【インタビュー】ZIGZO、髙野哲×岡本竜治×吉田トオルが語る7年ぶりのアルバム「作るんだったらド派手なものに」
ZIGZOが6月20日、約7年ぶりのオリジナルフルアルバムをリリースする。2020年の緊急事態宣言下においても、止まることなく動き続けていた彼らは、過去曲のリテイクシリーズを毎月リリース。全12曲のリテイクからは時代を超えて力強く響くZIGZO流ロックの普遍的魅力を実感するとともに、個性的な4人に吉田トオル(Key)が加わった現在のZIGZOグルーヴを味わうこともできた。同時に彼ら自身にとっても、5人でのリアレンジやコンスタントなレコーディングで得た刺激があったという。そして2021年、遂にリリースされるオリジナルフルアルバムが『across the horizon』だ。
◆ZIGZO 画像 / 動画
“2021年6月20日=21620=ZIGZO”の日にドロップされる今作は、7年という月日を感じさせないほど、これまでのZIGZOと地続きでありながら、今の5人だからできる音楽的遊び心をふんだんに盛り込んだ1枚だ。変わらずヤンチャにバンドを楽しんでいるようなサウンドと、世の中がどんな状況であれ前に進んでいく意志に満ちた言葉。さらに、経験を重ねたからこそ素直に描くことができた希望。普遍的に愛されるに違いない傑作である。
髙野哲(Vo, G)、岡本竜治(G)、吉田トオル(Key)といった『across the horizon』の作曲クレジットに名を連ねるメンバーに話を訊いた今回のインタビューでは、ほとんどの楽曲がバンドで音を合わせながら制作されたという事実に加え、作曲段階から吉田トオルが参加したことが、アルバムに新たな息吹をもたらしたことが浮き彫りとなった。そのレコーディング裏話からツアーへの想いまで、3人にじっくり語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。なお、後日、櫻澤泰徳+大西啓之+吉田トオルのインタビューも公開する予定だ。
◆ ◆ ◆
■5人でいることが必然的な空気感
■そりゃドーンと派手にいくでしょ
──アルバムリリースの発表自体は2019年頃から予告されてましたし、ちょうど1年前の2020年6月20日に正式発表しましたね。
髙野:新曲は何曲かは出してたけど、「ぼちぼちアルバムだよね」って話になって。“ちょっと待てよ、6月20日って、その昔ファンの方々が「21620=ZIGZOって読める」って言ってくれてたな“と思い出したんですよ。それで、2019年のライブ会場で先に告知しちゃったんですよね。
岡本:新曲が完成しているわけでもなければ、アルバムの構想すらない状態でね。「曲ができたからアルバム作ろうぜ」じゃなくて、「アルバムをこの日にリリースするから、逆算してこのくらいから音作りを始めればいい」って。そういうメンバーがZIGZOには集まっております(笑)。
髙野:期日がないと動かないというか、8月31日まで宿題をやらない小学生みたいな(笑)。
──ということは、結局、曲作りは最近ですか?
岡本:今年に入ってからですね。で、いちばん最初に、哲(高野哲/Vo, G)のほうから「アルバムを作るんだったらド派手なものにしたい」ってキーワードが出てきてたよね。
髙野:そもそも今回は、曲作りの最初の段階から吉田トオルと5人でやりたいと思っていたんですよ。トオルはZIGZOのデビュー前に曲作りを手伝ってくれていたんですけど、改めて20周年のツアーを一緒に回った中で、5人でいることがこのバンドにとって必然的な空気感があって。十数本のツアーの中でトオルがいる日といない日があったんだけど……MUCCに取られたりとかね(笑)。基本二股野郎だったんで(笑)。
吉田:ははははは! なんなら三股とか四股だった(笑)。
▲髙野哲 (Vo, G) |
岡本:ある程度曲が仕上がってから、「オルガンが聞こえてくるからトオルちゃんに入れてもらおう」みたいな参加の仕方はこれまでもずっとあったけど。曲作りの段階からトオルが参加してっていうのは、『MONSTER MUSIC』(1stアルバム/1999年10月発表)以来ですね。さらに、ZIGZOというバンド名すらまだついてない最初期は、トオルも参加して、スタジオにこもってみんなで楽器演奏して楽しむみたいな、そういう状況だった。
吉田:で、大半は飲んでたよね。
髙野:そうだね。飲んでたし、ジャムとかセッションなんつってたけど、そんなカッコいいものじゃなかった(笑)。20代の頃って、曲を作っててもワンコードで始まったら、そのワンコードから抜けられないから。
吉田:そうそう。広がらないもんね。
髙野:でも今は、もっと展開させられるような技をこの20年できっと得てるよなって。音楽的にみんな大人になってるだろうなっていうことも漠然と想像したら、派手な方向に進んでいくイメージになって。あとは、俺が個人的にトオルのイベントに参加して、お客さんの前で即興で曲作りするみたいなことを定期的にやったんですよ。そこで、キーボーディストとかピアニストとしてのトオルの丸裸な部分を初めて知って。それまでは、バンドの中心メンバーではなくサポートポジションだったでしょ。でもピアノって、ドラムからベース、ギター、歌みたいな部分まで、10本の指ですべて表現できてしまうわけですよ。だから、プロデューサーとして、いちばんわかりやすく音楽を整えてくれる。当時からそうだったのに……“吉田トオルの無駄遣い”をしてたってことに最近気づいた(笑)。今までごめんなさいっていう。
岡本:はははは! 20年間ね。
吉田:いやいや、とんでもない(笑)。個人的なことを言えば、ZIGZOは4人で、俺はそのサポートっていう意識で昔はやってたんです。でも、今回「昔みたいに5人でやりたいんだ」って言われた時に、“考えたら当時は結構、俺がフレーズとかアレンジ作ったりしてたな”ってことを思い出したり。今回は今年1月にプリプロに入ったんですけど、アイデア出しから参加できた感じがあります。
岡本:メンバーとサポートメンバーっていう一線みたいなものは、そこに一切なかった。
吉田:すごく楽しかったんですよ。プリプロが終わると毎回、「いやー、今日楽しかった」と言ってたくらい。
▲5thアルバム『across the horizon』 |
岡本:どうなんだろうなあ。このコロナ禍がまったくなかった状態で出来上がったアルバムと、今出来上がってるアルバムとのパラドックス的な差を言うとするならば……まったくわからないですね。あんまり意識したことはなかったかな。
吉田:俺もないかも。
髙野:俺はありました。歌詞は時代のカウンターだと思っているから、絶対影響が出てこないとダメなんですよ。それと今回は、メロディの作り方として、泣きメロを作りたくなかった。そこはすごく意識しましたね。泣きメロっぽいのって、得意と言ったらヘンだけど、わりと好きだから。特にZIGZOは、中心のいちばん深い“ヘソ”のようところに届かせるように、毎回ライブを作っていくんですよ。ヘソに潜り込んで、みなさんの心をグオーッとしてから、グイーッてまた上げていくように。
岡本:グオーとかグイーとか言ってるけど、伝わるかな(笑)。
髙野:はははは。そういうのがアルバムの中にもちゃんとあったほうが、自分たちのフォーマットとしてのライブが作りやすいのはわかってたんですね。でも、あえてそれをしたくなかった。とにかくバラードは要らないと思ってました。収録曲の「Blue」も、バラードっぽいサビのメロディを一度思い付いたんだけど、“これは要らない!”と思ってメロディを変えたり。というのも、歌詞は対コロナとかアフターコロナとか、そういうものが絶対に含まれると思っていたから。であれば曲調は、なるべく真逆を意識しておかないと、何年か経って、たぶんその曲をやらなくなるってことが起こり得るだろうなと思ったんです。
──と言いますと?
髙野:こういう特殊な時期に書いたものっていうのは……たとえば3.11の時に、それを意識して書いた曲とかは、後々歌いづらくなってしまった部分もすごくあるんですよ。逆に、20年前のアルバムって、瞬間的にイヤになった時期もあったんですけど、今やると楽しかったりするんです。なんにも考えずに曲を作ってたから。だから、とにかく5人でバーっとやって「演奏楽しいね!」っていうほうを優先して作っていけば、いつの時代でもやり続けることができるだろうと思って、それは意識しましたね。
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