意識してなくて、重要なのはBACHLOGICと一緒に曲を作ることでしたね。DOBERMAN INCのとき一緒にやってた彼と今タッグを組んだら、面白いことができるんじゃないかって。2009年に「SECRET BASE」って曲を作って以来なので、結構久しぶりです。実際サウンドもヤバいし、自分たちの根底にあるものを引き出されましたね。


──「踊れピエロ」は個人的にも本当に好きで、客観的に聴いても年間ベスト級のクオリティがあると感じます。ギターのフレーズよりもベースの鳴り方に驚きました。どこか2000年代のUKロック的といいますか。

KUBO-C:年間ベストとはまたデカい。あるな、これは。

P-CHO:ありがとうございます! BACHLOGICとの一連のリリースに関しては自分が窓口になっていたんですが、彼はすごい数のトラックをストックとして持っているプロデューサーで。彼がそれらを「全部送るわ」って聴かせてくれた中のひとつに、「踊れピエロ」がありました。僕らで試聴会をやってこの音源を聴いたときに、「これは今までなかったよね!」って手応えはありましたね。そのときもらったトラックリストの中では、自分らにとっても一番光って感じられました。

SWAY:でもCHOさんにフックを歌ってもらうのは苦労しましたよ。CHOさんがその部分のメロディーを考えてくださったんですけど、どうやら本人はその部分をみんなで歌うつもりだったらしいんです。

P-CHO:もしくはSWAYね。

SWAY:そう。で、「いやこれCHOさんひとりのほうがいいですよ」と提案したら、最初は冗談だと思われました(笑)。「いやいやいや…」みたいな。

KUBO-C:なかなか折れへんかったよな。言い方悪いけどしつこかった(笑)。

GS:一応全員で歌ったバージョンも録ったんですよ。でもそれぞれ聴き比べた結果、やっぱり「踊れピエロ」はCHOちゃんひとりのほうが内容は伝わりやすい。

P-CHO:みんながそう言ってくれたので、最終的には僕ひとりでフックを歌いました。



──リリックの塩梅も美しいですよね。GSさんとP-CHOさんがリアリスティックな目線で現実を切り取って、KAZUKIさんとKUBO-Cさんが推進力のある言葉で引っ張り、SWAYさんがその中間にいるというか。

P-CHO:リリックに関しては自由よね?

SWAY:ある程度テーマを決めて……。

P-CHO:それぞれ持ち寄りですね。

GS:内容について何か示し合わせたわけではなく、順番も特に意識してなかったです。だからご指摘いただいたバランス感は、結果的にそうなった認識を持っていますね。

──リリックに関しては「1st SONG」にも言えることですが、体重が乗ったパンチ力があると感じます。KUBO-Cさんのフレーズに顕著でメインストリームと向き合いながらオルタナティブを目指すスタンスはDOBERMAN INFINITYの凄みにさえなっていると思います。

GS:己の道を行くっていうバースですよね。

KUBO-C:自然と出てきた言葉ではあるんです。みんなと普段からコミュニケーションをとっていると、自分のリリックはああいった形になるんですよね。共通認識として“やっぱり大事なのってそこだよね”という実感が持てたというか。

GS:やっぱり10年前とは自分たちのマインドも変わってきてるんですよね。DOBERMAN INFINITYを結成した当初って、良くも悪くも何かに追われてたんですよ。あの頃は自分たちが何をやりたいかよりも、どう見られたいのかが重要でした。もちろんそこに自分たちの意思もありましたけど、今とは違った種類のものでしたね。それゆえに当時はEDM的な瞬発力や勢いが必要だったんだと思います。最近はそういったものが積み重なった結果として、揺ぎ無い軸みたいなものができてきたんじゃないかな。周りと比べるよりも“自分たちは自分たちなんだ”って意識がより強くなっている気がします。



──本当にジャンルに対してフレキシブルですよね。これまでもその多様性はDOBERMAN INFINITYの特徴でしたが、今作は以前と比較しても随一だと感じます。「OH YEAH!!」のリファレンスはトロピカルハウスですか?

SWAY:いや、自分たちとしてはシンプルに夏っぽいイメージの曲を作りたかっただけで、トロピカルハウスは意図してなかったです。そもそもジャンルではあまり考えてなかったですね。

P-CHO:トラックメイカーのNAOtheLAIZAが僕たちに合う夏っぽい曲をイメージして仕上げてくれたという感じですね。

SWAY:まぁでもトロピカルハウスと言われれば確かに…。

P-CHO:「100%」なんかはジャンルを意識してたよね。ジャージークラブはいつかやりたいジャンルのひとつだったので、このタイミングで曲にしておこうと。

SWAY:この曲は結構“出会い”でしたよね。Lucas Valentineという、毎回僕らがレコーディングのときにお世話になっているエンジニアがこの曲を手掛けてくれたんです。会う頻度もメンバーの次ぐらいに多い人で、ふとした時に「こういうのありますよ」みたいな感じでストックしている曲を聴かせてくれるんですよ。そういう出会いのなかにこの曲はありました。

P-CHO:「100%」は俺らを目がけて作ってくれて、プレゼンもしてくれたんです。しかもそれがやりたかったジャージークラブだったので、もう是非ということで。

GS:内容はふざけ倒してますけどね(笑)。「それなそれな…」って。でもそういうのが僕たちの抜け感だったりグループの遊び心になってると思いますし、そういう意味でもやって良かったです。


──ジャージークラブは「Take A Ticket」にも採用されていますよね。

P-CHO:そうですね。この曲はRIKEというプロデューサーが作ってくれたんですけど、こちらからジャージークラブをオーダーしたわけではなくて。「100%」とは偶然の一致ですね。

GS:「Take A Ticket」はもっとセクションが複雑に分かれてたんですよ。イントロのロックっぽい部分が本来はアウトロにあったり、パズルを組み立てるように出来上がった曲なんです。

P-CHO:ジャージークラブは遊びやすいスピード感がありますよね。このジャンルの中でも今はジャージードリルがあったりと細分化されてますけど、今回やってみてその面白さが分かった気がします。自分たちもライブでアゲやすそうだなっていう、面白い感覚を持ってます。



◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報