【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.15「パリに心を寄せる」
非道極まりない事件がパリで起きた。襲撃された場所のひとつがライブハウスだったことを受け、音楽を愛する者の一人としてもひどく動揺している。
11月13日の夜、Bataclanという1500人収容の会場はEagles of Death Metalのファンで埋め尽くされていた。ライブ開始から1時間が経過し、終盤に差し掛かったその時にテロリストたちが現れ、超満員の客席に向かって銃を乱射。バルコニーから階下の客席に銃口を向けていた銃撃犯もいたという。
客席は一瞬でパニック状態に陥り、逃げ惑い、叫び、出口を求めた。その人たちのほとんどが10代や20代だったという証言など、その場にいたオーディエンスへの取材によって当時の状況が徐々に明らかになってきている。BBCによるとバンドのメンバーは無事で、ツアーを切り上げてUSに帰国するようだ。
各国のニュース記事を読み進めているのだが、現場の状況があまりにも悲惨過ぎる。海外メディアの中には、日本のオブラートに包まれたそれとは違い、事実をそのまま報道する機関もある。例えば、ぼかしは入れるが遺体が映り込んだ衝撃を与える写真を使用するといった風に。今朝は遺体が横たわる銃撃後のライブ会場内を写した1枚と大切な人を失った人々を捉えた写真に絶句させられた。この心の不快なざわつきは永く消えないだろう。
パリ市内8か所での襲撃によって殺害された129人は丸腰の一般市民だ。人殺しにも信じる何かがあるらしいが、殺人を犯すことで達成できる何かがあるような曲がった信仰に引き込まれてはいけない。絶対にダメだ。好きな音楽を楽しむために集まった自由な場、芸術の場で、80人を超える音楽ファンが殺されるなんてことはあってはいけない。
EODMのライブ会場で亡くなられた方の中には今回のヨーロッパ・ツアーの物販を担当していたニック・アレクサンダー氏も含まれるとローリング・ストーン誌やBBCが報じている。
36歳だった彼は、こんなことさえなければ、きっと今日も明日も世界をガンガン回って各地の音楽ファンにアーティスト・グッズを届けてくれたはずなのに、誤った信念を持つ人間の非道な行為によって命まで奪われた。同じ音楽界で仕事をする同胞として、その死の訪れ方は受け入れ難く、とても悔しくて悲しい。
それぞれの国を、または世界を飛び回るミュージシャンやそのクルーがローカル・クルーと共に、安全にステージを作り上げられて、世界中の音楽ファンが安心して音を楽しめる世であってほしいと常に願っているが、それも難しい時代に突入したようだ。また、自分に何ができるかを考えて行動したいという意思は持っているが、シリアや世界の問題について一般市民の私にできることは、その事態を知り、テロリズムが生じてしまう原因について考え、人の道に反した勢力には加担しないこと、そして、今隣にいる人とうまく付き合っていけるように努めることだと認識している。なるべく喧嘩をしないように、そして自分の主張を他人に押し付けないようにしなければ。
今は平和な日本にいるおかげで、こんな悠長なことを言っていられる有難い現実をしっかりと自覚し、争いを避けるために自分のできることを一人一人が行うことが大事なはずだ。不安を煽りたくはないけれど、テロはもはや対岸の火事ではない。政府の在り方、延いては私たちの在り方次第で、テロ行為の標的にもなり得るし、空爆行為に加担、またはその被害に遭うかもしれないのだから。
最後に、Eagles of Death Metalを知らない人に伝えたいことがある。私が彼らを見たのはかなり前の2007年1月。ロンドンのSOHOにある元ストリップ劇場での女子限定ライブだった。確かSMASHのHさんに「是非是非見てきて~!!」という熱いレコメンドをいただいて、予習なしで見に行ったはず。その時も今回同様にJoshは不参加だったのだが、最高に楽しくて、艶っぽい夜になったことを当時BARKSでも綴ったと記憶している。不本意な形で知られることとなった彼らだが、彼らの音楽にもぜひ触れて欲しい。
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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