Vo:Steve O'Guary / スティーヴ・オウジェリー G:Neal Schon / ニール・ショーン Key:Jonathan Cain / ジョナサン・ケイン B:Ross Valory / ロス・ヴァロリー Dr:Deen Castnova / ディーン・カストノヴァ
『アライヴァル/Arrival』 (SRCS2330)2520(税込) 10/25日本先行発売
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| 取材・文●北井康仁 「アルバム・タイトルの“アライヴァル”とは、つまり僕らが“到着(アライヴ)した”という意味が込められているんだ。ジャーニーは1度メンバーが離れ離れになったけれども今またかつてのように大きな輪を作って復活した。バンドとしても一人のミュージシャンとしても、ここに新たに“到着した”という気持ちを表現したかったのさ」
待望のニューアルバム『アライヴァル』のタイトルについて、こう熱っぽく語るのはキーボーディストでバンドのメイン・ソングライターの1人、ジョナサン・ケイン。
紆余曲折に伴う数年のブランクがあったものの、ジャーニーは今年デビュー25周年を迎えた。そんな大ベテランにもかかわらず彼らの心をホットにさせるのにはそれなりの理由がある。
ジャーニーと言えば、'70年代後半から約10年に亘り作品をチャ-トの上位に送り込んだアメリカン・ロックを代表するヒットメーカーだ。そのピーク時にリリースされたヒット・アルバムは計6作、中でも『エスケイプ』('81年)が全米1位を記録した他、『フロンティア-ズ』('83年)も全米2位を獲得している。さらにシングル・ヒットに至っては20曲以上に及ぶ。
そんな彼らの代表的シングル・ヒットに「オープン・アームズ」がある。もっとも、リアル・タイム派じゃない世代にとってはマライア・キャリーのカバー・ヴァージョンの方が馴染み深いかも知れない。あのドラマティックでバラードのスタンダードと言われる「オープン・アームズ」のオりジネイターが彼ら、ジャーニーなのだ。
但し、彼らを単なるバラ-ド・バンドと勘違いされては困りもの。ダイナミックな…そう、いかにもアメリカンなパワー・ロックとドラマティックなバラードを絶妙にブレンド、大衆性溢れるサウンドをクリエイトしているところに彼らの真骨頂があるのだから。その意味ではボン・ジョヴィや'80年代後期に復活、洗練されたバラードを積極的に取り入れ、'70年代の全盛期をも遥かに凌ぐ実績を稼ぎ出しているエアロスミスの成功もジャーニーがその布石を作ったと言えるだろう。
そんな彼らも個々のソロ活動が活発となり、アルバム『レイズド・オン・レイディオ』('86年)のリリースを最後にバンドは自然消滅の道を辿る。但し、その後も再結成を望む根強いファンに後押しされる格好で96年アルバム『トライアル・バイ・ファイアー』を発表、復活する。しかし、バンドの顔とも言うべきシンガーのスティーヴ・ペリーが音楽的意見の相違を理由に呆気なく脱退、その活動は早くも暗礁に乗り上げたかに見えた。
が、それから2年の歳月を経て新ヴォーカリストにスティーヴ・オウジェリーを迎えた彼らは'98年6月、何と15年振りの来日公演を行ない、ファンの大喝采を浴び、新生ジャーニーの健在振りを印象づけた。活動を再始動させたものの、主要メンバーのスティーヴ・ペリーを失い、そして新ヴォーカリスト、スティーヴ・オウジェリーを得て奮起、今回、新作『アライヴァル』リリースに漕ぎ着けた。
この間の彼らの道程はまさにアップ・ダウンの連続といった感じだった。それだけにジョナサン・ケインのまるで手放し状態の喜びも充分理解できることなのだ。さらにギタリストでリーダー格のニール・ショーンも言葉を続ける。
「何であれ、新曲があることが嬉しい(笑)。新作の無い時期に200回もショーをこなし、過去のヒット曲をプレイし続けて来たんだから当然と言えば当然だけどね。これからまた『アライヴァル』の新曲を引っさげてツアーをする。ツアーを続ける内に新曲をプレイするクオリティも引き締まってくるからね。今からそのことを想像したら楽しみで仕方がないよ」
注目の新作『アライヴァル』はダイナミックなロック・チューンとバラードが巧みに同居する、という点では従来のジャーニーのスタイルを踏襲したような印象を受ける。アルバムをレコーディングする際、彼らは作品にどんなヴィジョンを描いたのだろうか?
「ジャーニーがこれまで紆余曲折を繰り返しながら培って来たサウンドを継承出来るのか?…この点が正直言って最も気掛かりだった。僕らとしては新生と言っても全くの別のバンドみたいな音にはしたくなかったからね。ジャーニーの伝統的なスタイルを守るよう心掛けた。ただ、セルフ・カヴァー作なんてゴメンだからね。基本的スタイルを守りつつ、アレンジを施し、ジャニーーたる音が健在かつ存在することをリスナーにもアピールしたかったのさ。ともかく、前作から4年のブランクもあったわけだから今作はさらに前進した内容になるように心掛けた」(ジョナサン)
アップ・テンポのロックン・ロール・ナンバー「ハイヤー・プレイス」やライト・ポップ指向の「アイ・ガット・ア・リーズン」、片や「オール・ザ・ウェイ」、「ウィズ・ユア・ラヴ」は「オープン・アームズ」に勝とも劣らぬ極上のバラード・チューン。こうしたナンバーが違和感無く溶け込みジャーニーならではの世界を浮き彫りにする。それを実感するほどにジョナサンのコメントも説得力が増してくる。
そして、そのジャーニーらしさを保った最大の功労者が新ヴォーカリスト、スティーヴ・オウジェリーと言えるだろう。前任者スティーヴ・ペリーのハスキーなハイトーンのヴォーカルがバンドのトレード・マーク化していただけに彼を失った際、バンドの未来を不安視する者も少なくなかった。しかし、スティーヴ・オウジェリーは“スティーヴ・ペリー以上にスティーヴ・ペリーらしい”との絶賛されるパワフル・ヴォイスでジャーニーの世界を見事に演出し切っている。
「僕らはジャーニーの過去の実績に誇りと愛着を持っている。これらはメンバー全員の一致した意見だ。それだけに新作もそれに負けないクオリティのものを作りたかった。スティーヴ・オウジェリーの声とジャーニーのサウンドをリンクさせるのは初の試みだったから時にナーバスになったり、彼自身も遅れを取るまいと懸命だったね。ただ、それも最初の内だけで作業が進むにつれ、彼は僕らと対等にクリエイティヴティを共有し合っていたよ」(ジョナサン)
「今回、僕はヴォーカル以外にもソングライトを手掛けた。今、ジョナサンも“遅れを取らないよう緊張していた”と言っていたけど、実際、その通りなんだ。何しろ、ニールにしてもジョナサンにしても何年もの間ヒット・ソングを書き、歴史を築いて来た大先輩だからね、自分が足手纏いになるんじゃないかと凄く不安だったんだ。でも、ここまでやって来れたのはメンバーのバックアップの賜物だと思っている。僕自身、今回の経験で自信がついたよ」(スティーヴ・オウジェリー)
彼らのコメントを聞いていると、今、新生ジャーニーがいかに充実しているか、そのメンバーの高揚ぶりが窺え、嬉しくなってしまう。デビュー25周年を迎え、新生ジャーニーは文字通り“新たな旅”のスタート・ラインに立ったようだ。
「“アライヴァル”はジャーニーの過去と未来の中間に位置する過渡期のものだ。だから、これが最終地点というわけじゃない。僕らとしてはまだ色々トライしてみたいアイデアが山ほどあるんだ。そう、今は新しい扉の前に立った、そんな気持ちで一杯だね(笑)」(ニール)
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