【ライヴレポート】-真天地開闢集団-ジグザグ、ツアー<天ト地>ファイナルにして初アリーナ単独公演に圧巻のスペクタクル「本当に報われた。ようやく完成した」
-真天地開闢集団-ジグザグが2024年11月20日から12月24日にかけて、全国ホールツアー2024<全国開闢禊 -天ト地->を開催した。全12公演で行われた同ホールツアーよりクリスマスイヴの12月24日に行われた神奈川・横浜アリーナ最終公演のレポートをお届けしたい。
◆-真天地開闢集団-ジグザグ 画像
2023年の-真天地開闢集団-ジグザグは、10月4日に最新アルバム「慈愚挫愚 四 -最高-」をリリースし、11月の東京ガーデンシアター公演をファイナルに据えたツアーを開催。同ツアーを全公演ソールドアウトという大成功で終わらせた後、2024年に入ってからは<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024>をはじめ多数のフェスに出演して新たなファンを獲得、11月に音源集(EP)「Gran ∞ Grace」をリリース。同EPを引っ提げて全国ホールツアー2024<全国開闢禊 -天ト地->に臨むこととなった。
<全国開闢禊 -天ト地->は前回と同じホールツアーでありながらも全12本(2023年のツアーは全9本)で、最終公演は横浜アリーナという、さらにスケールアップした形態で行われた。ライヴ本数の増加はともかく、-真天地開闢集団-ジグザグにとって初となるアリーナ公演が含まれているという点で、<全国開闢禊 -天ト地->は大きな注目を集めた。ツアーが始まる前はこのタイミングで横浜アリーナは、少し早いのでは?という懸念の声も聞かれたが、そこは着実に地力をつけてきている-真天地開闢集団-ジグザグ。蓋を開けてみれば横浜アリーナはスタンド席最上段までオーディエンスで埋まり、場内は開演前から華々しい空気に包まれていた。
幽玄なオープニングSEが流れ、ステージに-真天地開闢集団-ジグザグのメンバーがひとりずつ姿を現した。客席から湧き起こる大歓声と熱い拍手を圧するように命の力強い歌声が響き渡り、ライヴはスローチューンの「天 (ama)」で幕を開けた。赤を基調にした和風の出で立ちで、張り裂けるようなボーカルを聴かせる命。ステージに力強く立ち、重厚なベースサウンドを轟かせる龍矢。引き締まった表情で、タイトなリズムを刻んでいく影丸。眩いオーラを発するメンバーの姿とエモーショナルなサウンドが重なって生み出す惹き込み力は圧倒的で、ライヴが始まると同時に異空間に誘われるような感覚を味わうことができた。
その後は「天(ama)」で蓄積したエネルギーを一気に放出するようにグルーヴィな「Dazzling Secret」やパワフルに疾走する「Cry Out -victims-」、大陸的なスケール感を湛えた「あいのかたち」などを相次いでプレイ。ステージからアリーナ中央部に伸びたランエリアに出ていって歌う命をはじめ、メンバー全員のフィジカルなパフォーマンスとラウドなサウンドの連続にオーディエンスも激しいリアクションを見せ、場内のボルテージはどんどん高まっていく。そして「あいのかたち」を聴かせた後、命のMCへ。
「愚かなる者よ、我々が-真天地開闢集団-ジグザグだ! <天ト地>ツアー最終日、横浜アリーナへようこそ! …ということで、本日は最終公演ですけれども、もうひとつね、それと同時にクリスマスイヴでございます! クリスマスイヴデートでございますよ、皆さん! イェーイ! イチャイチャしようぜ! 雪やらなんやらでね、いろいろ大変みたいですね、世間は。もしかしたら来れなかった人もいるかもしれませんけれども、そういう悲しい思いもいっぱいあると思いますけれども、ここに来れた人はそういった人の分まで、しっかり盛り上がっていただきたいと思います。皆さん、よろしくお願いします!」──命
歌っている時のミステリアスな雰囲気とは大きく異なり、飾らない口調で明るく語る命の言葉に客席からは何度となく拍手や歓声が起きる。そして、「ぶち上がる準備はできてんのか、横浜! 見せてくれよ、横浜! やれんのか! やれんのか、横浜!」という命の熱いアジテーションに続けて、切迫感を放つ「Schmerz」や和テイストと爆発力を融合させた「燦然世界」、ハイテンションな「夢に出てきた島田」といったアゲアゲナンバーが次々と演奏された。命と龍矢は広いステージを行き来しながら演奏し、影丸は全身を使ったダイナミックなドラミングを展開していながらも、常にサウンドがタイトなのは実に見事。今回のツアーを経て、-真天地開闢集団-ジグザグがライヴバンドとしてのポテンシャルを一層高めたことを実感できた。
その後はウォームな春曲の「さくら さくら」や抒情的なミディアムチューンの「兎 girl」、スタイリッシュな「Drip」などが届けられた。今回のライヴはライティングの素晴らしさも大きな観どころになっていて、それぞれの楽曲に合わせて眩かったり、淡かったりするメリハリはもちろん、-真天地開闢集団-ジグザグのライヴのシンボルマークともいえる巨大な鳥居をネオンライトで輝かせるというアイデアは秀逸。伝統的な和感を纏った鳥居が激しいナンバーなどで宇宙を翔る船のように光り輝く情景は斬新かつ魅力的で、目を奪われずにいられなかった。
また、今回のライヴはオーディエンスが手にしたペンライトがその時その時のシーンに合わせた色で光り輝くという手法が採られていたことも楽しめた。効果的なライティングと場内を七色に染めるペンライトの光が相まって、それぞれの楽曲の世界観が一層深まっていることが印象的だった。
ライヴ中盤では命がトロッコに乗ってアリーナ外周を回遊。アリーナ後方やスタンドのファンと交流しながら歌う「最高だZ」をはじめ、命がネギを手に持ち、オーディエンスもグリーンに光るペンライトをネギに見立てて場内全員がネギを振り、エネルギッシュに踊るという景色を生み出した「バリネギ -sexy green onion-」を披露。さらに、雰囲気をガラッと変えて、煌びやかかつエモーショナルな「E.v.e」が演奏された。
1曲ごとに空気感が大きく変わるのは-真天地開闢集団-ジグザグのライヴの特色といえるが、楽曲の幅広さがストーリー性を感じさせるライヴになることが多い中、彼らのライヴはやや感触が異なっているのは興味深い。急転直下という感じの楽曲の並べ方や1曲1曲の世界観の深さ、コンパクトな楽曲サイズなどが折り重なって、-真天地開闢集団-ジグザグのライヴはショート動画を連続して見ているような感覚を味わえる。そういう構成でいながらチグハグ感や散漫さを感じさせないのはさすがの一言。彼らの音楽性の高さやバンドとしての優れた表現力などが、それを実現させているというわけだ。
命がアコースティックギターの弾き語りで「赤鼻のトナカイ」と「きよしこの夜」、そして彼が中学生の頃に書いたクリスマスソング(これが予想以上に良い曲で、10代の頃から非凡さを発揮していたことがうかがえた)を披露するセクション、高度なテクニックとエンターテインメント性を融合させた影丸のドラムソロなどを経て、ライヴは後半へ。
祭り感を打ち出した「あっぱれ珍道中」やダンサブルな「JAPPARAPAN ~Japanese Party~」、今度はメンバー全員がトロッコに登ってアリーナの周囲をまわる華やかなパフォーマンスと共に届けられた「拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~」などが相次いで届けられた。気持ちを引き上げてくれる圧巻のシーンとサウンドの連続でオーディエンスを大いに沸かせた後、再び空気を一変させてバラードの「傷と嘘」をプレイ。場内は幻想的な白色光で満たされ、同曲の中盤では客席から温かみを帯びた合唱が湧き起こった。「傷と嘘」を聴かせた後、命はMCでこう語った。
「ダメだね。これ、アカンやつやで。なに?今の。現実?これ。ありがとうございます。今の曲は、作ったのがたぶん5年くらい前かな。まだ何100人しかおらんキャパでしかできないようなね、そういう時に作ったんですけど、イメージとしてはちょっと大きいところでみんなで光を振ってね、みんなで合唱できたらすごく良いなと思って。そういうことを想像しながら家で作って。リハーサルの時にメンバーに「ここの部分をみんなで歌うねん。めっちゃ良くない?」って言ったら「良いですね! めっちゃ感動的ですね」って言うて。
言うた矢先にですよ。コロナというのになって。声を出すどころか、禊(ライヴ)もできないってなって。それで、メンバーみんな我慢して我慢して、ようやく禊をやって良いよと。でも、声は出しちゃダメで。それで、最初はこの曲をやるか、やらないか、すごく悩んだんですけれどもね。でも、みんなが声を出せなくても光を振るのはすごく良いと思うからやりましょうということでやったんです。それは本当に光がめちゃくちゃきれいで、すごく感動したんです。
でもね、この曲は最初に「みんなで声を出すんや!」と言ってできた曲なので、それができない状態というのはものすごくもどかしくて、すごく悔しい気持ちになっていた。それが、こうしてようやくみんなで大きな声が出せるようになって。そしてまさかのこんな想像の何倍も何倍も大きいところで、みんなでこうやって歌えるようになってね。この曲が本当に報われたなと。ようやく完成したなと。そんな気持ちでおります。ありがとうございます、本当に」──命
彼の言葉に、客席から温かい拍手や「ありがとう!」という声があがり、オーディエンスも命と同じ気持ちになっていることが伝わってきた。
その後は、パレード感を放つ「きちゅねのよめいり」やハードかつメロディアスな「復讐は正義」、心に響くサビパートを配した「Promise」などを怒涛の勢いでプレイ。ライヴ終盤に入ってさらに勢いを増したステージングを見せながら力感とエモさを併せ持ったサウンドを鳴り響かせるメンバーたちとヘッドバンギングや折り畳み、拳振りなどを交えた激しいリアクションを見せるオーディエンス。場内の盛り上がりは最高潮に達し、ラストソング「Nighty night!」を聴かせた。
すべての演奏が終わると、場内暗転。神秘的なSEが流れ、灯された赤い照明が照らし出したのは鳥居の前の3人。その表情は見えない。命の「愚かな者に救いの手を!」という決め台詞が発せられると再び暗転。ラストはLEDビジョンに3人からの「メリークリスマス」という手書きメッセージが映し出されてツアーファイナルが終了した。ステージから去った横浜アリーナの場内は、爽やかな余韻に包まれていた。
<ホールツアー2024「全国開闢禊 -天ト地-」>を、充実したライヴで締め括ってみせた-真天地開闢集団-ジグザグ。彼らならではの優れた音楽性や華やかなライヴパフォーマンス、アリーナ公演にふさわしいスケールの大きな演出、優れたライティングがひとつになって上質なエンターテイメントに仕上がっていることが印象的だった。-真天地開闢集団-ジグザグのメンバーは初の横浜アリーナということに舞い上がったりすることなく、よりシビアな姿勢でライヴ作りに取り組んだに違いない。そんな彼らだけに、次の展開も本当に楽しみだ。
取材・文◎村上孝之
撮影◎Megumi Iritani
■全国ホールツアー2024<全国開闢禊 -天ト地->ファイナル/2024年12月24日(火)@神奈川・横浜アリーナ SETLIST
02. Dazzling Secret
03. Cry Out -victims-
04. あいのかたち
05. Schmerz
06. 燦然世界
07. 夢に出てきた島田
08. さくら さくら
09. 兎 girl
10. Drip
11. 最高だZ
12. バリネギ -sexy green onion-
13. E.v.e
・命 -mikoto- 弾き語り
・影丸 -kagemaru- Drums Solo
14. あっぱれ珍道中
15. JAPPARAPAN ~Japanese Party~
16. 拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~
17. 傷と嘘
18. きちゅねのよめいり
19. 復讐は正義
20. Promise
21. Nighty night!
■『-真天地開闢集団-ジグザグ 3ヶ月連続WOWOW特集』
▼【<ホールツアー2024「全国開闢禊 -天ト地-」>ファイナル at 横浜アリーナ】
放送/配信:2025年2月16日(日)午後6:30 (予定)
※放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
◯約1年ぶりの全国ツアー<全国開闢禊 -天ト地->より、彼らにとって最大規模のステージとなった12月24日の横浜アリーナ・ツアーファイナルのパフォーマンスをお届け。
収録日:2024年12月24日
収録場所:神奈川・横浜アリーナ
▼【Music Video Collection】
放送/配信:2025年3月 (予定)
※放送・配信終了後~アーカイブ配信あり
◯結成8周年を迎えた彼らの独創性あふれるMVを一挙放送。撮りおろしインタビューを交え、彼らの映像表現のこだわりに迫る。
▼【禊集 ~Member’s Selections~】
放送/配信:2025年4月 (予定)
※放送・配信終了後~アーカイブ配信あり
◯振り幅の広いパフォーマンスで観る者をとりこにしてきた彼らのこれまでのライブから、各メンバーがセレクトしたライブ映像を撮りおろしインタビューを交えてお届け。
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