【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.66 「ザッツ・アメリカン・エンタメ! Super bowl 51」
LADY GAGAの Super bowl 51でのハーフタイムショーは、期待通りの素晴らしい内容でしたね。彼女のエネルギッシュな躍動感と生命力で充ち満ちたステージは、エンターテインメントに求められる「ドキドキさせて欲しい」「楽しい気分にさせて欲しい」「素敵な歌が聴きたい」といった非常にシンプルな問いかけすべてにしっかりと応えていて、彼女がスーパースターであるという明白な事実について今一度反芻したのでした。
「God bless America…」の声と、夜空に散らばった星屑(のように見せたドローンの光)で星条旗を描き、暗闇広がる大空からマザーモンスターが飛び降りる形で始まったショーは、今回は、どちらかというと「観せる」というよりも、彼女の音楽をより「聴かせる」もので、彼女のヒット曲をメドレー披露する形で展開。「Born this way」の歌詞のとおり、 多国籍から成る40人のダンサーたちが自らの肉体と踊りで紡ぎ出す美をもって、すべての人間が美しいことを体現し、ガガの魂の宿る力強い歌とパフォーマンスからは音楽は楽しいもので、且つ、メッセージを放つ力を大きく持つ偉大さを見せてもらえたことに、同じ人間として幸せに思います。
昨年のスーパーボールでは印象的な国歌斉唱を行い、今年はハーフタイムショーにヘッドライナーとして出演。スーパーボールのハーフタイムショーに出演できるということは、'アメリカが認めたアーティスト'という称号を手にするということですから、この人はとうとうここまで上り詰めたのかという思いで観ていました。
というのも、2009年の SUMMER SONICの夜中の SONICステージで、おっぱい花火を炸裂していたあの頃、オーディエンスの目は若干冷ややかだったにも関わらず、まだ20代前半だった彼女は、自身の信じる先を強く、真っ直ぐに見つめて自分を表現していました。おそらく当時彼女が見ていた先が、今、彼女が立っている場所で、あの頃から変わることなく持ちうる全才能と見せない努力を折り重ねて、世界中の人々を相手に音楽を真ん中に据えたアートでもって愛を伝えることを挑み続けているように見える彼女。観るたびに、話題になるたびに応援したいと思えるアーティストの一人です。
今回は大統領選から日も経っていないので、政治的なパフォーマンスをするかどうかに注目していた人も多かったと思いますが、昨年のColdplay、Beyoncé、Bruno Marsのハーフタイムショーでの政治的な主張が色濃く出ていたものに比べると、「One nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.」と言うに留めた感がありましたね。
今年のハーフタイムショーを観ていてふと思ったことがありました。
今回に限らず、『スーパーボール』とは、スポーツゲーム、アート、本番に至るすべてがドラマとしてエンタメとして息づいた、アメリカの壮大さを感じる一大イベントです。日本には、そういった音楽とスポーツなどの他の文化が絡み合い、国民の多くが期待し、注目するような晴れの大舞台が残念ながらありません。
これからの時代は、そういった総合的なエンタメの場が求められ、作られる傾向に流れていくとは思いますが、その実現には、例えば Pepsi社のような巨額の資金を投じて文化を支え、育てようという心意気のある企業の存在も必要です。日本での音楽文化への投資は、論じるまでもなくリスクの方が大きくなるでしょうが、そろそろ日本も独自の古き良き文化を取り戻す、または新築する時期に来ているのではないでしょうか。
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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