――今回のツアーの手応えはどうです?
マイケル:何もかもがグレイトだ。オーディエンスの反応はどこに行っても素晴らしいし、それがバンドの背中を押し続けてくれてる感じで。日本のファンがこんなにも熱狂的に俺たちに夢中になってたことって、過去あったっけ?(笑)
――しかも'80年代のハノイ・ロックスを現体験していない若い世代のファンが多かったりもしますもんね。
マイケル:まったくだね。今って、過去のどんな時期と比べても若いオーディエンスが多いんじゃない? これは喜ぶべき現状だよ。それ自体が、俺たちの音楽がタイムレスなものだってことを証明してると思うしね。キッズがたくさん集まってくれるのはナイスなことさ。もちろん彼らの親世代だって大歓迎だけど(笑)
――若い世代を引き寄せることができたのは何故だと思ってます?
マイケル:俺たちのスピリットが伝わったんだろうな。ロックンロールってのは気持ち次第のもんでさ。気持ちがロッカーのままなら、人間、若々しいままでいられるんだ。つまり俺がいくつになろうと、精神年齢的には会場に集まってくれるキッズと大差ないってこと(笑)。しかも年月を重ねてきたことで、たっぷりといろんなことを経験してきたから、少しは賢くもなってるし、俺もアンディもソングライターとして成長してる。そういう時期に幅広いファン層を得られてるっていうのは、考えようによっちゃ、ごく自然なことだと思わない?
photo:Yuki Huroyanagi |
――確かに。そのアンディとの関係は、今、どんなふうに変わってきてます? 当初、再合体した頃はやっぱり試運転的な感じだったわけですよね?
マイケル:まあね。今は……アンディとはもう2度と会いたくない。もちろん冗談だけど(笑)。とにかく2人の関係はいい方向にしか転がっていかない感じだね。時間が経てば経つほどお互いに対する理解も深まるし、関係が悪化するような要因が見当たらない。正直なところ、昔は今ほど親密じゃなかった。双方が人間として成熟してきた今だからこそ、いい関係でいられるんだろうと思う。もちろん今だってアンディのことすべてを知ってるわけじゃない。ていうか、そこまで知りたくないな(笑)。良好な人間関係を維持するには、ちょっとだけ秘密の部分を持ってるほうが良かったりもする。
――ハハハ。なんか将来的には今作以上に密度の濃いコラボレートが期待できそうですね。
マイケル:うん。『トゥエルヴ・ショッツ・オン・ザ・ロックス』については、確かにクレジット上は俺の名前の比率が高くなってる。でもそれは単純に、俺が自分のソロ・アルバム用に書きためてた曲をここで使うことにしたからでしかない。実際はすごく対等な関係にあるし、今後、コラボレートはもっと強力なものになっていくと思う。
――現在のハノイ・ロックスは“マイケル&アンディ+サポート・メンバーたち”という図式に見えるんですけど……。
マイケル:他の連中が、ある意味“バック・アップ”に徹すべきメンバーだってことは否定しない。だけど実際、バンドとして日に日に良くなってるし、特にリズム隊の2人は俺のソロ活動にも長年付き合ってくれてるヤツらでね。彼らの協力に俺は感謝してるし、彼らもこのバンドで多くのチャンスが得られてる現実を楽しんでる。バンドとして、すごくいい成り立ちをしてると思うよ。間違っても独裁的なわけじゃなく、俺とアンディは彼らに対してオープンだしね。“アイデアの持ち込み大歓迎!”って言ってあるんだ。
――バンドとして、とても健康な状態といえそうですね。過去、山あり谷ありの歴史を歩んできたあなた方ですけど、ここで何か、若いバンドたちに向けてのアドヴァイスとかって、お願いできます?
マイケル:GOOD LUCK!!(笑) そうとしか言いようがないよ。何ごとも経験しなきゃわからないことばかりだし。だけどひとつ重要なのは、ユーモアのセンスを忘れないことじゃないかな。ものごとについて深刻になり過ぎるのはあまり良くない。
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――なるほど。正直なところ、あなた自身、新生ハノイ・ロックスがここまでうまくいくと思ってました?
マイケル:まさか(笑)。ただ、誤解してほしくないんだけど、そんなにもスムーズにコトが運んだわけじゃないんだぜ。そこにはハンパじゃないハードワークがあった。俺たちは新しく生まれ変わったんであり、これはいわゆるリユニオンじゃないんだ。年食ったヤツらがカネのためだけに集結して、ホントはお互いのことが大嫌いでホテルも移動手段も別々だったりするくせに“伝説のバンド”を装ってたりするようなのとはね(笑)。
――もしかしてセックス・ピストルズの話?
マイケル:かもね(笑)。実際、俺たち、たいして稼いでるわけでもないし。俺の楽器は今、みーんな質屋に入ってる(笑)。それで新しい衣装を作って、いつも自分で洗濯してる。裁縫とかもホテルの部屋でやってるしね。つまり、まだ衣装係を雇うほど儲けてないってこと(笑)。
――若いバンドはそういうところを見習うべきかも。仮にこれがもしも金儲け目当ての再結成だったとしても、喜ぶファンはいたと思うんです。でも僕は、バンドが本当に“今”を生きてるんだってライヴで証明されたことがとても嬉しかったです。
マイケル:サンキュー。俺もそこにいちばん満足してるんだ。これはノスタルジーじゃない。ここには未来があるんだ。ま、次に日本に来るときには衣装係くらい雇えてたらいいなって思うよ(笑)。だけど今はマジでこれが楽しいんだ。楽しくて充実してるから何ごとも苦にならないんだよ。