大波乱!? 2000年洋楽ミュージック・シーンを振り返る【4~6月】
2000年ミュージック・ニュース 音楽業界において、2000年はまさに大忙しの年だった。本当に様々な出来事があった。Creed 対 Limp Bizkit、Creed 対 Pearl Jam、Creed 対 Creedのベーシストの闘いとまったく関係ない出来事もあったほどだ。 ま、あまり多くはないけど、少しはあったということで(初めてEminemが離婚の手続きを始めたっていうのを聞いたとき、どこにいたか覚えてる人いる? なんで覚えてるか、覚えてる? もし覚えてるような人なら、ロンチ宛てに頻繁にeメールを送ってくれる?)。 1年分の音楽ニュースなんて、膨大な量(忘れてるかもしれないけど、今年はうるう年だったんで、普段より0.27パーセントもさらに量が多い)を振り返る最良の方法は、ドンとまとめて月順にみていくことだろう。 では、継続する歴史のなかでも、最も興味深いであろう12ヵ月を一緒に散策してみよう。 |
2000年 |
4~6月 |
Metallica Eminem Limp Bizkit | 4月 | 1月にVictoria's Secretをやっつけて勢いづいたのか、この月にMetallicaがMP3ファイル交換サービス提供会社のNapsterを著作権侵害と不正組織防止条例違反で訴えた。「(こういった)情報物の取引は、音楽、ビデオ、写真、どういった形態のものであれ、結果的に盗品の取引である」とはドラムのLars Ulrichの弁。Metallicaは、被告としてNapsterの他にも(大学構内のネットワークで)このサービスを使用可能にしていたとして、大学3校の名を挙げた。もう1人、Napsterを訴えたのがDr. Dre。訴訟相手は、大学に加え個人も含まれていた。「俺の音楽を盗むやつは気にくわねぇ」と言っていたDreだが、1週間も経たないうちに著作権侵害で自分が訴えられた。訴えたのはGeorge Lucas監督のLucas Film。内容は、Lucasの会社の1つ、THXのサウンドに対するDreからの使用許可の申し込みを断ったのにも関わらず、最新アルバムのオープニングに使用したというもの。ここまでくると、もう皮肉でもなんでもないっていうのが、なんだかな。 マトモな音楽ニュースでは、英国で'99年の大ヒットアルバムとなっていたTravisの傑作『The Man Who』が、4月にやっと米国でリリース。 Eminemの「The Real Slim Shady」リリースと共にこき下ろしの嵐が吹き荒れて、Britney Spearsや'N Sync、Christina Aguileraを吹き飛ばしてしまった。なまいきEminemは、かたっぱしから攻撃。「てめえらが踏める韻なんか、“Fire”と“Desire”に“Heart”と“Fall Apart”だけの繰り返しじゃねえか。もう見るのも、聞くのもうんざりだぜ。俺のファンが“Eminemは'N Syncが好きじゃない”って気づいて、離れていこうが、知ったこっちゃねぇ」。怒ってるね、Eminem! Napsterが反撃。Limp Bizkitの無料ライヴ・ツアーのスポンサーに付くと発表。 |
Smashing Pumpkins prince Oasis | 5月 | Smashing Pumpkinsが年末で解散すると発表。Billy Corganは、その理由をBritney Spearsなどの台頭だとしている。「バンド内部にはなにも問題はない。しかし、今の文化や状況が、Britneyたちと正々堂々と良い闘いをすることを難しくさせている」。そうか、Britneyはカワイイだけじゃなくて、力も強かったんだ。 MetallicaとNapsterの話が、しばらく出てきてなかった。ちゃんと聞いとくように!●5月にMetallicaは、(不正に著作権楽曲を入手したと思われる)33万5435人のNapsterユーザーに対し、サービス利用禁止措置をとるよう要求すると発表。実際に33万5435人の名前をリストアップした。書類にしてなんと6万ページ(!)。数日後には31万7377人がNapsterから閉め出された。お得意の“Kill 'em all(皆殺し)”ってわけですね。 The Artist Formerly Known As Princeが、これからは“かつてPrinceと呼ばれたアーティストと呼ばれたアーティスト”になると発表。早い話がPrinceってこと。 They Might Be Giantsが、2度目となるインターネット限定アルバム『Working Undercover For The Man』をリリース。常にいろんなことを試しているこの2人組は、'99年にメジャーアーティストとして初の、まるごとダウンロード可能のアルバム『Long Tall Weekend』をリリース。 OasisのNoel Gallagherがパリでのライヴの開演前に出て行ってしまい、もうツアーから足を洗うと発表した。まるで、Kissみたい。 |
Creed Sinead O'Connor Bruce Springsteen Elvis Presley | 6月 | Limp Bizkitが、ニューヨークで行われたラジオ局K-ROCK主催の恒例イベント“Dysfunctional Family Picnic”で、Creedを攻撃。1時間おくれでステージに現れると、Fred Durstがまくしたてた。「次の曲はCreedのリード・ヴォーカルに捧げるよ。エゴの塊野郎にな。奴はサイテーのクズで、今、楽屋で、まるで自分がMichael Jacksonみたいに振舞ってるぜ。あんなクソ野郎はクソくらえだ。てめえらもクソくらえだぜ」。えっ、ああ、ハイ。 Eminemがデトロイト郊外で暴行および武器を隠し持っていた疑いで逮捕された。妻のKimが浮気をしていると疑ったEminemが、駐車場で彼女とキスをしていた男に弾の入っていない拳銃を突きつけた。 Sinead O'Connorがレズビアンだとカミングアウト。David Crosbyに電話番号を聞かれたかは不明。 Creedのニュースをもう少し。後に“元”が付くことになるベーシストのBrian Marshallが、Creedは(よく比較にされる相手である)Pearl Jamよりイイと発言。Marshallは誇らしげに「Eddie VedderはScott Stappみたいに曲が書けたらいいのと願ってるよ」とシアトルのラジオのリスナーに話した。 「41 Shots」という曲を披露したBruce Springsteenに対し、ニューヨークの警官たちがボイコットに乗り出した。この“41 Shots(41発)”というタイトルは、西インド諸島からの移民である男性が、持っていた財布を銃と間違われ、警官たちに射殺された際に、発砲された弾丸の数である。警察官の組合、Fraternal Order Of Policeニューヨーク支部の支部長、Bob Lucenteがこうコメントしている。「彼は素晴らしい曲を作っているアーティストで、米国旗を掲げ上げるような、愛国心と誇りに満ちた曲もたくさんあるのに、今やその旗を海へ投げ捨ててしまった」。音楽全般への鋭い批評が得意なようなLucenteは、Springteenが“クズのような人間に成り果ててしまった”と付け加えた。初めのコメントのたとえが、我々には高尚すぎてわからないといけないと思ってようで。 デンマークのコペンハーゲンで行われたPearl Jamのライヴで悲劇が起こった。5万人の観客が、Eddieの制止も聞かずステージ前に押し寄せたために、9人の死者と多数の負傷者を出す惨事となってしまった。 ラテックス製のElvis Presley、James Brown、Coolio、Willie Nelsonの人形がElvisの「Jailhouse Rock」にあわせて動き回るLipto Brisk Iced Tea(缶アイスティー)の奇妙で薄気味悪いTVコマーシャルで、大勢の人の背筋が寒くなった。もちろん、Willieの人形は、本物そっくりだったんだけど…。 |
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