【インタビュー】ACIDMAN、ドラマ『ゴールデンカムイ』を締め括る新曲が呼ぶ奇跡「あの日流した君の涙は、いつか美しい未来へ」

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ACIDMANが2025年1月8日、WOWOW連続ドラマW『ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-』最終話エンディングテーマにして、新曲「sonet」収録シングルCDをリリースした。映画『ゴールデンカムイ』主題歌「輝けるもの」に続いて、その続編ドラマ最終話をACIDMANの「sonet」が締め括ったかたちだ。

◆ACIDMAN 画像 / 動画

「あの日の君の涙はいつか雨になり、きっとどこかの花を咲かす。杉元とアシㇼパさん達の旅に小さな花を添える事が出来ます様に」とは作詞作曲を手掛けた大木伸夫(Vo, G)のコメントだ。“バタフライエフェクト”をテーマにした「sonet」は、『ゴールデンカムイ』の舞台・北海道の雄大な自然が目に浮かぶミドルテンポのロックバラード。“小さな変化が大きな影響を及ぼす現象=バタフライエフェクト”を想起させるリリックは、果てない旅の中に壮大な時の流れを感じさせ、映画『ゴールデンカムイ』主題歌「輝けるもの」との結びつきを示唆する“輝けるまで”という一節は、ある意味では連作をイメージさせて壮麗この上ない。ちなみに“ソネット”とはイタリア語の“小さな歌”に由来し、シェイクスピアの連作『ソネット集』のタイトルにも用いられたワードだ。新曲「sonet」の歌詞には“だからどんなに小さなこの歌も いつか夜空を駆ける風になるだろう”という一節もある。

サウンドは無駄を削ぎ落として生々しく、一方で四家卯大ストリングスによる弦楽と別所和洋によるピアノが大きなスケールを描く。美しく強いメロディを軸としてドラマティックに高揚していくアレンジが圧巻だ。ドラマシリーズ第1弾のフィナーレを飾ると同時に、生命の息吹やこれからも続くストーリーを感じさせて爽快極まりない。そのジャケット写真は北海道の大地にて、水平線から上がる朝日を大木伸夫自らのポラロイドカメラSX-70で撮影したもの。加えて、ミュージックビデオは映画『ゴールデンカムイ』やドラマ第1話と最終話の久保茂昭監督を迎え、全編にわたって『ゴールデンカムイ』の舞台である北海道にて撮影されたものだ。ドラマ最終話のエンディングと同じ場所でバンド演奏シーンを収録するなど、親和性の高い映像となった。

CD収録内容は表題曲「sonet」はじめ、最新ツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “ゴールデンセットリスト”>よりメンバー自ら厳選した3曲「輝けるもの」(初回限定盤)、「銀河の街」(通常盤)、「ワンダーランド」(通常盤)を収録。初回限定盤シングルにはLINE CUBE SHIBUYAのライブ映像全18曲がBlu-rayに収録されるなど豪華仕様だ。そしてACIDMANは同シングルCDリリースを記念して2025年1月11日、Zepp Hanedaにて<「sonet」発売記念ワンマンライブ&壇上交流会>を開催する。「sonet」のステージ初披露に加え、「sonet」シングルCD購入者全員を対象に“ライブ終了後、機材を残した壇上にてACIDMANのメンバー3人と握手が出来る”貴重な機会となる。話題性に富んだシングルCD「sonet」について、大木伸夫にじっくりと語ってもらった。


   ◆   ◆   ◆

■これからもこうやっていきますよ
■というACIDMANの意思表示の曲


──映画『ゴールデンカムイ』主題歌「輝けるもの」に続き、ニューシングル「sonet」は映画の続編となる『連続ドラマW ゴールデンカムイ−北海道刺青囚人争奪編−』最終話のエンディングテーマとなりました。今回の「sonet」はどんな感じで制作が進んでいったのですか。

大木:前回の映画版主題歌「輝けるもの」の進め方とは違いましたね。映画版ではプロデューサーやスタッフの方々と事前に打ち合わせをさせてもらったりもしたんですけど、今回ドラマ版で、しかも各話ごとに違うアーティストがテーマ曲を担当するということで、そんなに細かな打ち合わせはなかったんです。それで、元々あたためていた楽曲の中に、”こういう楽曲だったら合うんじゃないかな”と思っていたものがあって。それを聴いてもらったら気に入っていただけたので。そこからは『ゴールデンカムイ』に寄せて、少し描写を変えて作ったという感じでしたね。

──「輝けるもの」のときは、具体的に「ACIDMANのこういう曲で」というイメージやリファレンスもあって、それをもとに作り上げていった感じでしたね。

大木:そうですね。僕自身も映画の話をいただいだときから、“ゼロから作るぞ”と思っていました。ドラマ版の今回は、自分の引き出しの中にあったものがすごくハマるなと思って。これは勝手な僕のなかでのストーリーなんですけど──最初に映画『ゴールデンカムイ』の主題歌の話をいただいて、どうやらその後、ドラマ版もスタートするという話も聞いていたんですね。その「ドラマ最終話、もしくは第1話の主題歌もACIDMANで」という話も聞こえてきていたんですよ。そうなったら、“じゃあどんな曲がいいだろう”と。“「輝けるもの」みたいな激しい楽曲”っていうアイデアもあったんですけど、やっぱりそれじゃ面白くないし。僕たちにとっても、『ゴールデンカムイ』の世界観においても、いろんな幅を見せられたほうがいいんじゃないかなと思って、ぴったりだったのが「sonet」でした。

──“この曲が合うだろうな”というのは、どういうところが?

大木:『ゴールデンカムイ』は面白さと、激しいバトルアクションもあるけど、やっぱり最後にはジーンとくる人間ドラマであり群像劇だと思うんです。この「sonet」で描く切なさみたいなものが、作品のストーリーの根底にある悲しさだったり、でもそこからそれぞれの次の旅が始まっていくことも感じさせて、“エンディングっぽいな、合うな”と思っていたんです。


──「輝けるもの」でのアグレッシヴなバンドサウンドもACIDMANらしい曲でしたが、打って変わってストリングスなどを交えた「sonet」の美しく壮大なバラードもまた、“これぞACIDMAN”という曲ですね。

大木:このタイミングでこういう曲を出したいという意思表示は、しっかりとありましたね。こういうミディアムの曲が好きだから、これからも作っていきたい。周りのみんながどんなに流行りものを聴いていても、“俺は(私は)、やっぱり心に沁みる系が好きなんだよな”って人が、堂々と好きだと言ってくれるような生き様を、僕らが見せなきゃいけないなと思っています。だから変に凝ったり、変に流行りに寄せたり、聴きやすくしたりとかも一切やめて。“これからもACIDMANはこうやっていきますよ”っていう意思表示の曲だと思います。

──元々の曲自体はいつ頃書いたものだったんですか?

大木:これまた毎回なんですけど、全然覚えてないんですよね。でも数年前からあって、メンバーとかにもまだ聴かせていないレベルの原曲とサビのメロディと言葉はありました。で、そのときからこれは“バタフライエフェクト”の曲にしようと思っていたんです。

──そのバタフライエフェクトのようなテーマ性は、これまでの作品でも扱ってきていると思いますが、改めて書くきっかけのようなものはあったんですか?

大木:特にきっかけがあったというより、僕の中では“基本のキ”みたいな考え方で。ただ意外と知らない人が多いのかなとも思っているんです。バタフライエフェクトは、難しくいうとカオス理論というものになるんですけど。すべての現象を数学的に落とし込むと、必ず複雑化していく、つまりは何がどうなるかわからないというのが、世界の真理のひとつであるということで。そのたとえ話が“バタフライエフェクト”なんです。

──はい。ささやかな営みが、連鎖し、世界を動かしていくような大きなものになるという。

大木:蝶の羽ばたきが地球の裏側で竜巻を起こすかもしれないというのは、いい喩えだなと思っていたんですよね。でも、この言い方だとちょっと怖いから(笑)。ポジティヴなもので、みんなが想像できるものはなんだろう?というのが、サビの“あの日 君が流したその涙は 遠い国に降り注ぐ雨になるだろう”で。どんな涙も汗も、水分は蒸発して大気に変わり、雲に変わり、地球上を流れてどこかに雨を降らせるというのは現実で。僕らの体も、昔どこかの誰かが亡くなって燃やされて、有機物としてこの地上にまた降り注いで、それを植物が食べて、動物が食べて、それをご先祖様が食べて、それが僕になってという輪廻転生を繰り返している。それをさらに俯瞰してみると、この宇宙もすべてそういう大きなループのなかに生きているんだよっていうことは、ずっと描いてきたテーマではある。あの日流した君の涙には、必ず意味がある。いつか美しい未来につながる。それをよりわかりやすく伝えたいなというのが今回の感じですね。


──まさに物理や数学の世界を文学で解いていくのはACIDMANの世界というか十八番で。それがより叙情的で歌心のある曲になっていると感じました。2番からは、メロディやアレンジもより動きのあるものになって、情景が広がっていく歌が印象的です。

大木:2番は特に、『ゴールデンカムイ』に捧げている言葉が多いですね……でも実際に『連続ドラマW ゴールデンカムイ−北海道刺青囚人争奪編−』最終話で使われたのは1番なんです(笑)。

──ははは!たしかに。

大木:これはドラマ側は全然悪くないんですよ、「1番がドラマで流れます」って伝わっていたんだけど、僕がすっかりそれを忘れていて、フルで使われると思っていたので。個人的には“やっちまった!”と思いましたけどね(笑)。なので、ドラマを観て後々に曲を聴いた方が、“ここがそうだな”と掘り返していただけたら嬉しいです。

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