| ぐるっと見渡してみるとテントの数も人の数も、昨日までの2日間より多くない? そーかそーか、みんなコレが聴きたくてやって来たのかーと納得してしまうほど、この日GRASS STAGEトップに登場したLOVE PSYCHEDELICOは素晴らしかった。
▲LOVE PSYCHEDELICO | ギターのゆるいうねりを頑丈なグルーヴに変えるバンド・アンサンブル。空に吸い込まれそうな、果てしなくなめらかな歌声。オープニングの「Free World」ですでにウワーッ! と叫びだしたい気持ちよさ。「気持ちいいね。ボブ・ディランの曲でもやろっか」となにげなくスゴイことを言うKUMIの横で、“よし!”っとばかりにギターを弾くNAOKI、バンドのメンバーもみんな満面の笑顔ですっごく楽しそう。「I mean love me」「ノスタルジック'69」「Your Song」「LADY MADONNNA」「Last Smile」…。初めて聴いた時、なんて物憂く気だるい曲なんだろうと思ったデリコの歌が、どこまでも続く青い空の下、とてつもない解放感で鳴り響く。隣にいる見知らぬ人と肩を組んで踊り出したい気持ち。LOVE&PEACEってこういうこと?
続くGRAPEVINEはいつになく男気フェロモン急上昇の熱いステージを、一方のLAKE STAGEではPENPALSが新曲をひっさげて登場。1日のうち1番熱い真っ昼間の時間帯に、ジャンプして大声張り上げて歌って、いい汗流してもう大変。Sugar Soulに代わり急きょ出演したRIP SLYMEはユルめで陽気な、彼ら独特のポップ・チューンでGRASS STAGEの大観衆を沸かせる。
in the Soupを途中まで聴いて佐野元春のラストに駆けつけよう、という計画のもとLAKE STAGEへ。日比谷野外音楽堂の座席を取っ払ってコンパクトにした感じのLAKE STAGEで、スタンディング・ゾーンで待つ人と、その外周のシートゾーンに座ってる人は半々。MCのつもりでリズムに乗ってしゃべりだしたらいつのまにかエアロスミスに、そして村の祭りのような大騒ぎで歌い躍りながらフト振り返ると、自分の後ろでさっきまで見たこともなかった大勢の人たちが同じように飛び跳ねている。そこへ勢いあまってヴォーカルの中尾諭介がステージを駆け降りるもんだから…、大変な事態に! ステージに戻ってひとこと「ちょっと殺気を感じた(笑)」。そんなおもしろすぎるライヴを途中で脱けることがどうしてできよーか。かくして、佐野さんの「99ブルース」はやるわ「SOMEDAY」はやるわの往年のファン感涙もののステージを見逃してしまった。
▲山崎まさよし | 3ピース編成のメンバー全員が、甚兵衛姿で頭にタオル。夏ですなぁ~。そんな風情で「水のない水槽」から始まった山崎まさよし。「長男」「FAT MAMA」、そして「Passage」。傾きかけた夕日につられるように、隣にいる彼氏の肩に頭をちょこんと寄せて聴き入る女子多数。「今年の夏は暑すぎて部屋のクーラーがきかない」と、チューニングの場つなぎにMCを少々。シュビドゥビッとハープを吹くと歓声が上がり、その声にニヤッと笑って応える。「心拍数」「愛のしくみ」「Plastic Soul」……スローナンバーからガンボでファンキーな曲へとギターは転がり、ヴォーカルは躍る。クールダウンした体がまた温まり始める。それにしても本当にいい声、いい音。端っこが見えないぐらいの大会場を一瞬にして自分のものにしてしまう、山崎まさよしの音楽の力にドキュンと撃ち抜かれる。
続くエレファントカシマシは、「ガストロンジャー」でしょっぱなから大暴発。その勢いにつられて、全速力でステージに向かって突っ走る突貫野郎を多数目撃。「総合司会の宮本です」というキテレツなMCには笑ったけれど、「デーデ」「悲しみの果て」、ひとり暮らしの悲哀を歌ったという「孤独な太陽」、そして「武蔵野」「コール アンド レスポンス」などなどこれでもかといわんばかりの大盤振る舞い。そして常軌を逸したハイ・テンション。エレカシ、いまだゴウゴウと燃え盛る炎。
▲中村一義 | 3日間続いたフェスを締めくくるGRASS STAGE最後のアーティストは中村一義。昨年、台風で中止を余儀なくされたこのステージで歌えるのを1年間ずーっと待っていたという彼が最初に鳴らしたのは、“どーう?”。そうデビュー曲の「犬と猫」! ぎゃー! 昨年からこの日を待っていた人、人、人の大合唱と声援、そして中村くんの声の張りはちょっとスゴイものがありました。
「ショートホープ」「君ノ声」、そして「新曲を持ってきました!」といって披露されたのは、まだ正式なタイトルもついていない、発売も決まっていないという「キャノンボール(仮)」。「僕は死ぬように生きていた~」…そんなふうに歌う、ひたすらたくましく強い歌。太く短いコンパクトなステージを終えて帰る中村くんの背中を包み込んだ夜空に、大輪の花火が舞い上がる。LAKE STAGEのGUITAR WOLFもトリ肌もののロッケンローだったと、誰かが息まいている。
最高のロケーションで最高の音楽を楽しんだ幸せな21世紀最初の夏は、終わった。 |
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