【インタビュー】MUCC、YUKKEが語るアルバム『1997』の多重的な遊び心と信念「メンバーに対する驚きが尽きることがない」

MUCCが4月2日、自身17枚目となるオリジナルアルバム『1997』をリリースした。徳間ジャパンから2024年に「愛の唄」で“3度目のメジャーデビュー”を果たして以来、フルアルバムとしては初のリリースとなる。
◆MUCC 画像 / 動画
結成年を冠した本作『1997』は、“’90年代オマージュ”をキーワードとしつつも、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)といったメンバー三者三様のソングライティングによって多彩なバリエーションを実現している。“このリフは、’90年代のあの曲のオマージュ?”というフックを無数に散りばめ、聴き手がそれを発見する宝探しのような楽しみがあるし、MUCCを形成した音楽的“地層”の断面図を見るような、バンドのルーツと本質を感じ取れる側面もある。
今作でベーシストとしてもソングライターとしても数々の初挑戦をしたYUKKEに、アルバム誕生の裏側を尋ねた。
◆ ◆ ◆
■プレッシャーを背負ってみたかった
■バンドとしても挑戦だったと思います
──三者三様のソングライターとしての色が出た名盤です。全16曲のフルボリューム、完成した手応えはいかがですか?
YUKKE:当初は11〜12曲の収録予定だったんですけど、やりたいことが膨らみ、作曲もどんどんペースが加速していって、こんなにすごいボリュームのアルバムになりました。“'90年代オマージュ”の雰囲気で全編パッケージできたのが良かったなと思っています。
──MUCCは、世の'90年代リバイバルブームよりも先駆けていましたよね?
YUKKE:そうですね、今年からというわけではなく、以前からそういうテーマでの制作もしていましたし。
──2023年にリリースしたアルバム『Timeless』収録曲の「under the moonlight」も、既にそんなムードをまとっていました。
YUKKE:そうでしたね。'90年代は自分たちが一番多感な時期…高校生ぐらいだったんですけど、その時に受けた影響をアルバム単位で反映してみるというより、ピンポイントでたまにそういう要素が入ることはあったんです。だけど、ガッツリ作品として作ってみようというのは今回初めてだったので、楽しく制作できました。
──'90年代オマージュというテーマや『1997』というタイトルは、制作スタート時点からあったんですか?
YUKKE:『1997』というタイトル自体は作業の途中でリーダー(ミヤ)から出てきたんですけど、いつもはアルバムにそういったテーマを設けることがなかったんですね。だけど、今回は作曲の前段階から、'90年代というテーマというかキーワードだけは出ていて。その中で振り幅を広く作っていきました。『1997』というタイトル案が出てきた時にはみんながストーンと腑に落ちて、“いいんじゃない”という感じでした。自分たちの結成の年でもありますから。
──2024年12月にリリースされた「invader」と「October」、2024年6月にリリースされた「愛の唄」は2025年リマスター版として収録されますが、それ以外はすべて新曲ですね。
YUKKE:新曲ですけど、「Daydream Believer」はタイトル未発表の段階でライヴでやっていて。「Round & Round」も昨年末のワンマンで一回だけ披露しています。
──なるほど。まずはYUKKEさんが手掛けた曲について、収録曲順に沿って伺っていきます。9曲目「LIP STICK」は作詞をご担当されています。作曲は逹瑯さんとミヤさんの共作ですが、どういう経緯で詞を書かれることに?
YUKKE:昨年末の制作時間もなくなってきたなか、逹瑯から「YUKKE、もう1曲ぐらい詞を書いてみたら?」と言ってもらったんです。11曲目の「△ (トライアングル)」は自分が作曲したので「歌詞も書こうかな」と思っていたんですけど、自分の作曲じゃないものに歌詞を付けるのは、実は俺、初めてで。「この中だったらどれがいい?」って感じで選ばせてもらって、聴いて一番歌詞をイメージしやすかったので選びました。
──軽やかに言葉遊びをされていますね。
YUKKE:そう、生意気に遊んでます(笑)。去年「Violet」という曲(※YUKKEとミヤの共作)にリーダーが歌詞を付けてくれたんですけど、'80年代、'90年代を彷彿とさせる言葉選びをしていたんですよ。“面白そうだな。いつか俺もこういう曲を書いてみたいな”とどこかで思っていたので。今回やってみて、楽しくいろいろ遊べたなと思っています。
──“101回叫んだって”というフレーズはドラマ『101回目のプロポーズ』を想起しますし、同時代を生きてきた人には分かる仕掛けも入っていますね。
YUKKE:「LIP STICK」という曲名もそうだし、“月9”感がどんどん出ちゃいました(笑)。
──サウンド的には'80年代っぽさもある。
YUKKE:そうですね、'80年代と'90年代を行き来しているイメージが自分の中ではあって。サビだけは'90年代を感じていたので、Aメロの'80年代の雰囲気からどうポンと抜けるような歌詞を書けるかが大事だな、と。
──逹瑯さんの声も歌い方も、サビで別人になるような印象です。
YUKKE:時代というか、世界観がそこで変わるので。それを押さえながら、暴走しないように慎重に言葉で遊んでいった感じです。今まで書いたことのないタイプの曲ではあったのですごく面白くて。書きながら逹瑯のステージ上のパフォーマンスも想像できたし、いろいろな発見がありましたね。あと、タイトルによってサビの抜け感とか聴こえ方って全然変わるんですよ。最初は全く別の日本語のタイトルを付けて歌詞を書いていたんですけど、そのタイトルだと仮定してサビを聴いてみるとちょっとモッサリ聴こえて。
──仮タイトルは「気付かせて Eyes」だったという情報を耳にしたんですが、'80年代のアイドルの曲みたいな感じもありますよね。
YUKKE:直前にC-C-Bをよく聴いている時期があったので、その影響もあったかもしれないです(笑)。
──サウンド面でも、C-C-Bの代名詞的な、シモンズの電子ドラムを思わせる音も入っています。
YUKKE:たしかにそうですね。リーダーにタイトルを伝えたら、「「LIP STICK」で良かったと思う。「気付かせて Eyes」だったら“そこだけ変えて”ってたぶん言った」と言われました(笑)。
──この曲の作詞はYUKKEさんにとって、挑みがいのあることでしたか?
YUKKE:書いたことない雰囲気の曲に詞を書いてみたかったし、誰かの曲に最後の命を吹き込む作業というか、そこのプレッシャーを背負ってみたかったんですかね。バンドとしても挑戦だったと思います。
──実際、ご自身の曲の作詞をするのとは、やはり違いました?
YUKKE:全然違いましたね。それがちゃんと採用されて“MUCCの作品としての歌詞”を書けたなという感触があります。やっぱりバンドへの関わり方が一段階深くなると思うし、作詞するとインタビューでしゃべることがちょっと増える、ということにも気付きました(笑)。

──逹瑯さんとミヤさんは、歌詞に対して何かおっしゃっていましたか?
YUKKE:内容についての会話はそんなにしないんですけど、歌詞を提出してから「ここ修正していい?」というのが今回なくて。歌録りにも立ち会ったんですけども、その場ですんなり録れたかなとは思っていて。
──作詞者として、逹瑯さんに歌い方をディレクションはされましたか?
YUKKE:レコーディングでリーダーから逹瑯へのオーダーはありましたけど、特に俺からはなかったかな。自分の頭の中で“こう歌ってほしいな”というのもなんとなくあるんですけど、あえて言わなくてもいいのかな、とは思ってるし。
──言わなくてもやってくれるからですか? それともお任せ、という感じですか?
YUKKE:お任せするかな? ライヴが楽しみだな、とは思っています。
──サビで豹変するような、ドラマティックなパフォーマンスを想像しました。
YUKKE:うん、Aメロは閉じこもっているイメージというか、一個フィルターが掛かってるような見え方をしてるので。パフォーマンスもしやすそうな言葉かなとは思いながら歌詞を書いていました。
──MUCCにとって新境地な曲だと感じました。
YUKKE:そうですね。
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