Latest“The Black Crows”
'99年発表の5thアルバム『By Your Side』では、The Black CrowesはAerosmithの『Nine Lives』を手掛けたプロデューサー、Kevin Shirleyとともにシェイプアップしたことを思わせるソリッドなサウンドを聴かせ、ファンを驚かせた。
それはドラッグに溺れていたと思しきThe Black Crowesが“クリーン”になり、みごと復活を遂げたことをアピールするには十分すぎるほどだった。その後、バンドが以前にも増して精力的に活動するようになったことを考えれば、そこに疑問の余地はない。
まず、彼らはJimmy Pageとツアーを行ない、Led ZeppelinとThe Black Crowesの代表曲、そして古いブルース・ナンバーを一緒に演奏した。Jimmy Pageの背中の痛みが悪化した為、ツアーは途中でキャンセルされ、The Black Crowesはキャンセルによる収益損失の補填を求め、世界有数の保険会社Lloyd's Of Londonを相手どり訴訟を起こすことにもなったけれど、ツアーそのものはバンドにいい影響を与えたようだ。
因みにツアーの模様を収めたライヴ・アルバム『Live At The Greek』は今年2月、ゴールド・ディスクに認定された。
そして今年3月、Crowesは二つのビッグ・イベントを抱えている、と発表。ひとつは2001年5月8日のV2 Records移籍第一弾となるニュー・アルバム『Lions』のリリース(日本は先行で4月25日に発売)、もうひとつがOasis、Spacehog(グラム・ロック)を従え、全米を周る「TOUR OF BROTHERY LOVE(兄弟愛ツアー)」だ。
スタイルもサウンドも異なる、この3バンドが、どうして? と思うファンもきっと多いことだろう。そんな疑問に対して、Chris Robinsonは、それぞれのバンドのファンであることに加え、OasisのGallagher兄弟とSpacehogのLangdon兄弟が、彼と彼の弟でバンドのギタリストであるRich Robinsonがやってきたことを賞賛してくれる数少ないロック・ミュージシャンだからだ、と答えている。
「兄弟愛ツアー」はアルバム・リリース後、5月11日のラスベガス公演からスタートする。この組み合わせ、日本に来ないものだろうか?
アルバムのリリースに先駆け、The Black Crowesは2001年3月16日、テキサス州オースチンで開催された音楽見本市、“South By Southwest”に出演。バーベキュー・レストラン、Stubb’s Barbequeの屋外ステージで新作の曲を5曲を含む全15曲を演奏した。
どうやら、バンドは2回目の黄金時代を迎えようとしているようだ。最新作『Lions』は、まさにThe Black Crowesが頂点を究めたことを高らかに宣言する一枚と位置付けられるだろう。
プロデューサーにDon Wasを迎え、ニューヨークにある古いユダヤ人の音楽ホールでレコーディングされた同作は、従来のルーツ・ロック・サウンドに加え、Jimmy Pageとツアーした影響か、Led Zeppelinを思わせるハードロックや、ブリティッシュっぽいメロディ・ライン、そしてサンプリングやループを使ったテクニカルな音作りにもアプローチしている。これまでルーツや、良くも悪くも自分達の「音」にしばられていた彼らが、ここではそんな新機軸を、従来のブルース、R&B 、ゴスペルと一緒に飲み込んでいる。前作よりもスピードを抑え、ゆったりと大きなグルーヴを描く演奏とChris Robinsonの歌いっぷりが素晴らしい。まさに絶好調だ。
因みに初回盤のみ、特典としてインターネット上でバンドの無料コンテンツにアクセスできるCD EXTRA仕様になっている。その無料コンテンツはライヴ映像、未発表を含む音源などで構成されているそうだ。 |
| 『Lions』 V2 Records V2CI 97 2001年04月25日発売 2,520(tax in)
1Midnight From The Inside Out 2Lickin' 3Come On 4 No Use Lying 5 Losing My Mind 6Ozone Mama 7 Greasy Grass River 8 Soul Singing 9 Miracle To Me 10 Young Man, Old Man 11 Cosmic Friend 12 Cypress Tree 13 Lay It All On Me 14 Love Is Now(日本盤のみボーナス・トラック)
| おもいっきりロックンロールなアルバム『By Your Side』から約2年半、ザ・ブラック・クロウズの新作『Lions』がリリースされた。10年のキャリアを包括したベスト盤を古巣アメリカン・レコーディングスへの置きみやげにV2レコーズへ移籍した彼らの、新たな世紀はここから始まる。
「許される限りの自由な環境の中で生まれたのが『Lions』なんだ」と語るのは、Rich Robinson(G)だ。'90年のデビュー作『Shake Your Money Maker』がレコード会社にもたらした膨大な利益は、その後の彼らの活動に少なからずの制限を与えていたようで、
「バンドとして違うことにチャレンジしながら成長していきたい俺達は、売れる要素(『Shake~』との類似点)を探そうとするレコード会社と、いつも闘わなければいけなかった。でも、今回は違う。新しいレーベルは、俺達の過去ばかりを見るんじゃなく、サウンドを変えることに関しても好意的に受け取ってくれてるんだ」
Richの兄であるフロントマン、Chris Robinsonも「自分達の作りたい音楽を好きなように作れる自由は、大きいよね」と、満足気な表情を見せる。
こうして晴れて自由の身となった(!?)彼らが今作でしたことは、「沸き出る感情にまかせて音楽を作る」ということだった。
「ただアルバムを作りたかった。どういう音楽が自分達から生まれてくるのか、とりあえず作ってみたかったんだよ」とRichは言うが、それには、'99年から2000年にかけて実現したJimmy Page&The Black Crowesのツアーによる影響もある。
「Jimmyとのツアーで、俺達は初めて自分達の音楽から離れた。そして、また自分達の音楽に戻った時、新たなエネルギーや喜びを感じ、Crowesというバンドのアイデンティティをより深く理解できるようになったんだよね」
全曲の歌詞を手がけるChrisもまた、こんな風に話している。
「ストレートな歌詞かどうか、っていう点から言うと『By Your Side』の歌詞の方がもっとストレートでシンプルだったんだけど、でも今回のアルバムはもっと<俺達の純粋な要素>から生まれたレコードだからね。そういう<純粋な要素>から生まれた音楽は、やっぱり何からも汚染されていない<純粋な音楽>になるし、透明感があるというか、澄んでいるはずだよ。過去には自分の中で混乱も経験したりしてきたけど、そういった状況を乗り越え今みたいにハッピーな状況になってしまうと、音楽も自然と透明感を増すんじゃないかな」
ハッピーな状況──それは前述したような自由を手に入れたことでもあり、さらにChrisの私的な部分に触れるなら、2000年末、12歳年下の可愛い奥様(映画『Almost Famous/あの頃ペニー・レインと』でアカデミー賞にノミネートされたKate Hudson)と新婚生活をスタートさせたことでもある。
ともあれ、『Lions』には、現在のCrowesがバンドとしての充実期を迎えながらそこにとどまることなく、5年、10年、20年先の未来を見据えて音楽と向き合っている姿が投影されている。だからこそ、こんなにも『Lions』は力強く、ポジティヴで、高揚感に溢れているのだ。
さて、Crowesといえば、ライヴ。
2001年5月11日からはOasis、Spacehogと共に『The Tour Of Brotherly Love(兄弟愛ツアー)』と銘打ったツアーをスタートさせる。3バンドとも兄弟バンドであるけれど、不仲説には事欠かなかったCrowesとOasisが兄弟愛とは…思わず苦笑してしまうのは私だけ? Richがいきさつを教えてくれた。
「以前、Noelがロンドンでのライヴに来てくれたんだ。そこで知り合いになったんだけど。その後、Kateがイギリスで撮影をしてたから、そこにいたChrisがNoelやLiamとつるむようになって、今回のツアー話が出たんだ。彼らも俺達とツアーしたいって言ってくれたし、俺達も彼らの音楽が好きだからね。ライヴはまだ観たことないんだけど」
途中でGallagher兄弟がケンカしてツアー中止なんてことになりませんように、と心配をぶつけたら、「大丈夫。彼らがダメになっても、俺達はツアーを続けるからさ」とRichは笑った。
いずれにせよCrowesは、今夏、単独公演としては9年ぶりとなる日本公演も予定している。ライヴ・ジャンキーを自負する彼らのステージは、どんなに期待を大きくしても裏切られることはない!と断言できる。あの、熱く、エネルギッシュで、ダイナミックで、奔放なロック・ライヴの醍醐味こそ、Crowesの真骨頂。ChrisとRichは口を揃える。
「ライヴは大好きだよ。バンドがツアーしなくて、どうするの? ツアーは、俺達の一部なんだからさ」 |
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