■ System Of A Down 最新Album | 『毒性』 Sony Music International SRCS-2487 2001年8月29日発売 2,520(tax in) 1 Prison 2 Needles 3 Deer Dance 4 Jet Pilot 5 X 6 Chop Suey 7 Bounce 8 Johnny 9 Forest 10 ATWA 11 Science 12 Shimmy 13 Toxicity 14 Psycho 15 Aerials | | 今回のフジロックはどの日をとっても大きな見せ場があった。UKロックのビッグ3が揃い踏みした初日、ニール・ヤング、ニュー・オーダー、パティ・スミスなど、ロックの伝説が貫禄を見せた2日目。そして、今のアメリカのミュージック・シーンの最先端の粋を見せてくれたのがこの3日目だ。「これを知らなきゃ、今のアメリカのロックを分かったなんてとても言えない」。そんな重要アーティスト3組が、グリーン・ステージの最後から3つを華麗に締めてくれたのだ。 その3組の先陣を切ってまず登場したのがシステム・オブ・ア・ダウンだ。日本での知名度こそまだ低いものの、本国アメリカではあの血塗られた謎の猟奇仮面集団、スリップノットと共に、モダン・ヘヴィネスの新時代を牽引する存在として大きく期待されている。かのレッチリやスレイヤーを手掛けた奇才リック・ルービンが今もっとも手塩にかけて育成し、ヘヴィ・ロック最大の祭典”オズ・フェスト”においても、その文句なしのライヴの実力で圧倒的な人気と支持を受けるこのバンド。8月に出る待望のセカンドアルバム『Toxicity/毒性』での大ブレイクが今から確実視されているが、今回はその直前の、まさに脂が最高潮に乗り切った瞬間をこのフジで迎えることとなった。 遂にその姿をフジの観客の前にさらすこととなったこの4人だが、その風貌はある種異様だ。メンバー全員がカリフォリニア在住のアルメニア移民とは聞いてはいたが、なるほど、その容姿からはおよそアメリカの匂いはしない。目の周りを黒く縁取ったような中東アジア系の顔だちで上半身は裸。ギタリストはオカルト映画にでも出てきそうな不気味さを醸し出しているし、ヴォーカリストにいたってはまるでアラブの石油商人のようでさえある。しかし、このロック史上類をみない風貌の男たちから放たれる強烈な攻撃性とグルーヴ、これに僕らは驚くほかなかった。 ▲System Of A Down 重々しいリフの中に時おり現れる民俗的な旋律が、彼らのルーツを雄弁に物語る | やたらと暴力的で手数の多いパワフルなドラムに引っ張られるかたちで、変拍子を多用するファンキーなベースラインが絡み付き、そこに不協和音のギター・コードが追随する。このビートからは、フランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートといったあたりのアヴァンギャルドな雰囲気を感じるが、キメの部分は鉛のようにズドンと重いヘヴィ・ギターが大炸裂。そこにギタリストによるデス声が絡まれば全て完成、といった感じ。と書くと、ずいぶん手の込んでいる印象が強くなるわけだが、ここまでの展開にして、ほとんどの曲が2~3分で終わるという、ハードコア・パンクなみの短時間燃焼なのにはさらに驚かされる。いやはや、これは一筋縄ではいかないとんでもない力量とパワーである。 また彼らの場合、同じカリフォルニア出身のマイノリティから構成されるバンドでも、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやデフトーンズなどと決定的に違うのは、マイノリティとしての怒りや欲求不満の爆発をストイックな方向に持っていくのではなく、常軌を逸してひたすら脳天気なまでに暴れまわる点だ。このあたりに関しては、見る人によって好き嫌いがハッキリと別れるところだろうが、この連中の不気味さに加えて時おり見せる気色の悪い薄ら笑いを見てると、実は意図的に何かを企んでいるようにも映り、そこがなんとも気にならずにはいられなかった。いずれにせよ、瞬時の爆発力とパワーにおいては、今、ちょっと他に並ぶものがないのではないか。そう思わせるのに充分な鮮烈なパフォーマンスだったように思う。この来日を機に、日本でも一気に注目されていってほしいものである。文●沢田太陽 | |