増田勇一の、おすすめ書籍『わが青春のロック黄金狂時代』

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たまにはCDとかライヴばかりではなく、読み物を紹介したいと思う。しかしもちろん、ロックと無関係ではない。

この『わが青春のロック黄金狂時代』は、元「ミュージック・ライフ」編集長、東郷かおる子氏(……というか、堅苦しいことは抜きにして通常通り“東郷さん”と呼ばせていただきます)の執筆による、涙と笑いのロックなエピソード集。この肩書きを見てピンときた読者も少なくないはずだが、東郷さんは僕の大先輩である。残念ながら直属の部下として業務に携わったことはないのだが、過去、取材現場やライヴ会場では何度となくご一緒させていただき、興味深いお話をたっぷりと聞かせていただいたものだ。

本書に記されているのは、主に、東郷さんが同誌の編集長を務めておられた時代の取材秘話であり、僕からすれば、過去に東郷さんご自身や長谷部カメラマンから直接耳にしてきた懐かしい話が多々含まれていたりもする。が、ことに70年代の、音楽業界がまだまだ未成熟でのどかだった時代の逸話の数々には、今になって改めて読むからこその面白さがあるし、80年代がいかに(良くも悪くも)革命的な時代だったかという事実も思い知らされる。実際、そうした当時のエピソードに懐かしさをおぼえながら本書を楽しめるのは、主に30代後半以上の世代ということになるかもしれない。が、今、まだロックをかじり始めたばかりの世代の目にも、ここに綴られている数々の事実とその背景にある“時代性”は、間違いなく新鮮なものとして映るに違いない。

本書の表題には、「ビートルズからボン・ジョヴィまで」というサブ・タイトルが伴っているのだが、他にもレッド・ツェッペリン、エリック・クラプトンから、クイーン、キッス、エアロスミスの“三大バンド”、チープ・トリック、ジャパン、ワム、モトリー・クルーに至るまで、時代の“顔”となったさまざまなアーティストたちが登場する。若い世代にも肩肘を張らずに読んでみて欲しいし、万が一、あなたのお父さんが“おやじバンド”を組んでいたり、お母さんが押し入れの奥にデュラン・デュランの写真集を隠し持っていたりするのなら、この本は素敵なプレゼントになるかもしれない。

そして僕が勝手に思うのは、できることならいつか、東郷さんの綴られた“続き”を書いてみたいな、ということ。そしてもうひとつ。新しい“ロック黄金狂時代”の到来は、待つべきものじゃなくて作るべきものなのかもしれない、ということだったりもする。

増田勇一
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