【インタビュー】yutori、新曲「純粋無垢」が意図したガレージロックの痛烈な強度「やりすぎなんじゃないか?ってくらい歪んでる」
平均年齢21歳の4人組バンドyutoriは2024年、シングル4曲に加え、3rdミニアルバム『Luv』をリリースしてきた。精力的とも言えるリリースからは、対バンツアーやワンマンツアーも行いながら、彼らが楽曲制作にも意欲的に取り組んできたことが窺えるが、中でも12月18日に配信した最新シングル「純粋無垢」はサウンドメイキングおよびバンドアンサンブルが新境地を印象づけるという意味で、ひときわ鮮烈な印象を残すものとなっている。
◆yutori 画像 / 動画
yutori流のガレージロックを目指したという「純粋無垢」がどんなふうに生まれたのか、メンバー4人に話を聞いてみたところ、バンドは大きな転機を迎えようとしていることが伝わってきた。前述したワンマンツアーで1,300人規模のSpotify O-EASTをソールドアウトさせるなど、ライブの動員を着実に伸ばしてきた中でメンバー達の意識は確実に変わり始めたようだ。その点、「純粋無垢」は2024年の活動を締めくくるものではなくて、新年の始まりだけにとどまらない新たなスタートをバンドのキャリアに刻み込むものなのだろう。
「純粋無垢」を聴きながら、メンバー達の発言に耳を傾ければ、yutoriの今後が楽しみになることはうけ合いだ。
◆ ◆ ◆
■2024年はいろいろ試して出したい曲も出したから
■このタイミングで一度忘れかけていた初期衝動を
──2024年はyutoriにとって、どんな1年でしたか?
佐藤古都子(Vo, G):今後に向けて、yutoriというバンドをどう進めていくか、ということを楽曲面も含め、いろいろとみんなで話し合いながら進めていった準備期間だったのかなと思います。
内田郁也(G, Cho):わりと試行錯誤もしましたね。2025年に向けてデモを作ったり、ワンマンツアーも “自分たちは何を伝えたいのか”ということをしっかり話し合って決めたりとかして。
佐藤:ツアーに限らず、今までと同じようなライブをしていてはお客さんに届けたいものもしっかり届かない、と思ってた。
▲佐藤古都子(Vo, G)
──2024年は、今回の「純粋無垢」をはじめ配信シングルを4曲リリースしているし、5月には3rdミニアルバム『Luv』もリリースしているし、「準備期間だった」と言いながら、リリースにも積極的に取り組んでいたという印象がありましたが。
浦山蓮(Dr, Cho):『Luv』は、“この先もこういう曲を出していきたいね”っていう曲を詰め込んだんですよ。
内田:たとえば、“この先もっとダンスミュージックっぽいものを出したいから、このタイミングで、そういうテイストが入った曲を一発出しておこう”みたいな。動きやすくするための布石というところもあって。
浦山:おのおのがずっとやりたかった曲を作ったんですけど、“この先、こういう曲も出したいよね”っていう曲がいっぱいあるんです。ただ、それを急に出すと、「変わった」とか「yutoriっぽくなくなっちゃった」みたいな声って絶対上がると思うので、それは自分たちも避けたい。だったら実験的に、このタイミングでこういう曲を出してみて、ツアーでお客さんの反応を見てみようって考えたんですけど、“受け入れてもらえた”とか“このタイミングじゃなかった”とか、どっちの反応もすごく楽しくて。
──つまり準備しながら、それを早速、楽曲に反映させていったと。
内田:そうです。だから、楽しく準備ができたというか、僕ら自身楽しみながらやってたから、“準備するぞ”って気持ちでは全然なかったというか。
豊田太一(B):でも、やりながら、それを“2025年に爆発させるぞ”みたいな気持ちはありました。
▲内田郁也(G, Cho)
──「おのおのがずっとやりたかった曲を作った」という話が出ましたけど、それはおのおののやりたいことを曲に反映させても、yutoriの曲として完成させられるようになったからこそ、このタイミングだったんですか?
浦山:そうですね。やりたいことはそれぞれにいろいろあったと思うんですけど、これまではそれをやるには力量が足りなかったっていうのはあると思います。「こういう曲やりたいよね」って話が出て、「じゃあ作ってみよう」ってなっても、それに対するインプットが全員あまりにも少なかったので、一昨年ぐらいまでは何もできなかったですね。
内田:それがようやくできたというか、やりたかったことの答え合わせがしっかりできた気がします。
──力量が上がったのは、自然な成長だったのか、それとも力量を上げるためにそれぞれに何かしらの努力をしたのか。どちらだったんでしょうか?
内田:“こういう曲をやりたい”となったら、それに対してどうアプローチしていくのかってところで、メンバーそれぞれに練習するんですけど、それよりもやっぱり、そう思う気持ちが大きかったんだと思います。たとえば僕の場合、ライブを見たり、曲を聴いたりして、衝撃を受けて、“自分たちでもこういう曲をやりたい”と思うことが多いので。
浦山:そうだね。衝撃とか衝動が大きいですね。
佐藤:その意味ではライブの影響が大きいかもしれないです。やっぱりライブでしか得られないものってあると思っていて。対バン相手さんのライブを見て、「こういう曲をやりたいね」とか「ああいういう曲間の繋ぎ、めっちゃ良くない? yutoriでもやろうよ」とか、「こういうMCいいな」とかみたいなところをそれぞれに吸収して、楽屋とかライブからの帰りの車とかで話をして、その後の曲作りやライブに反映させて、みたいなことはけっこうやったかもしれないです。
▲豊田太一(B)
──ここ最近の衝撃を、参考までにそれぞれ挙げていただけないでしょうか?
浦山:自分は、なとりさんを知った時の衝撃がすごかったです。どこか懐かしいメロディーも含め、ポップスとしてすごく完成されていると思いました。
内田:2024年6月にブルエン(BLUE ENCOUNT)さんとちょっと小さめの箱で対バンさせてもらったんですけど、かなり衝撃を受けました。“たぶん自分はこういうことをしたいんだな”というところもちょっとありつつ。ブルエンさんってサウンドがけっこう歪んでいるんですけど、その影響が今回の「純粋無垢」にもけっこう反映されてますね。
佐藤:私は二つあって。yutoriとして、初めてツーマンツアーをやらせてもらったとき、ヒトリエさんからすごい衝撃を食らってしまって。“私がやりたいのは、こういうことだ”みたいなことを思って、それからMCも含め、けっこうステージ上のパフォーマンスは意識している時はありました。そのご縁もあって、「ヒメイドディストーション」という曲でシノダ(ヒトリエ / G, Vo)さんに編曲で加わっていただいたんですよ。レコーディングにも立ち会っていただいたんですけど、本当に、いい兄貴分というか、yutoriとして相談に乗ってもらうことも多いんです。
内田:2024年はちょっと暗めというか、ダークな雰囲気の曲も出したんですけど、ヒトリエさんみたいな曲をやりたいと思ってたので、全員がそういう曲のお手本として参考にしたと思います。
──佐藤さんは二つあるとおっしゃっていましたが。
佐藤:椎名林檎さんが昔から好きなんですけど、この間、ツアー(<(生)林檎博’24 -景気の回復->)をされていて。チケットが取れて観に行ったら、ライブというより芸術作品を見てる感じだったんですね。この1年間ずっと自分の中で、“フロントに立つものとして何かが足りない”と思いながら、それが何なのかがわからなくてモヤモヤしてたんですけど、林檎さんのライブを観た時に、“自分に足りないのはこれだ。見せる力、伝える力が自分の中で足りなかったんだ”って気づいて、そこはすごく衝撃を受けました。
──豊田さんは?
豊田:僕はCLAN QUEEN、Chevon、muqueという3バンドに衝撃を受けました。同世代なんですけど、最近すごく話題になってきた中で、何がすごいんだろうって考えてみたとき、それぞれに芯があると思って。同時に“僕らに今足りていないのは、それだよな。一本芯と言えるものがもうちょっとほしい”となって。さっき「ワンマンツアーで何を伝えたいかを改めて考えた」という話が出ましたけど、<yutori ONEMAN TOUR 2024 Luv yourself>ってツアータイトルは僕が提案したんです。“自分たちの芯って何だろう”って改めて考えたとき、(浦山)蓮さんが作る曲や歌詞とか、聴き手に寄り添うような歌詞を歌う(佐藤)古都子さんの表現力とかが、僕らの強みだと思っているから、お客さん一人一人にフォーカスして、“yutoriのライブを見ている間だけは自分を愛して欲しい、そしてそんなあなたを僕らも愛するよ”ってコンセプトというか芯を作ろうと思って、<Luv yourself>ってツアータイトルを考えたんです。それはさっき言った3バンドを見たからこそだと思います。そういう意味で、衝撃を受けたというか、その3バンドにはけっこう助けてもらったという気持ちもあります。
▲浦山蓮(Dr, Cho)
──なるほど。今回の「純粋無垢」に繋がるお話もけっこう出てきたと思うんですけど、かなり攻めた作品だった『Luv』から、「白い薔薇」「合鍵とアイロニー」を経て、今回、さらに突き抜けたというか、ぱきっと開けた印象がありました。そんな「純粋無垢」はどんなふうに作っていったんですか?
内田:「2024年の年末に、もう1曲リリースしたいよね」という話はしてたんですけど、それに合わせて作ったわけではなくて、これだっていう曲があれば出したいぐらいに考えて。「純粋無垢」を作っているうちに、“これだ”ってなったんです。
浦山:そもそも曲そのものは、2023年5月ぐらいからあって。
内田:そうだね。
浦山:曲の候補を探すつもりで、デモのファイルの中にあった「純粋無垢」を聴いてみたところ、“年末に出したら、この1年の答え合わせになるような気がする”って全員が一致して。「白い薔薇」「合鍵とアイロニー」というふうにしっとりしている曲が2曲続いてたから、もちろん、そういう曲もyutoriの強みではあるんですけど、「君と癖」とか「センチメンタル」とかが持っていた初期衝動をちょっと忘れかけてたっていう気持ちもあって。2024年はいろいろ試したし、出したい曲も出したから、一度このタイミングでアッパーチューンに戻ってみてもいいんじゃないかって。歌ってることはけっこう心にグサッとくるけど、曲としては明るいし、サウンドは荒々しいし、拳を突き上げたくなるような感じもぴったりだろうってなったんです。
▲シングル「純粋無垢」
──今、おっしゃったように原点回帰もありつつ、曲の音像としては新境地を打ち出していると感じました。yutoriとしてここまでタイトなアンサンブルの曲は、これまでなかったんじゃないですか?
内田:近いものはあったと思うんですけど、ここまで振り切った曲はなかったですね。
豊田:「センチメンタル」がちょっと近い気もするけど。
内田:でも、あれはもうちょっとライトというか。
佐藤:素直な音だよ。
内田:「純粋無垢」は、“やりすぎなんじゃないか?”ってくらい歪んでるから。
佐藤:“どれだけ音を歪ませられるか”みたいなことをバッキングでずっとやっていて。バッキングのギターが全体通して、ずっと歪んでいるんですよ。クリーンな音作りのところが一切ないみたいな曲で。テクニックを追求したというよりは、音作りの面でそれぞれにけっこう遊んだところはあります。
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