いい曲を書けばいい…それだろ?
いい曲を書けばいい…それだろ?
一晩にして成功を手に入れたと思われがちなバンドはすべて“一発屋”と呼ばれる運命にある。だが、Smash Mouthのメンバーは、長年苦労していまの地位を築いた。バンドのリーダーSteve Harwellに聞いてみよう。彼はライヴァル・バンドからバンド仲間兼ソングライターのGreg Campを引き抜いて地元サンノゼで友人を数人失っている。また、彼はSmash Mouthの初めてのスマッシュ・ヒット・シングル“Walkin' On The Sun”がラジオでひっきりなしに流されるようになるまで、ラジオ局のお偉方をしつこく追いかけ回したが、その人たちの電話番号がぎっしり書かれたノートをいまでももっているという。
Harwell & Co.の創意工夫、粘り、才能が認められ、Smash MouthはInterscopeとのレコード契約にこぎつけ、ヒット・デビュー・アルバム『Fush Yu Mang』とその続編『Astro Lounge』をリリースし、映画のサウンドトラックやテレビ・コマーシャルでメジャーな仕事を引き受けることになった。
LAUNCHの編集責任者Dave DiMartinoは、'99年サマーツアーで東海岸に遠征中のHarwellとCampに合流し、Smash Mouthの成功の秘訣について話を聴いた。
“一発屋”? 納得できないね(笑)
LAUNCH:
“Walkin' On The Sun”が爆発的にヒットしたことで、同じような驚異的ヒットをとばすことは二度とないと思われたことはありますか。“一発屋”になってしまう不安とか…。
STEVE:
不安? 正直、不安なんて感じたことはない。まわりはみんな心配していたけどね。みんな「あいつらレコードが売れたらすぐにどこかに消えるさ」と思ってたんだ。俺達はその魔の手に引っかからなかった。新しいレコードの制作をスタートできて、みんな興奮してた。ただレコーディングがしたくてウズウズしてたよ。絶品の歌は何曲かそろってたけど、誰にも言わなかった。背後からしのびよって、「はいよ」って言いたかっただけ。
GREG:
他のインタヴューを読んでると、まだ俺達のことを“一発屋”って呼んでるやつがいる。もう一曲ヒット曲をだしてるのに。納得できないね。昔はみんなそのことを気にしてた。特に俺はね。でも、それをバネにして一発屋じゃないことを証明し、より良い出来のアルバムを作ることができた、ご覧の通りってね。
LAUNCH:
Fush Yu MangがヒットしたことでAstro Loungeの制作手法に何か変化がありましたか。
STEVE:
カネ…基本的にカネがレコードを変えた。1stアルバムでは、マネージャーを解雇して他のマネージャーを探すって脅して1万ドル借りた。そしてプロデューサーのEric Valentineが1万ドルでレコード制作を請け負うって言ってくれた。当時Ericは何も仕事してなかったんだ。Third Eye Blindのレコード制作をちょうど終えたところで、彼はあまり知られてなかった。彼は俺達のEP盤の制作を手がけたけど、彼はどちらかと言うとラップの世界で名が売れてた。白人にしてはたぶんピカイチのラップ・プロデューサーだろうね。Dr. Dreより良い仕事をしようと思えばできるはずだけど、もうラップはしたくないらしい。カネのためだけだったんだって。あのレコードの制作を1万ドルで請け負ってもらって、あのサウンドを実現できるなんて、俺達にとっちゃ奇跡に近い。俺達のレーベルは最近までいくら俺達が払ったか知らなかったんだ。俺達はこのレコードに対して200万ドルもらってたんだけど。笑うしかなかったね。
GREG:
Ericは2枚ともプロデュースしているから、俺達のことをよく知っているし、俺達が聴きたい音をよく知っている。スピーカーから聴こえてくる音は俺達の欲しい音とまったく同じだし、彼はバンドの5人目のメンバー同然。1stアルバムはデモ・テープみたいなものだよ。あれは、まともなレコーディングをしてレコード契約先を見つけるための初めてのマジな試みだった。自分達の間に合わせレーベルでリリースする予定だった。でもレコード契約を結ぶ前に“Walkin' On The Sun”がKROQ(ロサンジェルスの人気ラジオ局)で流され、レコード契約にこぎつけた。1stアルバムの収録には3週間しかかからなかった。でも2ndアルバムは3~4か月かかった。資金が増えて、欲しいサウンドをとことん追求することができたんだ。だから、ツアーで飛び回っていたこの2年間にめぐり会った色んな分野のサウンドを試してみた。だから今度の作品はちょっと違うんだと思う。
LAUNCH:
2ndアルバムのプロデューサーについてもう少し聞かせてください。
STEVE:
Ericが17~20歳のとき、彼は自分のバンドT-Rideとレコード契約してたんだ。T-RideはNine Inch Nailsがロック・シーンに躍り出てくる7年前にすでにNine Inch Nailsみたいなサウンドをうならせていたバンド。Hollywood RecordsのT-Rideのレコードを聴いたら、Trent Reznorはその爆音でぶっとんじゃうんじゃないかな。Ericがぜんぶ担当し、制作した。
最初、レーベルはBob Rockとか他のプロデューサーを使いたがってたけど、Ericが「何曲かミックスさせてくれたら後は好きなようにしてくれたらいいから」って言って来た。レーベルは他のプロデューサーに何千ドルもはたいたんだけど、Ericはそいつらを締め出した。彼はその仕事を勝ち取ったんだ。彼はこれまでも抜群のプロデューサーだよ。
LAUNCH:
Smash Mouthの音楽とは何なのか、サウンドについてはどう考えているんですか?
STEVE:
基本的に、Smash Mouthは他のバンドが敬遠するものすべてだと思う。他に同じようなサウンドのグループはいないと思うし、俺は色んな音楽をいっぱい聴くんだ。Smash Mouthのような音作りをしようとしているバンドも最近見かけるようになったけどね。Citizen Kingはみんなお気に入りのバンドで、彼らもEricに制作を依頼してるから俺達と似たサウンドになっている。Smash Mouthはアルコール臭いポップ/ロック・バンド。レコーディングのときはいつも半分酔っぱらっていた。俺はしらふではヴォーカルをレコーディングできないんだ。へべれけに酔っぱらっているわけじゃないけど、何杯か酒をくらってからでなきゃだめなんだ。しらふでスタジオに入ってレコーディングを始めると、Ericに「何がいい? ビール半ケース? 何がいるんだ」って言われてしまう。だから、自分で外に出てイエガーマイスターを買って何杯か流し込むと流れるように歌えるんだ(笑)。
GREG:
Kevin(ドラマー)の表現が一番好きだな、“カリフォルニアの缶詰”っていうやつ。これまで聞いた中で一番のお気に入りだよ。嫌いなのは、スカパンク、パンクスカ、フラットロックとかが一番気に入らない。
LAUNCH:
“Walkin' On The Sun”はSmash Mouthにとってビッグ・ヒットだったわけですが、音楽的にパターンにはまらない新しいレパートリーを生み出すのは難しかったのではないですか?
STEVE:
“Walkin' On The Sun”と同じような音作りをしなければならなかったんだ。そうしなければ、関係者を説得するのはすごく難しかったと思う。“息の長いバンドになるには、同じことを繰り返してそれにこだわればいい”ってことを説得する…以前は難しかったな。Ericには助けられたよ。彼はちゃんと理解してくれてた。当然、他のバンドはそんなことしたがらないと思う。俺達もしたくなかったけど、Smash Mouthはレトロ・スタイルのポップ・バンドに変身したんだから、それは俺達のスタイル。いま俺達がレコーディングするものにはすべてSmash Mouth独特のRhodesとかFarfisaのキーボード・サウンドが盛り込まれている。そういうわけでそのサウンドをレコードに投入してそれを何度も繰り返す。そしてちょっとづつ進化させるんだ。
GREG:
テンポが速くてけたたましい音楽に飽き飽きしていたんだと思う。もう昔ほどの攻撃性がなくなった。俺達はいまハッピーで満足してるからね。自分達がやりたいことをしている。だから、超スーパー・ハッピーなレコードを作ることにしたんだ。曲の多くはファンレターの意見を取り入れて作っている。“All Star”は、「私の人生は最悪、死にたい、でも“'Nervous In The Alley”を聴いて人生が変わった」とか「親子のギャップを埋める曲を書いてくれてありがとう。前は子どもたちをコンサート会場まで送り迎えするだけだったけど、いまは私も一緒にコンサートに行けるようになった」とか書いてきてくれるファンの声を取り入れて作った。“All Star”は若い世代にとって毎日の祈りみたいなもの。鏡の中の自分を見て自分を確信することができる。
LAUNCH:
ファンレターはちゃんと読んでますか? 返事は書くんですか?
GREG:
週に1回Paulとファンレターを袋に詰めて洗濯物と一緒にコインランドリーに持って行ってそこで読んでいる。ぜんぶ読んで、できるだけ返事を書くようにしている、精神的にアブナイやつらの以外はね。脅迫状じみた手紙も届くよ。でもサイコーなのは日本人からのやつ。思いっきりめちゃくちゃな英語で書かれてるんだけど、それが可愛くて無邪気なんだ。でもケッサクだよ。だいたいみんなに返事を書くようにしている。他のバンドにファンレターに目を通すか聞いてみたら、ぜんぜん目を通したことがないって言ってた。ファンレターの偉力を無駄にしてることがわかってないんだな。
いい曲を書けばいい…それだろ?
LAUNCH:
そもそもどういった成り行きでバンドは結成されたのですか。
STEVE:
Gregとバンドを組む前に、ある日突然この気違いじみたとんでもないマスター・プランを思いついたんだ。それで、他のグループからGregを引き抜かなきゃならなくて、そいつらを怒らせてしまった。ローカル・シーンでは俺はみんなに嫌われてるんだ。Gregは気に入られてるよ、ああいうクレイジーな連中とつきあってるからね。あいつらみんなイッチャッているから、連中の半分はガマンがならない。ん? 質問、何だったっけ。そんな質問するからキレそうになっただろ。地元のミュージック・シーンにはびこってるああいう連中にはガマンできないから、今またハラワタが煮えくり返ってきたよ。
LAUNCH:
バンドを結成するとき、マスター・プランがあったとおっしゃってましたよね。バンドをメジャーにするプランでもあったのですか。
STEVE:
俺達にとってバンドの結成はどちらかと言えば計画的なものだったんだけど、それで他の連中がキレたんだ。俺にはすでにレコード契約があったから、その経験から学ぶことができた。うまくやる方法ってのは存在するから、要領よくレコード業界に進出する秘訣について短編本でも書こうかと思ってる。成功は可能なものだけど、でもピンをうまいこと並べておかないと何度ボールを投げてもストライクはとれないよ。
LAUNCH:
レコード契約を結ぶには「知識ではなくてコネが必要」とも言われてますけど、力を貸してくれた人はいたんですか。是非成功の秘訣を!
STEVE:
まず言っておきたいことは、テープを郵送しないこと。時間と切手と封筒と上質テープの無駄。絶対誰も聴いてくれないから(笑)。ディレクターのオフィスを訪ねると、テープは6か月前と同じようにまだ他のテープやCDの下に埋もれてるはず。
ラジオが一番近道。ディレクター連中に電話しても意味がない。レコード・レーベルのラジオ・プロモーション担当者と仲良くなることをお勧めする。彼らと仲良くなれば、音楽を聴いてくれる。Capricorn Recordsに勤めているNan Fisherっていう女性に何回か電話して、電話で意気投合したんだ。電話を切らないでくれって説得したよ。彼女は最初のデモをすごく気に入ってくれたんだ。それからスタジオに入ってさらにレコーディングして、結局レコード契約を結ぶことになった。ほんとオカシイ話だよね。俺は知ってるプロモーション担当者の電話番号とその名前の横にメモ書きが書かれたノートをまだ持ってるよ。レコード契約をゲットしようと思えばできるもんだよ。でも当然音楽が良くなけりゃ彼らの注意をひくことはできないけど。
GREG:
俺は3人あげられる。一人はいまMTVに出演してるCarson Daly。彼は俺達と同時に一躍脚光を浴びるようになったんだ。それからL.A.のラジオ局で制作の仕事をしてるJim Prattがラジオ局との橋渡しをしてくれた。CarsonはDJで、“Nervous In The Alley”を聴いて気に入ってくれて毎日“今日の曲”でかけてくれたんだ。そしたらリクエストが大量に届いた。そうしてNo. 1になって何週間もその地位を守った。それでもレコード契約を結ぶことができなかったから誰もそのレコードを買うことができなかった。結局“Nervous In The Alley”は1年ぐらいかけてチャートから消え去って、誰も俺達のこと気に入ってくれないから解散するってマネージャーに言ったんだ。「それどういう意味?」って言われて、レコードを制作するにはカネが要るって言ったら、1万ドルくれたんだ。
LAUNCH:
スタジオとライヴ、どっちが好きですか?
STEVE:
俺達はライヴでもレコードでもイイ線行ってる作品を作ったバンドだと思うけどね。バンドに色々残念なことが起きたからそう言っているって訳じゃない。ドラマーのKevinが腰痛とか他の理由もあってバンドをやめたんだ。ドラマーの交替は悪い影響を及ぼすかもって思ったけど、実際には良い影響になった。バンドが活性化されて、新しいドラマーを迎えて俺達の勢いはもう止まらないって感じ。俺達のコンサートは昔に比べてはるかに…コンサートの内容を色々変えたり、考え出したり。その前はただお決まりのことを無難にやってただけ。あの時はハッピーな時期じゃなかった。Kevinの腰痛は相当ひどかったから彼がちゃんと演奏できるか確信がなかった。腰痛もちがドラムを演奏するのは辛いと思うよ。いま、交替があってからは変な気分。プレイしたくてウズウズしてる。もう10日もプレイしてないから禁断症状が出始めてる。
GREG:
俺は断然スタジオ派。Steveはどちらかと言えばライブ派。ステージに上がる前、「今夜は何が起こるんだろう。あいつは何をしでかすんだろう」って考える。俺達が曲を演奏し出すと、Steveは俺達の前を走り過ぎ、バーに立ち寄って、オーディエンスの中を走り回るんだ。Steveは子供をステージに連れてきて一緒に踊ったり、手をつないだり、頬にキスするのが好きなんだ。子供達は迷惑してるかも。…かと思ったら、ステージにキレイな女の子とかもいっぱい連れて来てくれて、これは俺達も大歓迎(笑)。
LAUNCH:
そりゃ、楽しいですね。
GREG:
そう言えば、ステージで一番笑えた出来事なんだけど、俺達には直接関係なくてね、Sugar RayのMark McGrathのこと。テキサス州オースティンのStubb's Barbecueというところで俺達は演奏してたんだ。そこであいつがアクトをキメてたところに、女の子が犬みたいに飛び跳ねて彼の股ぐらをつかんだんだ。それであいつ暫くステージから降りる羽目になった。痛かったのはよくわかるから笑っちゃいけないんだけどね。その後ステージに戻ってきて、「なんでこの場所がStubb's(“stub”=“引き抜く”)って呼ばれてるか今わかった」だって。ほんともう大笑いしたよ。俺達はあんな被害にあったことない、だって俺達はMark McGrathじゃないからね。
LAUNCH:
最近の激しいレコード業界の変化を受け、この業界に対する考え方は変わりましたか。独自のレコードレーベルを設立されたんですよね。
STEVE:
レコード業界にはムカつく連中も多いけど、良い人間も多い。友達もいっぱいできた。俺が自分のレーベルを作ったのは、良質で、小規模で、ファミリー志向のレーベルを作りたいから。クレイジーなレーベルにはしたくない。レーベルが大規模になると、家族は離れていって、自分はただの従業員になってしまう。俺達のレーベル(Interscope)はいま最大規模の状態で、すでに変化が見られる。いま新しい人がどんどん入ってきている。俺達のレーベルにとってこれは大問題。俺達はレーベルをアットホームでファミリー向けにしておこうと構想を練っている。Spun Out Recordsって言うんだけど、Carsonと俺のマネージャーも参加してる。面白くなりそうだよ。
GREG:
大人にはなるべく近寄らないようにしているよ。大人に近づくと、必ず何か悪いことが起こるんだ。この業界に限らないけど、レコード業界っていうのはみんなレコードを売ろうと必死なんだ。それがレコード業界っていうもの。自分の立場をわきまえ、一定の距離を保ち、要領を心得、カネの無駄遣いをしないこと。これって古き良き芸能界のおきてだよ。
LAUNCH:
何かバンドについての誤解を解きたいことってありますか?
STEVE:まず、メンバーのひとりとしてドラッグ中毒じゃないこと。メンバーの1人が薬物依存症だとかいうデマをベラベラしゃべってるやつがいる。そんなの嘘。もうひとつSmash Mouthというバンドについてみんながわかってないことは、俺達が努力していまの地位を築いたってこと。レコードがよく売れてるのは、“Walkin' On The Sun”がヒットしたからってだけじゃない。どれだけ俺達が苦労したか誰も知らない。地元の他のバンドやミュージシャンの中にいっぱい敵も作った。みんな俺達がどこからともなくやって来ていきなりラジオ局への招待券をもらったって思ったみたい。俺達がどれだけ苦労したのかぜんぜんわかってないんだ。
バンドのルールは結構厳しかった。練習に誰か5分でも遅れたらケツを蹴り上げてやったし、その逆もある。メンバー2人は平日毎晩カバー・バンドで演奏してた。自分達で別に練習して、自分達で演奏用具一式を運んで演奏しに行くって感じで。Kevinと俺は塗装の仕事やらできることはすべてやってスタジオ代を払ってた。腹が減って死にそうでも気にしなかった。これ、みんなは知らない話。みんな、特に地元のやつらは俺達のことを勝手に想像してああだこうだと決めつけている。あいつらは俺達はただラッキーなだけだったとか、みんなに媚びを売りまくったとか思ってる。俺の考え方は、良い曲を作れば、ラジオで流してもらえるかもよ、ってだけなんだけど。
LAUNCH:
誤解…と言えば、解散するという噂も…。
STEVE:
それこそくだらないデマのひとつ。誰かがどこかでリベンジするためなのか、ただむかついてるからか、そんな噂をばらまきだした。絶好調のいま解散するなんてバカな話ないよ。New Radicalsのメンバーがやめたって聞いたけど、一発屋って責められたからだって。バンドが鳴かず飛ばずだったときはやめることも考えた。Smash Mouthが期待とは裏腹になかなか売れなかったからね。他のメンバーもそのことを知ってたけど、みんなで酒でごまかそうとしていた。去年のある時期なんて、酒を飲まないとステージに立てなかった。いまはみんなこれまで以上に仲が良くなった。
メンバーみんな本当に最高だよ!
LAUNCH:
ミュージシャンになろうと思ったきっかけのアーティストは。
STEVE:
Elvis Presley。俺の年代にしては珍しいけど、子どものときテレビでElvisを見たとき「これだ」って思った。彼の話をするだけでも鳥肌が立つ。同じビデオを何度も見るし、Elvisモノなら何でも録る。彼って案外ユーモアもある。'60年代後半、'70年代前半のElvisファンはブチ切れてて奇妙だった。世の中ほんとに変わったよ。ヒトの進化を見ることができる。彼は超人的だったよ…ドラッグにおぼれるまではね。パンパンに太って、歌詞を忘れるようになり、汗ダラダラかいて、インタヴューではチンプンカンなこと言って、あさっての方向見てるElvisは見てられなかった。
GREG:
俺はBeach Boys。それからBrian Wilson。Beach Boysは何度聴いても聴き飽きない。長い間そのことに気づかなかった。子どものとき初めて買ってもらったレコードの1枚がSurfin' Safariだった。おふくろに「なんでこんなさえない5人組のレコードを買うの」ってきいたんだ。なんだか漫画のキャラクターに見えて。その後、いまから10年くらい前、Beach Boysは俺のアイドルだった。その時は誰にも言わなかった。でもいまBeach Boysのファンって言ったらクールだから、隠れファンはやめたよ。ギターをやる前にドラムをやってた、というよりおやじが言うには鍋とかフライパンをスプーンで叩いてたらしい。両親は俺が音楽が好きなことに気付いてくれた。だからおもちゃのピアノとかボンゴを買ってくれたみたい。家族でレストランに行ったときにバンドが演奏してて、そのジャズバンドのシンバルの演奏を聴いてこれだと思った。それ以来、音楽とテレビにくびったけ。テレビ番組よりコマーシャルのほうが好きなんだ。コマーシャルの歌がね。
LAUNCH:
お気に入りのテレビ・コマーシャルの歌は。
GREG:
Armor Hotdogs、あれが俺のお気に入り。子供が合唱してるやつ。ロリコンかな(笑)。他に何があるかな…Blue Bonnetバター。“Everything's better with Blue Bonnet on it!(Blue Bonnetをつけると何でもおいしくなる)”。ちゃんと音も揃ってるしね。
LAUNCH:
ツアーで年中遠征していると、人間関係を維持していくのも難しくなりますよね。
STEVE:
男は男。連れと遊びにでては普通の男がすることをする。男はみんなオオカミでクズ。女は世の中で一番扱いが難しいね。誰ともなかなか真剣になれない。地元に気の合う連中とかガールフレンド達がいる。毎日ツアーに出ていると、出会いとか真剣なつきあいを考えるのは難しいね。
GREG:
ラジオに出演するとすごい人気がでるし、ギターをかかえるとすごくカッコいい。俺も地元に友達がいる。ツアー中に色んな人に出会うけど、地元の人間を大切にしたい。Lettermanの番組で自分の服を着て欲しいって近づいて来る人もいる。「はい、これが私のサングラスで、このNikeって書いたシャツを着てください」って。
LAUNCH:
ここ数年成功したことで自分は変わったと思います?
GREG:
…難しい質問だね、自分達を気さくでナイスガイだと思いたいし、有名になって変わったとも思いたくないからね。でもツアーにでると困った人達によく遭遇する。世の中にはそういう人間いっぱいいるから。
LAUNCH:
成功を実感したことはありますか。
GREG:
なかなかじっくり成功した実感を味わう時間がない。現役引退したら昔を振り返って「いったい何が起こってたんだ」って言えるけどね。飛行機で英語圏じゃない国に行って、タクシーに乗ったときにラジオから“All Star”が流れてくるといまでもビックリするよ。妙な気分。
LAUNCH:
いわゆるロック評論家はSmash Mouthの音楽をちゃんと理解し、正当に評価してると思いますか?
STEVE:
へ、みんなぜんぜんわかってないね。個人的には理解してくれてるけど、バンドとしては理解してない。俺達のニュー・アルバムはみんなに2度目の強烈パンチを喰らわせた。ニュー・アルバムは1stアルバムとまったく違うサウンドだから、いま頃みんなオロオロしてるよ。みんなバンドとしては俺達のことをちゃんと理解してくれていない。個人的には理解してくれてるかって? 個人的にもメンバー1人残らず理解してくれてるとは思わないんだけどね。俺自身については結構わかりやすい人間だと思う。でもPaulについてはわからないよ、いつも酒がはいってるから。
GREG:
ちょうとヨーロッパ・ツアーから帰ってきたばかりなんだ。ヨーロッパでは何人か俺達の音楽を“わかって”くれている(評論家がいる)。そのうちの1人には自宅の電話番号まで教えたよ。そのぐらい俺は彼のことを気に入った。彼は完全に理解していたんだ。俺達のことなら何でも知ってたよ。歌詞もぜんぶ理解してて、どんな言葉がどのように使われているかも知っていた。何でも知ってたよ。彼だけだね。評論家がわかってないのは、俺達のことを一発屋って呼んでることからわかる。もう少し時間をかけてお勉強したほうが良いんじゃないかな。
LAUNCH:
バンド全体の人間関係も良さそうですね。
GREG:
Steveと俺はお互いをすごく尊重しあってる。俺はSteveが歌いづらいものは絶対書かない。Steveが変更を加えるのは、言葉のリズムをより自分のヒップホップ・スタイルに合わせて流れるようにすることぐらい。俺はそのことを気にしないし、Steveも俺が代わりに曲を作ることを全く気にしてない。Steveはマリファナを吸わないから“Stoned(マリファナを吸ってラリっている状態)”なんて曲は嫌がるかなと思ったけど、この曲は若い世代に自分のしたいことをしろって歌ってる曲。俺が曲の骨格を書いて、テープを作り、他のメンバーがそれを聴いて自分の演奏内容を考えるんだ。もし俺がこの曲はレゲエ調でヒップホップ風のドラムを入れて頭が突き抜けるぐらい叫ぶように歌う、と言えば、みんなどんな曲になるかだいたい想像がつくんだ。
STEVE:
Paulは最高のベーシストだよ。仲間だからそう言っているというわけじゃない。これまでツアーで一緒だったベース・プレイヤーはみんなPaulのことをサイアクってけなすけど、俺はPaulは超人的だと思うな。GregとTomも超人的。2人とも歌唱力は抜群だし。バンドの結束が堅いことが他のバンドとの一番大きな違いだと確信してる。メンバー全員のご機嫌をうかがうベビー・シッターは俺達には必要ない。その点で俺達はみんな個人主義的だね。俺は自分のことは自分でしたいタイプ。俺は何でも把握していたい、そうでなきゃ頭の中が混乱してしまう。他のバンドほど心配する必要はないと思う。大口叩いてるように聞こえるかもしれないけど、GregやPaulがベストだと思えなきゃ一緒にバンドやってないだろ?
LAUNCH:
いま人気絶頂の'N SyncやBritney Spearsなどの10代のアーティストについてどう思いますか。実力より人気が先走ってると思うアーティストは。
STEVE:
外部の人に曲を書いてもらって売れようとしているバンドはいっぱいいる。Britney Spearsをスタジオに一人で閉じこめて曲を書かせて、彼女のヒット曲を書いた張本人をその部屋に通して2人の曲を比較すれば違いは歴然。彼女はただのハイスクール・ティーン。そんなアーティストはいっぱいいるよ。
LAUNCH:
最後に、次の予定は? 何かプランでもありますか、次のアルバムはいつどこでレコーディングするとか。
GREG:
次のアルバムは俺達のお気に入りの土地で収録する予定。アムステルダムとか。他はどこがいいかな…バルバドスとか。もうすぐ決まるよ。色んな場所に行ってその土地の人のヴァイブを体で感じてから制作にとりかかることにしている。違う環境で制作するのって良い刺激になると思う。
dave_dimartino