『Greatest Hits』 ユニバーサル インターナショナル UICP-9002(初回盤) UICP-1028(通常版) 2001年11月7日発売 2,548(tax in) 【CD-1】 1 Boys Don't Cry 2 A Forest 3 Let's Go To Bed 4 The Caterpillar 5 The Lovecats 6 Inbetween Days 7 Close To Me 8 Why Can't I Be You? 9 Just Like Heaven 10 Lullaby 11 Lovesongs 12 Pictures Of You 13 Never Enough 14 High 15 Friday I'm In Love 16 Mint Car 17 Wrong Number 18 Cut Here 19 Just Say Yes 【CD-2】 (全曲アコースティック・ヴァージョンによる 初回盤のみのボーナスCD) 1 Boys Don't Cry 2 A Forest 3 Let's Go To Bed 4 The Walk 5 The Lovecats 6 Inbetween Days 7 Close To Me 8 Why Can't I Be You? 9 Just Like Heaven 10 Lullaby 11 Lovesongs 12 Never Enough 13 High 14 Friday I'm In Love 15 Mint Car (初回盤) (通常盤) | | そもそも『Greatest Hits』というアイディアは 僕ら自身から出たわけじゃないんだ | ――今回のグレイテスト・ヒッツ盤のために、アコースティック・ボーナスCDを新たに録音した理由は何でしょう? ROBERT:そもそも『Greatest Hits』というアイディアが、僕ら自身から出たわけじゃないってことが一番の理由だね。バンドから提案してないものをやるなんて初めてなんだよ。僕らが発信源じゃない企画なんて今までなかったから。今回のはレコード会社のアイディアで、アートというよりも商業的な考えから出てきたものだった。僕らからしてみれば、Cureのファンがこの企画を知ったらたぶん……特に去年『Bloodflowers』のアルバムとツアーで興奮と満足を得た後だけに、ちょっと「おいおい!」みたいな状況になるんじゃないの、って感じだったんだ。 だって、みんなはおそらく(『Greatest Hits』に収録されているようなものは)もうほとんど全部を持ってるわけだから。いくつか新曲を入れたところで、実際のところ人々を熱狂させるには足りないわけだし――僕らを熱狂させるにも全然だったしね! だから、このアルバムをもっとエキサイティングで、楽しめるものにするにはどうしたらいいかって知恵を絞ったんだ。で、アコースティックに曲を作り直すっていうアイディアが通ったわけ。とても面白かったし、楽しかったよ。それに、ウェブ上のファンサイトでいろんなリアクションを見る限りでは、今のところ少なくともこの試みは成功してるみたいだ。当初の企画より断然ファンにとって楽しみなものになってると思うよ。 ――数年前にベスト盤を出したばかりなのに、また、というのは確かに少々うさん臭い感じはしますけどね。 ROBERT:ああ、それは否めないだろうなぁ。でもこの話の背景を言うと、実は11~20年目のシングルA面を全部集めた『Galore』を発表しようと決めた時も、レコード会社から「『Greatest Hits』が欲しいね。この10年に出したシングルから5曲選んで、'80年代の8、9曲と合わせて『Greatest Hits』ってタイトルにして、めちゃくちゃ売り込めば絶対大成功だよ」って言われたんだ。僕は「嫌だね」って答えた。興味がなかったからね。僕は『Galore』を、最初の10年間のシングルを集めた『Standing On A Beach』と同じようなものにしたかったんだ。だけど、最終的にはレコード会社側の思い通りになってしまった。彼らは(『Galore』には)見向きもせず、プロモーションも全然してくれなかった。その時点で僕には分かってたんだよ、彼らが遅かれ早かれ必ずまた僕のところに来て、「な、俺たちには『Greatest Hits』が必要なんだよ」って言うだろうってね。 僕的には『Greatest Hits』は今出すべきものじゃないと思うんだけどさ。バンドが終わりを迎えるくらいまで待ったほうがいいんだよ。だけど、レコード会社との契約延長にサインしなかったもんだから、彼らとしてはもう待っていられなくなったんだ。さもないと契約が切れて自分たちの首を絞めることになるわけだから! 商業的な理由というのは残念なことだけど、でもそれを知ったからといって、僕が(『Greatest Hits』を)成り行きまかせにして、無意味な結果に終わらせるってことにはならないからね。実際、いい新曲をいくつか入れたり、アコースティックCDを付けたりして、自分が誇りに思えるようなものに仕上げたつもりだよ。 ――アコースティック・ツアーとかアコースティック・ショウをやる予定はありますか? ROBERT:いや、夏にこのアルバムを編集した時――この企画そのものに取りかかって、新曲やアコースティックものをレコーディングするためにスタジオに入った時に決めたんだ。『Greatest Hits』関連でショウをやるのは止めようって。理由は主に2つあって、1つは去年、ものすごく楽しい思いをしたから、そのフィーリングを保ちたかったこと。もう1つは、'97年に『Galore』をリリースした時にやったプロモーションを思い出したから。誰ひとりとして楽しんでなかったんだよ、あの時は。事実、去年は100回くらいショウをやった中で、いくつもの曲をプレイしたけど、『Greatest Hits』に収録されているものは3曲くらいしかやらなかった。つまり、今のバンドを表現できるようなものじゃないってこと。で、僕らとしては何となく……とりあえず形だけやりますってのは違うんじゃないかと思って。あのへんの曲をステージでやって楽しめないってのも辛いからね。それに、誰も飛び上がって「そうだよ、やろうぜ!」とは言わなかった。だから、新しいアルバムを作るか、外に出てショウがやれるくらい新曲がたくさん出来るまで、待ったほうがいいだろうってことになったんだ。 ――あなたはこの企画にはあまり乗り気じゃなかったようですね。むしろ、新曲を作るほうに意識が集中しているように思えますが。 ROBERT:まあ、そうだね。今年の春にソロアルバムを完成させるつもりだったんだけど。実はこの2年の間に2回も中断してて、今回で3回目なんだ。だから、ちょっとフラストレーションが溜まってるよ! どうもアルバムを仕上げるだけのまとまった時間が取れそうになくてね。そんなところにバンドが新曲をレコーディングすることになって――あのアルバム(『Greatest Hits』)に入れた2曲の他にも、いくつか新曲をレコーディングしたんだけど――それがまたバンドとしての心のドアをノックすることになった。「何か新しいことができるんじゃないか?」ってね。だから、うん、何か新しいものを作りたいって願望は絶対にあると思う。 今回のプロジェクトで個人的に一番良かったのは、新曲ができたってことだね。バンドとしては、アコースティック・ヴァージョンをプレイできたことが本当に良かった。とてもいい経験になったよ。アコースティック・ショウのオファーは今までにも受けたことがあるけど、今回のは純粋にファンのためだからね。ファンのためにアルバムの初回プレスに付いてくる限定盤を作ったわけだから。ファンの人たちにとって聴くのが待ち遠しいものになったし、楽しんでもらえればいいなと思う。でも、ステージに出て大道芸の真似事をするってのはちょっと違うよ! アコースティックに作り直したものの何曲かは本当に良く出来たと思うけど、中にはそうでもないものもあるんだ。アコースティック演奏に限って言えば、僕らの得意分野ではないと思う。単純に楽しんでるだけさ。でも、僕らは別にヒッピーバンドってわけじゃないよ! ただ、幅広いサウンドのパレットを使ったほうがより楽しめると思うんだ。 多くの曲がいい感じに年をとっていることに、嬉しい驚きを感じてる。いや、全然年をとっていないと言うべきかな | ――アコースティック・ヴァージョンで最も気に入っているものはどれですか? 中でも良く出来たと思うものがある、と言ってましたよね。 ROBERT:最初から上手くいくことが目に見えていたものは、やっぱりいいね。アコースティック演奏に向いている曲、例えば“Just Like Heaven”みたいな……。この曲はもともとアコースティック・ギターを使って書いたから、成功するだろうってことは分かってたんだ。少しでもそういう手応えのあるものは、とにかくやってて気持ちが良かった。サウンドもすごく新鮮だし。でも、これはダメだろうと思ってて、やってみたら気に入ったってものもあるよ。“Never Enough”なんかがいい例だ。この曲(のオリジナル)の基調は、ドラム・ループと極めてロックなギター・サウンドだからね。これもやっててとても楽しかった。それから“Wrong Number”、これは完全にエレクトロニックが軸になっていて――“エレクトロニカ”と言ったほうがいいかな――ループと電子音とサンプリングだけで成り立ってる。これをアコースティック曲として、アコースティック・ギター1本で作り直す作業も、すごく楽しかったな。それぞれが違った雰囲気になってるけど、まさか成功しないだろうと思ってたものの仕上がりにもめちゃくちゃ満足してる。と言っても、オリジナル・ヴァージョンを知ってて初めて分かることだけどね。アコースティック・アルバムだけを聴かされたら、最後には「はぁ?」って感じになるんじゃないかな。 ――“Wrong Number”と“Never Enough”の仕上がりには、すごく驚きました。まるで全然違う曲じゃないですか。 ROBERT:だろ? これも面白いんだけど、年代順にレコーディングしていったんで、後のほうになると何だか気がゆるんじゃってさ、いろんな意味で! 聴いてみると面白いよ。まるでパフォーマンスみたいなんだから。特に“Wrong Number”の、あのデカいギターソロのところなんかは……みんなが少しでもリラックスできるように、それぞれの曲を2回ずつ録ったんだけど、その一方をやってる途中、ちょうどそのギターソロで全員が椅子から滑り落ちて演奏がストップしちゃったんだ。あまりにおかしなサウンドだったんで、みんな笑っちゃってさ。2回目はもう少しプロフェッショナルにやろうと努力したよ! でも、やっぱり笑いをかみ殺してるようなノイズが入ってるんだよね。 ――コンピレーションアルバムに収録されている曲の中で、あなたが今でもベストだなと思っているものはどれですか? ROBERT:多くの曲がいい感じに年をとっていることに、嬉しい驚きを感じてる。いや、全然年をとっていないと言うべきかな。今聴いても……その時代の曲じゃないみたいで。主に、僕らがレコーディングで他の奴らと同じような音を出すこと、つまり、「いま他のみんなが使っているものは僕も使わなきゃ」的な概念にあまり興味がなかったせいだと思う。その時“ホット”なプロデューサーと仕事をする場合に起こる弊害の1つだよね。数年後に聴き直してみたら周りの奴らと全く同じサウンドだった、みたいな。おそらく僕らの初期の曲は、それがなかったから良かったんじゃないかな。自分で何もかもやる、一風変わった音を出す、ということにこだわってたから。他の誰かみたいなサウンド、なんて絶対嫌だったんだ。そういう意味では、“Let's Go To Bed”が(『Greatest Hits』の)アルバムの中では実際最悪だね。それから“The Walk”も多分そう……この2曲は確かにその時代の音をしている。他はどれも、この20年間いつ出て来ていてもおかしくなかった曲だと思うよ。 ――確かにその2曲はシンセサイザーとプロダクションが原因で、その時代にありがちなサウンドになっていますね。でも、メロディは今でも十分素晴らしいと思うんですが。 ROBERT:うん、アコースティック・アルバムをやってて、ほとんどの曲はポップソングとしてとても上手く組み立てられているなとつくづく思った。ごまかしのテクニックに頼りすぎてもいないし。音楽を始めた頃、僕はいつもこういうことがやりたいと思ってたよ。Beatlesみたいにポップソングが作れるグループでやりたいってね。で、遂にそれが実現して、今度は――ちょうどBeatlesがそうだったみたいに――もっと面白い音楽も作りたいな、と考えるようになったのさ。 ――普段はアコースティック・ギターを使って作曲するのですか? ROBERT:主にアコースティック・ギターかベースだね。他の楽器は一切使わないってくらい。ごくたまにピアノを使うこともあるけど、あまりのヘタクソさに気分が悪くなっちゃって、たいてい上手くいかないんだよ! 僕が自分で全部仕切るって決めた。もう十分大人なんだから、甘えてばかりいるわけにはいかない | ――ソロアルバムについてもう少し聞かせてください。 ROBERT:『Bloodflowers』のデモを制作してた頃に、(ロンドンの)カムデンでやってたんだ。実際にスタジオに入って、自分1人でやるってとこまでいったんだよ。でも、『Bloodflowers』に入っている曲、ああいうのをバンドでやるべきだと思ったんだ。今はCureのアルバムで、ああいう音楽をやる時だとね。それに、他の人たちにもそうしたほうがいいって説得されたし。だからソロ・プロジェクトを保留にしたんだ。去年『Bloodflowers』のツアーから戻った後に再開したものの、その後またバンドのライヴをいくつかやることになって、また中断してしまって。で、今年また同じようにやろうとしたけど、今回のベスト・アルバムが出ることになってまたもや棚上げになってしまった。 基本的には曲の寄せ集めみたいなもので――曲はもう出来てて、土台はもう録音済みなんだけど――それぞれの曲を違ったアーティストとコラボレーションしていたんだ。だから、まとまった時間が必要だった。他の人たちのスケジュールに合わせて仕事しなきゃいけないわけだからね。いつでも自分の気の向いた時にってわけにはいかない。そういうコーディネートをしなきゃいけない部分が一番の難関なんだよ。だって、みんなをつかまえるために、年に9カ月もあちこち転々としたいとは思わないしさ。だから、かなり前もってそういう人たちのスケジュールを確保しておかなきゃいけないわけ。ちょうど今、その作業をやってる最中なんだけど、上手くいけば来年の1月か2月にはアルバムを完成させられるんじゃないかな。 ――アルバムに参加するアーティストの名前を教えてもらうことはできますか? ROBERT:言えなくはないんだけど、やっぱり嫌だな。今言ったら、出来上がった時に話すことがなくなっちゃうから! 僕が誰とやるのか、ファンのサイトはもう半分くらい突き止めたみたいだけど……。僕は音楽業界の中でも限られた人しか知らないからね。その数少ない知り合いのことが好きだし、ラッキーだと思ってる。いやその逆かもね。好きな人たちだから、知り合いになれた。だから、大体のところはすぐ分かっちゃうんじゃないかな。まあ、1人や2人はびっくりするような人もいるけどね。その人たちが参加してくれればいいなぁとは思ってるんだけど、実際にはまだアプローチしてないんだ。このプロジェクトをちゃんと進めるために、絶対イエスと言ってくれることが分かっている人を先に集めようと思って。 それをやる上での大きな問題は、大手のレコード会社にも話をつけなきゃいけないってことなんだ。所属アーティストが僕の作品に参加することに同意してもらわなきゃいけない。嘘みたいにイライラさせられることもあるよ。まだ話も決まってないのに、みんなこのアルバムが、いったい最終的にどこのレーベルから発売されるのかってことを、やたら気にしてるんだもの。舞台裏はそういうつまらない戯言ばっかり。ちょっとがっかりだよ。僕が『Greatest Hits』をやるために時間をあけたのは、たぶん良かったんだろうね。このプロジェクトについてちゃんと考えて、問題を整理する時間がレコード会社側に出来たわけだから。それも僕抜きで。 ――そういえば、Run-DMCのニューアルバムが発売までにこれほどの時間を要したのは、あまりにもゲスト・スターが多すぎて、レコード会社とトラブルになったことが1つの原因だと思いますが…… ROBERT:全くおかしな話だよ。メジャーレーベルで相当の高い地位にある人たちは、とにかくお互いを嫌いあっているのさ! 自分の会社のアーティストを“敵”のアーティストと共演させたくないんだよ。そんなバカバカしいレベルのことなんだ! こっちはみんなの個別の問題には触れないように気をつけながら、すべての物事を処理していかなくちゃならない。音楽を作るってことは本来、楽しい作業であるはずなのに。こういう問題にぶつかると、自分がやってるのは実は商売なんだってことを思い知らされるよ。僕自身はただ楽しんで音楽をやってる数少ない人間の1人だと思ってるんだけどね。 ――でも話を聞いていると、音楽業界の煩雑さからとても上手に身をかわしているようですよね。 ROBERT:まあね。僕らは今までずっとFiction Recordsと契約してきたってことで、ある部分恵まれてたんだよね。所属しているのは僕らだけで、ほとんどインディペンデントレーベルみたいな会社なんだけど、僕らと現実世界の間で盾みたいな役割を果たしてくれていて。つまり、僕が電話で話をするのは今までは2人しかいなかったんだ。だからこそ、業界で起こっているような論争の多くを回避することができた。彼らには僕が何に賛成して、何に反対するかちゃんと分かっていたから。間に入って調整するのは本当に骨の折れることだよ。でも、それももう終わりだ。僕が自分で全部仕切るって決めたから。もう十分大人なんだから、甘えてばかりいるわけにはいかない。メジャーレーベルの人たちと直接仕事をするのは、少しいい目覚ましになるよ。中にはすごくいい人もいるし……アーティストと直に話ができることをとても喜んでくれるようなね。めったにないことだと思ってくれてるんだ。まあ、あまりに非常識すぎるって言う人もいるけど。型破りだって! それがちょっと問題なんだよね。 ――音楽業界で仕事をしている人の多くが、それほど音楽好きじゃないというのは驚きですよね。 ROBERT:いや。ただ今の問題は、本当に優秀な人たちの入れ代わりがあまりにも激しいって事実が絡んでるんだ。少しでも仕事ができる人は皆、気がつくとどこかへ消えてしまうんだから! だから君が言ったみたいに、音楽的バックグラウンドのない人が、ほとんどの物事を決定するようなことになるんだよ。セールスがものを言うんだ、残念ながらね。と言うか、今まで常にそうだった。けど、10年前にはまだこの業界も、すべての力が一握りの限られたバンドだけに向けられるほど閉鎖的な感じじゃなかったんだ。なのに今じゃ、この枠組みの外でバンドをやるなんて、不可能に近いんだ! By Lyndsey Parker/LAUNCH.com 【後編】に続く | |