ピンク・フロイドのデザイナー、『Animals』ジャケ写撮影でのブタ逃亡事件を語る

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発電所の上空を巨大なブタのバルーンが飛ぶピンク・フロイドのアルバム『Animals』(1977年)のアートワークを手がけたデザイン・グループ、Hipgnosisのオーブリー・パウエルが、制作時の思い出を語った。

◆『Animals』画像

まずは、ブタを飛ばすことになった経緯をパウエルはUKのマガジン『Time Out』のインタビューでこう話している。「ある日、ロジャー・ウォーターズから呼び出されて“バターシー発電所で何かしたいって考えている”って言われたんだ。彼、(発電所の)近くに住んでて、窓から見えていたんだよ。当時、発電所はまだ動いてて、煙突からスチームが出ていた。バンドはちょうどツアーのためにブタのバルーンを作ったばかりで、ロジャーと僕は発電所を見上げて、“煙突の間にブタを飛ばしてみよう”って言ったんだ」

ファンはすでにご存じのように、撮影の日、ブタが係留装置から外れ逃亡する(?)事件が起きた(のちにケント州の農場で発見)。この逃亡経路が悪く、パウエルは逮捕されたそうだ。彼はこの日のことをこう振り返っている。「あの日は素晴らしい日だった。ターナーの絵のような空だった。でも、なぜかブタが膨らまなくて、僕はとりあえず発電所の写真を撮ったんだ。空がすごく良かったからね。ようやくブタが膨らんで、2つの煙突の間に揚げることができた。よし準備万端ってときに、チェインが壊れブタが2万フィートまで上昇しちゃったんだ。ヒースロー空港の管制空域だよ。この時点でピンク・フロイドは現場を去った」

「ヒースローからのフライト全てがキャンセルされた。で、僕は逮捕されたんだ。ラジオで、長さ40ft(約12メートル)のピンクの風船のブタを探して欲しいって発表したんだ。RAF(イギリス空軍)もクルーを飛ばした。そしたら、その日の夜9時半に農家の人から電話があったよ。“ブタを探してるのはあんたらか? うちの敷地で牛を死ぬほど怖がらせている」って。一面を飾るニュースだったよ。ピンク・フロイドはどう頑張ったって、これ以上いい宣伝効果は得られなかったね」

これだけ苦労したものの、結局、実際のアルバム・カヴァーにはブタを描き込んだ合成写真が使われた。発電所は再度、撮影することを許可してくれたが、空の具合が前ほど良くなかったという。

ピンク・フロイドは2011年秋に過去の作品のリマスター盤発売を記念し、再びバターシー発電所上空にブタの巨大バルーンを飛ばし、同ジャケ写を再現した。


Ako Suzuki, London
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