女王蜂・勝野慎子の赤裸々な姿
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女王蜂・勝野慎子の赤裸々な姿 「カクシゴト」「リラ」「いやな予感」と、3枚のシングル曲を含む、勝野慎子待望の1stアルバム『蜂の巣城』が完成した。 つねに"赤裸々なまでに自分をさらけ出す"勝野慎子の、喜怒哀楽さまざまな感情が、12篇の自分探究物語として、あまりにも感情的な歌声と共に響いてくる。う~ん、これは濃い作品だ!! |
![]() 1stアルバム「蜂の巣城」 日本クラウン CRCP-20263 2,800(tax in)発売中 1. 早春賦 ![]() 2. カクシゴト ![]() 3. せつないふたり 4. リラ ![]() 5. わたしのすべて ![]() 6. 大人になること ![]() 7. ひとり暮らしとその反動 8. swimming 9. why so beautiful ![]() 10. 角部屋 ![]() 11. いやな予感 ![]() 12. 余韻 ![]() 私の中では、10年分の重みを持ってる歌ばかりです。 ![]() 女王蜂と言うよりは、働き蜂だと思ってるんですけどね(笑)。 ![]() 勝野慎子本人からロンチメンバーへ コメントが届いています | ――とっても味の濃いアルバム『蜂の巣城』が、ついに完成しましたね。 勝野: 私、「ミュ-ジシャンになりたい」と思った頃から(音楽人生を)カウントすると、10年くらい経ってるんですよ。確かにデビューしてからは、まだ1年も経たないポッと出ですけど。初めてのアルバムということもあり、私が約10年間の中でため込んできたものを入れてる分、「そりゃあ濃い作品が出来て当たり前じゃん」みたいな気持ちもある。 ――収録した楽曲には、かなり以前の作品もあるんですか? 勝野: 一番古いのが、1stシングルになった「カクシゴト」や「why so beautiful?」で、まだ学生時代に作った曲なんですけど。大半が、20代手前から最近になって書いた作品ばかりなぶん、10年間の結晶と言うわけではないですけど。でも、過去の音楽的な経験の上で出てきた楽曲たちだから、私の中では、10年分の重みを持ってる歌ばかりです。 ――中には、「ひとり暮らしとその反動」のような、"下着姿でベランダで煙草を吸ってたら、向かいのオヤジに見られた"と言うような、普段の慎子さんの姿が浮かんでくる楽曲もありますよね。 勝野: あ~、あの歌の自分は恰好悪いですよねぇ(笑)。私、歌詞を書く時に、"強くなりたいよ"的な願望も折り込むことがあるんです。なんか歌詞も日常生活も含め、あまり人に弱みは見せたくないなっていうか。だからこそ家で一人になると、その反動で本当の自分が出ちゃうんですよ。実際この歌のように、私、朝方下着姿でベランダで煙草を吸ってたら、新聞配達のお兄ちゃんにあられもない恰好を見られてしまったんです。まぁ歌詞では、あえてオヤジにしてますけど(笑)。かと思えば歌詞のように、田舎の両親から「お前も歳女なんだから、いい加減に結婚でもして落ち着きなさい」「そろそろ田舎に戻ってきたら?」と言われたりと、かなり切羽詰まった姿を、この「ひとり暮らしとその反動」って曲に入れちゃいましたね。 ――歌詞や、その感情のままに揺れ動く歌声を含め、慎子さんの楽曲っていつも、本当に自身の"揺れまくる感情"を、まんま赤裸々にぶつけてきているじゃないですか。しかも、言葉のひと言ひと言へ、強く説得される想いを感じてしまったりもするし。 勝野: この『蜂の巣城』は、ホント、私自身の感情が貫かれてるアルバムですもんね。それに言葉が響いてくると言うのも、私自身が"自分の想いを把握して歌いたいから"と言うのが、あるからかも知れない。 ――"自分の想いを把握して歌いたい"……と。 勝野: そう。自分が責任を持てる言葉や想いを、私は伝えていきたい。私の詞に英語がほとんど出てこないのも、借りてきたような言葉を使うと、歌ってる私自身にとってのリアリティがなくなるからなんです。歌や感情が伝わっていくというのは、唄ってる私自身が、その言葉(想い)を納得して唄ってるからこそ伝わっていくものだと思うから。 ――確かにそうだ。 勝野: 自分で楽曲を作ってる以上、当然、自分のことには責任を持ちたいですからね。 ――ところで、この『蜂の巣城』というタイトルなんですが……。 勝野: 語源の由来は、曙橋の靖国通り沿いに、もの凄く時代と違和感を感じる、電飾派手やかな妖しいお店があるんです。その名も「蜂の巣城」。私、そこを通るたび気になってたので、アルバム・ジャケット制作の打ち合わせの時に、その話をしたら、「それをタイトルにしよう」と言う話になってしまったんです(笑)。でも、よくよくその言葉を考えたら、私がアルバムを作りながら感じてた想いと重なる部分が大きいから、逆にピッタリかなと思うようになって……。 ――その想いと言うのは? 勝野: 蜂の巣って、計ったかのようにピッチリと部屋が作られ、その一個一個の中へ、蜂の子が住んでるわけじゃないですか。私たちから見れば、その蜂の巣も一匹一匹の蜂の子たちも、同じようにしか見えないけど。でも実際には、人間と同じように、一匹一匹の蜂の子たちが、その中で自己主張してるわけですよ。それを人間社会に置き換えた場合、いくら私たち一人一人が「全然違う」と自己主張をしても、私たちが蜂の巣を見るのと同じ感覚で、人間じゃない他の人たちの感覚で捉えたとしたら、この人間社会も、計ったかのような蜂の巣と同じに見えちゃうんじゃないかなと思って……。 私はこのアルバムの中へ、弱くて優柔不断な勝野慎子という人間を、いろんな角度から曲にして詰め込んできた。そりゃあ私自身からすれば、「勝野慎子として主張してる作品です」とは言えるけど、他人が見たらどうなんでしょうね。 ――いや、同じ人間ですから、ホントその多彩な表情には、マジにいろいろと気持ちが揺り動かされましたよ。 勝野: だとしたら安心なんですけど(笑)。また今回のジャケットも、デザイナーの方が、「君は蜂の巣城の女王蜂なんだから」ということから、実際にお店(蜂の巣城)を使って撮った(PVも同店で撮影)んです。けど、このジャケットがかなり……、故郷の母ちゃんが見たら「お前をこんなことさせるために東京に出したんじゃないわ!」と泣かれそうな写真になってるんで(笑)。それに私自身、女王蜂と言うよりは、チマチマと頑張って生きてる働き蜂だと思ってるんですけどね(笑)。 取材・文●長澤智典 |