1980年代を牽引した『全英TOP20』、イベントで復活
今なお洋楽ロックの最前線で活躍する音楽評論家/DJの大貫憲章と今泉圭姫子のふたりが、1979年から10年間放送していた伝説のラジオ番組『全英TOP20』がSNSで復活を果たす。番組で洋楽を知り育った根強いファンの声により、11月12日(土)渋谷で番組を再現するスタイルでトーク・イベント開催が決定したのだ。
インターネットのない時代にイギリスのチャートを毎週入手し、ロンドンの流行や音楽をいち早く伝えてくれた番組『全英TOP20』は、1980年代のロック同様、多大な影響力を持ってリスナーを惹きつけた番組だった。そんな当時の様子をふたりに語ってもらった。
──『全英TOP20』というラジオ番組は、いつ頃放送されていた番組なんですか?
大貫憲章:1970年代から1980年代にかけて10年近く、AM「ラジオ日本」(その前はラジオ関東)の夜放送された番組で、その名の通りイギリスのヒットチャートをカウントダウン方式で紹介していました。当時は画期的な番組でした。アメリカではなくイギリスでしたから。しかも東京単独でキー局はなしです。ただ、地方にもリスナーが少なからずいました。北海道の札幌で聞いていたといったのはゴーバンズのG&Vの森若香織さん。気象条件が良ければAMはFMより遠方まで電波は飛びますね。
今泉圭姫子:全米Top40の姉妹番組として1979年にスタートしたんです。私がれい子先生のアシスタントで『全米TOP40』に携わっていて、ミニコーナーでイギリスの音楽を紹介していました。全米なのにその頃からイギリスにこだわっていて、大好きなクイーンもそうでしたが、ジューダス・プリーストとかシン・リジーとか。そしてジャパンがデビューしたばかりの頃で、初めてのロンドンでインタビューしました。その頃私はまだ学生でしたが、夏休みに1ヶ月ロンドンに滞在して、スージー・クアトロ、バズコックス、999、シティー・ボーイなどもインタビューしました。バズコックスは怖かったです。999はパンクだけど優しい人たちでした。そんなこともあって、当時のプロデューサーが全英を作ろうかということになって、憧れの大貫さんのアシスタントとして参加させてもらいました。その後は番組の構成もやりました。B'zの稲葉さん、ZIGGYの森繁さん、戸城さん、松岡英明さんなどもリスナーだったと、あとになってインタビューした際に教えてくれたものです。
──おふたりはこの番組で知り合ったのですか?当時は何歳で?
大貫憲章:彼女のことはそれまで全然知らなかったです。番組を始めるにあたり、事務所の方から紹介されて会いました。しおらしく可愛らしい女の子という印象でしたよ。1979年でしたから、自分は28歳でしたね。LONDON NITEを始める前です。
今泉圭姫子:私は20歳か21歳だったと思います。打ち合わせの時に初めてお会いして、握手してもらいました。
──インターネットはない時代ですから、音楽を聴くのはラジオやLPを購入して、という時代ですよね?
大貫憲章:1970~1980年代はいろんなことが変化していた激動の時代ですね。まだインターネットは日常ではなかったので、アナログな世界。音楽もFMがやっと知られだした頃で、基本はAM局中心でした。テレビの音楽番組はまだ『ベストテン』以前。邦楽もJ-POPとは言わずにニューミュージックとか呼ばれだして、ユーミンやオフコース、サザン、YMOが洋楽的なセンスで日本語で曲作りしつつある黎明期。レコードが基本で、あとはカセットテープとか。CDはその後急速に普及しましたが、それは80年台後半です。ケータイもないから、とにかく「現場」に行くことが何より。情報や楽しみをシェアするには「そこ」に行かないとね。ゲーセンがブームでディスコも再び流行りだしてました。
今泉圭姫子:レコード会社に届く新曲はカセットの状態でした。それをお借りしてダビングして、放送で流しました。インタビューもカセットで録音していた時代でしたね。
──オフィシャルFACEBOOKに番組の情報がありますが、そこに信じられないようなアーティスト達のオフの写真がたくさんアップされていますが、毎週こんな凄いミュージシャンがゲストで登場していたのですか?
大貫憲章:今からすれば異常に多くスタジオに来てくれてましたが、写真に記憶がないのが多いのはスヌーピー(今泉圭姫子)が取材したからかな。彼女は雑誌や全米とかの方でも仕事していて、特にアイドル系はたくさんやっていたみたい。
今泉圭姫子:ミュージシャンはスタジオにはなかなか来れなかったです。それでも今と違って、レコード会社の方がスタジオに連れて来てくれる努力をしてくれてましたね。クイーンもジョン・ライドンもビリー・アイドルとスティーヴ・スティーヴンス、デュラン・デュラン、リマール…スケジュールが合わないアーティストは、私がインタビューをしに行きました。ここは今と変わらない動きです。
──イギリスのチャートはどうやって集計していたのですか?
今泉圭姫子:イギリスの公式チャートを買ってオフィシャル・チャートとして放送していました。NMEとかメロディーメイカーではなくてナショナル・チャートです。Music Week誌が集計し発表していたんです。当時はRecord Mirror誌が掲載していて、副編集長のRosalindが番組で紹介してくれて、2代目のLynは、Music Week誌の人でした。
大貫憲章:日本のチャートはオリコンくらいだったかな?あの頃は他にはもうラジオの音楽番組はほぼ絶滅してましたから。特に洋楽のカウント・ダウン番組はTBS「オールジャパンポップス20」くらいかな?八木誠さんがパーソナリティ。ましてイギリス専門なんてね。
──ふたりでロンドンへ取材に行くこともあったんですか?
今泉圭姫子:そうえいば、ないですね。
大貫憲章:ふたりでは一度もないです。経費が出ないね(笑)。
──FACEBOOKでは当時のイベントの広告やカセット・テープの話も出ていますが、デパートの屋上でイベントが開催されていた時代なんですね。
今泉圭姫子:ラジオ日本が「全米」「全英」「ロック・トゥデイ」と音楽番組を土曜の夜に放送していたので、そういったイベントを局をあげてやってたりしましたね。
大貫憲章:よくありました。デパート屋上はイベントが盛んで、ビヤガーデン以外にいろんなものが開催されてました。デパート以外にも家電メーカーの「ショールーム」が日常的によく音楽関係で使用されてました。銀座に集中していて、一番長く営業してたのは西銀座デパート内の「日立ローディー」かな。他に4丁目に当時まだナショナルだった松下電器の「テクニクス銀座」では音楽雑誌『ミュージッック・ライフ』のシングル盤の公開視聴会みたいな「これがヒットだ!」を定期開催していました。司会もしたことあります。伊藤ちゃん(伊藤政則)も。
──ふたりのトークが面白いような音楽番組って他にもあったのでしょうか。
今泉圭姫子:土曜の夜のラジオ日本だけだったかもしれませんね。3番組(「全米」「全英」「ロック・トゥデイ」)の中で、一番ゆるかったです(笑)。
大貫憲章:少ないけどありましたよ。先ほど言った八木さんの番組や同じくTBS系列の「パック・イン・ミュージック」(福田一郎さんやアナウンサー、声優、タレントなどがMC)とか。
今泉圭姫子:私たちのようなお笑いではないですね(笑)。
──一番印象に残っている1980年代のミュージシャンは誰ですか?
大貫憲章:イギリスだけならザ・クラッシュ、キュアー、ピッグバッグ、U2、ヘアカット100。
今泉圭姫子:デュラン、アダム&ジ・アンツ、ニック・カーショウ、ザ・カルト、ジャパン。
──11月12日(土)のイベントはどのようなものになりそうですか?
大貫憲章:当時番組を聞いていただいたリスナーさんや、聞けなかったけどその頃の音楽が今も大好きという音楽ファンのみなさんと一緒に、我々(大貫&スヌ)が進行役で、懐かしい曲や話題を紹介しつつ、みなさんからも思い出の品々や貴重な写真など披露していただき、全員でその「感動」をシェアしよう!という実にシンプルかつ滅多にないイベントです。
今泉圭姫子:当時のお宝グッズや写真を展示したいと思います。今から頑張って探します。みなさんもぜひ番組に関するものを持ってきてくださいね。もちろんリアルタイムで聞いていない人でも、UK好きなら喜んでいただけると思っています。
<全英TOP20 友の会 Vol.2>
@東京・渋谷レンタル・スペース「キャリア・デザイン・カフェ」
東京都渋谷区神南1-12-16 和光ビル5階B.
18:30 開場 19:00 開演
会費:2700円(税込)※ドリンクの持ち込み自由.
#1「全英TOP20」の収録を再現
80年代の全英TOP20番組収録の様子を再現。みなさんと二人が選んだ80年代のBEST 10を集計しながら発表していきます。
#2 番組ゲスト・アーティストとのエピソードや番組収録の裏話
番組収録中、大貫さんとスヌーピーは、オフ・マイクでどんな話をしていたのか?ゲスト・アーティストのインタビュー裏話し~今だから語れるエピソードをこの際たっぷり暴露します。
#3 参加者のみなさんのお宝拝見コーナー
参加者のみなさんに、当時のお宝をお披露目してもらうコーナー。カセット・テープ、チャートをつけていたノート、フライヤーや写真など、あなたのお宝をぜひ持ってきてください。
#4 サイン&写真撮影会
サイン会と写真撮影もあり。お二人に挟まれて写真が撮れるのは機会はなかなかありません。
#5 プレゼント大会
当時から大切にとっておいた二人のスーパーなお宝を大放出!全英TOP20福袋を参加者の中から3名にプレゼント
#6 ここだけ展示品
カフェ内には当時のお宝写真を展示します。
[問]1980top20@gmail.com
◆「全英Top20」オフィシャルfacebookト
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