2000年 ライヴ・シーンを振り返る 【前編】

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2000年 ライヴ・シーンを振り返る 【前編】

 


Kiss


Wu-Tang Clan


Christina Aguilera


Destiny's Child


Bruce Springsteen


Counting Crows


Beastie Boys


Eminem


Metallica


Slipknot


Green Day

 

ショービズ界の懲りない面々からいってみよう

今年(編集部註:この原稿は昨年末に執筆されたものです)、全国津々浦々のライヴ会場にある回転ドアは回りっぱなしだった。観たいものは何であれ……、ラップ、ロック、カントリー、パンク……、誰かしらがどこが近くでライヴをしていた。業界の期待は、記録的な'99年(総チケット収益15億ドル)に続き、2000年も大きかった。そして結果は、期待を裏切らない数字となった。

しかし、みんなも知ってのとおり、量は必ずしも質を保証するものではない。頭を抱え込んでしまうようなものから大成功のもの、失敗したものからやっていたことさえ気が付かなかったものまで様々なコンサートがあった。まあ、どれがどれだったか、よく思い出せないけど……。

ところで、Kissはまださよならを言ってまわっているのだろうか? たぶん、彼らのアイデアとしては、メンバーがひとりずつ順番に亡くなっていくまで、さよならツアーを続るつもりなんだろう。で、最後に残ったメンバーが、ツアー売上を全部もらえるっていうわけ。どう?

Wu-Tang Clanのライヴに逃亡者が姿を現すのを願って、警察がこれから毎回やって来るようになると思う? ホント、Ol' Dirty Bastardは自分の実生活でTV番組が作れるんじゃないかな。番組名は『Survive This(生き延びろ)』ってね(再び編集部註:Ol' Dirty Bastardはすでに11月末に逮捕されてます)。

Christina AguileraLimp BizkitのFred Durstの2人が、今年のツアーの最中に揃ってノドを故障したってことを興味深いと思うのは僕だけだろうか? サンディエゴの野郎(ビルからジェットスキーで飛んで“Anger Management”ツアーのチケットが当たった奴)は、Durstのノドの不調でライヴが中止になって、どれほどガッカリしたか想像できる?

Supremesが3人、Supremesが2人、Supremesが1人……0人。Diana Rossの飛びぬけた商才のおかげでSupremesの“再結成”ツアーは、数字数え競争でジョージ・ブッシュよりもはるかに早く失敗した。

そういえば、Destiny's Childが新しい戦略を発表した。どうやら新メンバーを見つけて、3週間後に再びクビにするよりもいい方法を発見したらしい。グループのツアー・マネージャーが各コンサートの前に地元の音楽シーンからひとり、女の子を選んで参加させ、ショウの終わりにBeyonce Knowlesがその娘の悪口を言ってクビにするっていうアイデア。今までやってたことと大して変んないけどね。違う?

もしそれでもダメなら、Destiny's Childは今度はGallagher兄弟のひとりがOasisを捨てるのを見習うかも。Noelだっけ、Liamだっけ? まあ、どっちでもいいや。本当のトコロは、5月のパリ公演の前日に出て行っちゃったのはNoelです。彼がツアーの途中で抜けちゃったのは、これで2度目。1度目はバンドの人気絶頂期の'96年の米国ツアーのとき。

オーディエンスとしてちょっとひと言…

まったく無駄ってわけじゃないけど、曲の50パーセントしかちゃんと歌ってないアーティスト(あとの50パーセントはテープ)は、普通のチケット料金を取っていいと思う? 僕に50ドルくれたら、CDプレイヤーの“プレイ”ボタンを押してあげて、おまけにサービスでダンスもちょっとしてあげるけど。どう?

ツアーといえば、WhoRoger WatersPaul Simon(9年ぶり)やBruce Springsteenなんかの大物ミュージシャンたちは、自分たちだけでツアーをしている。けれど、今年の夏はパッケージ・ツアー花盛りだった。Counting CrowsLiveRed Hot Chili PeppersFoo Fightersのタンデムのような2組で演るものから、“Ozzfest”に“Up In Smoke”、“Anger Management”ツアーみたいなものまで、どんどん増えているようだ。

観客席から観てる人間にとっては、こういう複数アーティストのライヴは不公平に感じる。(お目当てのアーティストを見るために)高いチケット代を払っているのに、別の人気アーティストが同じぐらいの演奏時間を取るために、普段の半分くらいのショウしか観られないっていうのはフザけてないかな。どのバンドもファンが足りないわけでもあるまいし。確かに今年は、Counting CrowsもLiveも派手なアルバム売上を記録したわけではないが、別々にツアーをしても十分に成り立つだけのファンがいるのは明らかだろう。

それはともかく、今年行なわれたツアーと同じぐらいおもしろかったのは、実際には行なわれなかったツアーだろう。なかでも印象に残っているのは、Beastie BoysRage Against The Machineの“Rhyme & Reason”ツアー。最初はBeastieのMike Dが自転車から転げ落ち、肩を縫うケガをして、とりあえずその時点での予定がキャンセルになった。その後、再スケジュールの難題とツアーに伴う手配・調整の悪夢に打ち勝てず、結局ツアーを丸ごとキャンセルせざるを得なくなってしまった。皮肉なことに、今年行なわれた多くの共同ツアーのなかで、この企画は数少ない意味のある組み合わせのひとつだった。実現しなかったのは残念。今となっては、もう2度とできなくなってしまった。人生なんてそんなもんだ。

見ものが多かったパッケージ・ツアー

オーケー、大所帯系のパッケージ・ツアーはどうだろう? Limp Bizkitは、ひとつのフェスティバルでメインアクトを務めただけではあきたらず、“Back To Basics”と“Anger Management”ツアーも引き連れた。Napsterがスポンサーを務めた“Back To Basics”無料コンサートツアーは7月11日のデトロイトから始まった。先着順というチケット配布方法にはちょっと問題があったようだが、それを除けばツアーは順調だった。Limp Bizkitは“Back To Basics”の成功と新アルバム『Chocolate Starfish And The Hot Dog Flavored Water』を引っ提げて、10月から“Anger Management”ツアーを開始した。

“Anger Management”ツアー仲間のEminemも、別のパッケージ・ツアーに残りの時間を使った(裁判所に出廷していない間だけ)。Eminemの他にDr. DreSnoop DoggXzibitIce Cubeが出演した“Up In Smoke”は、この夏、最も成功したツアーのひとつだ。特に目玉となったのはツアーの数公演で、かつて非常に影響力のあったギャングスタ・ラップ・グループ、N.W.A.の残りのメンバー、Dr. Dre、Ice Cube、MC Renが顔を揃えたこと。

最近は、N.W.A.みたいに毒のあるタイプのグループの他、メタル・バンドも人気がある。今年は“Ozzfest”や“Summer Sanitarium”に“Tattoo The Earth”など、メタル・イベントが大盛況だった。メタルの親分といえるMetallicaが“Summer Sanitarium”ツアーのメインアクトを務め、他にはKornKid RockSystem Of A Down、Powerman 500が出演。7月にMetallicaのJames Hetfieldが腰の具合を悪くしたときには、Kid Rock、KornのヴォーカルのJonathan Davis、System Of A DownのSerj Tankianが代わりにヴォーカルを務めた。MetallicaのメンバーはKid Rockが“American Bad Ass(アメリカの最低のケツ)”を蹴り上げたときに、なぜ一緒に参加しなかったんだろう? 自分たちの“Sad Boy True”がフィーチャーされているのに。

Slipknot率いる“Tattoo The Earth”フェスティヴァルに比べれば、“Summer Sanitarium”はまだヌルイものだった。手に負えない変わり者のSlipknotがスピード・メタルのツアーで25都市を引き連れて回ったメンバーは、Soulfly、(hed)PE、Nashville Pussy、Mudvayne、SevendustCoal Chamber、(Stone Temple PilotsがPortlandの公演だけに出演。なにを考えてんだろう?)、そしてツアー名のとおり、大勢の世界的に有名なタトゥー・アーティストたち。

パンクのライヴがおとなしいと思う人は、どこか別の世界にイっちゃってるんだろう。それでも残りの夏のフェスティヴァルに比べれば、今年、LAUNCH Mediaが主催した“the Warped”ツアーはやっぱり見逃せないものだった。永遠のパンクス、Green Dayを筆頭にMighty Mighty BosstonesPapa Roach、Long Beach Dub All Stars、Suicide Machines、Donnas、Weezer、Lunachicksが出演。このツアーは落ち着きのない奴らにはおあつらえ向きで、もし、音楽にあきたときは、まわりでX-Game風のスケートやBMXのデモンストレーションなどが見られた。

by David John Farinella

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