栄光をなげうち、新しい茨へ…

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最も嫌われたバンドから英国の国民的人気バンドへ。
そして、ここに、まだ見ぬ世界へ踏み出したアグレッシヴな実験作が…!


栄光をなげうち、新しい茨へ…


『KNOW YOUR ENEMY』

EEPICインターナショナル SCA-8283
2001年3月14日発売 ¥2,520(tax in)

1. FOUND THAT SOUL
2. OCEAN SPRAY
3. INTRAVENOUS AGNOSTIC
4. SO WHY SO SAD
5. LET ROBESON SING
6. THE YEAR OF PURIFICATION
7. WATTSVILLE BLUES
8. MISS EUROPA DISCO DANCER
9. DEAD MARTYRS
10. HIS LAST PAINTING
11. MY GUERNICA
12. THE CONVALESCENT
13. ROYAL CORRESPONDENT
14. EPICENTRE
15. BABY ELIAN
16. FREEDOM OF SPEECH WON'T FEED MY CHILDREN
17. JUST A KID
18. THE MASSES AGAINST THE CLASSES


「You Stole The Sun From My Heart」
「If You Tolerate This」

フジロックフェスティバル2001出演決定!

Manic Street Preachers(7月27日)

フジロック2001の詳細はこちら
ビートルズストーンズ、またはセックス・ピストルズでもいいけど、有名ロックバンドの歴史はどれもドラマティックでスキャンダルの匂いが充満している。

彼らのバイオ本やドキュメント・ビデオなどで描かれている歴史は、多少脚色してあるであろう部分を差し引いても十分に劇的で、たとえロックバンドに興味のない人でも下手な大河ドラマの数十倍は感動してしまうのではないだろうか。

彼らロックバンドの歴史の面白いところは、けして、意図してその茨(言いようによってはビクトリーロード)を歩もうとしたのではなく、自然にその道を進まざるをえなかった宿命ともいうべき十字架を背負ってしまった点であろう。

いつだったかオノ・ヨーコが「
人はいくつかの選択肢をもっているような気になっているが、それは幻想でしかない」というような運命論的なことを言っていたが、ビートルズの歴史など、まさにその言葉がぴたりと当てはまる。神話といわれる所以なのだろう。

セックス・ピストルズの「
ロックは死んだ」発言以降、音楽以外のバンドのアティテュードの面から我々に衝撃と興奮を与えてくれるアーティストが極端に減少した。まぁ、音楽で驚かせてくれるなら、それである程度満足はできる。それが彼らの本当の仕事だし。

しかし、それ以上の圧倒的で自暴自棄なほどのキャラクターが生み出すスキャンダラスな行為がまたサウンドに付加価値を与えるのもまた事実である。これは、リスナー側の勝手な要求であり、その重圧によってカート・コバーンは死んでしまったようなものなのでとても危険な問題だが。

そしてまさしく、そのカート以降、ロックスターは存在しなくなってしまった。

マニック・ストリート・プリーチャーズがデビュー以来辿った10年間。

それは、前述バンドと比肩しても遜色のないほど、ドラマ性に満ちあふれた歴史といえるだろう。

レノンが死んだときは笑ってやった」「デビューアルバムを全世界で1位にして解散」などの過激な発言で英国プレスからひんしゅくを買ったデビュー前。結局、1位に出来ず解散を撤回して、最も嫌われたバンドの称号を得たデビュー直後。'95年には主要メンバー、リッチー・エドワーズの失踪と、彼らの行動すべてがスキャンダラスであった。

そして今度こそ解散かと思われた直後に3人でリリースした『エブリシング・マスト・ゴー』が起死回生の一打となりその年のベストアルバムを獲得。一転して英国の国民的人気バンドとなったのだった。

そんな波乱の10年はファンはもちろん本人たちも想像していなかっただろう。そして、退屈な映画なら、ここでハッピーエンドで終わるに違いない。しかし、彼らはそこに安住する気もなく(居心地が悪いため)、栄光をなげうち、新しい茨を歩き出そうとしている。それが惨めな終焉を迎えるかもしれないのに。

その第一歩が、この約2年ぶりのアルバム『ノウ・ユア・エナミー』である。

昨年1月に英国オンリーでリリースしたシングル「マッセズ・アゲインスト・クラッシズ」(今回日本盤ボーナス収録)のパンクなサウンドに多くのファンが驚き、ニューアルバムは原点回帰したパンクアルバムになると噂が流れていたが、実際には確かにパンクなマニックスを感じさせるも『エブリシング・マスト・ゴー』以降のメロディアスで叙情的な面を否定しているわけでもなく内包し、それでいてさらに新しい方向性を見据えている、とてもアグレッシヴな実験作になっている。バラエティの豊富さはデビュー作『ジェネレーション・テロリスト』に似ているかもしれないが、こちらはニュートラルな姿勢のそのままのマニックスが表現されている。全18曲、無駄のないスリリングな展開に時間の過ぎるのも忘れてしまうほど。傑作といって申し分のない内容だろう。

8月には「フジロック・フェスティバル」への出演が決定。みんなで合唱する「デザイン・フォー・ライフ」やモッシュで迎える「ユー・ラブ・アス」など想像しただけで鳥肌が立ってしまう。

彼らの偉大なロック神話の1ページに我々も参加できそうだ。

文●竹中吉人

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